第4章あらすじ・登場人物

第4章「機兵」あらすじ・登場人物紹介

第4章「機兵」あらすじ・登場人物


~あらすじ~


 県城から郷城に戻った晨鏡しんきょうは、県伯から全権を得ることはできなかったと報告する。

 郷主は安堵するが、全権が与えられなかった以上、知恵を出し合わなければならない。

 しかし、本来であれば<まとめ役>を務めなければならないはずの郷主は何も決断できずにいる。


 何も決まらずに会議が終わったその夜、晨鏡は詩葉しようと再会する。

「おかえり」

 詩葉の言葉が心に響く。


 何もできなかった。

 晨鏡は呟く。

 英雄に憧れて、子どもの頃の夢ではなく、自分は英雄になれると思っていたのに、人とは違うと思っていたのに。

 誰一人、助けることができなかった。


 詩葉がその背中を抱き寄せる。


 詩葉も語った。

 物語を読むのが好きだった。冒険の旅に出たかった。色んなことを知りたかった。

 もっと、勉強がしたかった。役人になるための勉強ではなく、色んなことを学べる勉強。


 作ってよ、晨鏡。偉くなれるんでしょ?


 想像したら楽しいと思った。作りたいと思った。

 晨鏡は言う。

 偉くなってやるよ。おまえのために、作ってやるよ。


 翌日、晨鏡は陽河ようが伊魁いかいの二人に頼まれる。

 郷主は決断できない。合議体を作りたい。その議長になってほしい。

 だが晨鏡は断ってしまう。


 そんな晨鏡に詩葉は言う。

「晨鏡って、言い訳ばっかりだよね」


 階級を言い訳にして頼みを断った。要求されたなかったことを言い訳にして意見を言わなかった。

 弱さを認められるのは長所だが、弱さを言い訳にするのは短所。


 おれは弱いな。

 そう呟く晨鏡に詩葉は言う。


 分かっただけ、いいんじゃないの?

 明日から、やり直せばいいじゃない。


 騎射術仲間の作良が現れる。

 自警団設立に興味を持つ作良に晨鏡は助言する。

 作良は言う。


 やっぱりあんたは違うよ。

 あんたは、いつまでもこんなところにいちゃダメな人なんだよ。おれたちとは、違う人間なんだよ。

 それでいいんです。それでいいんですよ。


 複雑な思いを抱く晨鏡の元に星鉱せいこうから使いが来る。

 鉄の怪物を知る長老がまだ生きている。先にその長老がいる村に行って待っている。


 作良たちに背中を押され、双木村の冬壱とういと共に長老の元を尋ねる晨鏡。

 長老は語る。祖父の、そのまた祖父の時代の物語を。

 鉄の箱が空を飛び、夜が昼のように明るかった時代の物語を。


 晨鏡は気付く。電気禁止法。

 説明のつかないものは、説明のつかないもので説明ができる。


 電気で動く鉄の機械。機械の兵士。すなわち、機兵きへい――


~登場人物~


晨鏡しんきょう

 25歳。州の役人登用試験である州試しゅうしを第3位の成績で合格した秀才。県城から郷城に戻り、郷の業務再開に向けて助言をするが、陽河ようが伊魁いかいから求められた「議長」の役割を断ってしまう。詩葉に背中を押されて積極的に関わろうとしていたところ、星鉱から使いが来て河東こうとう郷に赴き、長老から鉄の怪物の正体を探るヒントとなる話を聞く。


詩葉しよう

 23歳。明るい茶髪の持ち主。深泉郷郷城で居酒屋を営んでいる。晨鏡と対等に話す数少ない人物であり、晨鏡の良き理解者。


南信なんしん

 20歳。晨鏡を恩人と慕う深泉郷の役人。郷試合格。郷城に戻ってから総務課の一員として自警団設立のために働く。


星鉱せいこう

 25歳。北西県城の官僚。晨鏡とは州城学校の同期生。機兵の存在を知る長老の所在をすぐに確かめ、晨鏡に使いを出すなど行動が速い。情報収集に興味があり、実際に集めるのも得意。


冬壱とうい

 24歳。深泉郷近くの双木そうぼく村の大工見習い。免許皆伝の父親から仕込まれた短剣術の名手。長剣も得意で馬術も優れる。俊敏で身のこなしが軽い。隣郷の大倉だいそう村に晨鏡が赴く際、行動を共にすることとなり、以降、護衛と称して何かと晨鏡にくっついて歩くことになる。


作良さくりょう

 24歳。深泉郷近くの双木そうぼく村の農民。晨鏡と騎射術を共に行う飲み仲間だったが、閉門の日の前日、悪酔いした晨鏡に腹を立ててしまう。南信から話を聞き、双木村に自警団を設立しようと晨鏡に助言を求めに来る。晨鏡の的確な助言に態度を改め、友ではなく指導者として今後は付き合ってほしい、と晨鏡に求める。


陽河ようが

 36歳。落ち着いた印象の役人。県試合格。深泉郷総務課課長。課長級の役人と相談して晨鏡に「議長」を依頼するが断られ、自身が推挙されて議長役を務めることとなる。


伊魁いかい

 45歳。深泉郷土木課課長。県試合格。巨漢で人を威圧するのが得意技、と自分で言うくらいだが、晨鏡が留守の間、4日で攻城櫓を2台作るなど、事務処理能力にも長けている。

 

沓謙とうけん

 深泉郷財務課課長。郷債発行を提案する。陸剛の要求は受け付けなかったが、徴税の権利を得たと聞いて借金を提案するなど、臨機応変の対応もできる。


陸剛りくごう

 54歳。深泉郷南東支城の支城長。命を落とした役人、市民の家を一軒ずつ謝罪のために訪問し、街の再建に力を尽くす。


孔鶴こうかく

 38歳。北西県中央郷北西支城の職人頭。役人の半分がいなくなり、街の半分が焼失した支城を自主的にまとめている。県城守備隊が来るのを内心では快く思っていない。


緑延りょくえん

 北西県伯。気が短く敵が多いのが欠点だが、野心家で行動力に溢れる。


大倉だいそう村の長老

 星鉱の出身地に住む、100歳になるという最長老。両目の光を失っているが、晨鏡を見て「まぶしき男」と言う。祖父の、そのまた祖父の時代の物語を晨鏡らに語る。

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