第1章あらすじ・登場人物

第1章「閉門」あらすじ・登場人物紹介・舞台設定

「王の夢 幾万の夢」

 第1章「閉門」


 ~あらすじ~


「おれはおれだよ。これがおれだよ。お前らとは違うんだよ」


 郷城に勤める若き役人―晨鏡しんきょうは、酒に酔った勢いで日頃感じていた孤独を言葉にしてしまう。

 自分ではなく、他人を傷付けるという最悪の形で。


 翌朝、見知らぬ場所で目覚めた晨鏡は、空の青さに我が身を笑う。

 無様な自分とあまりにも対照的な空の青さ。


 その場所で晨鏡は、居酒屋を営む若い女―詩葉しようと出会う。

 自分は相手を知らないが、相手は自分を知っている。

 記憶のないその間に、どれだけの人に迷惑をかけてきたのだろう。

 誰かを傷付けて、変わらぬ明日を迎えていいはずはない。


 だが、そんな晨鏡に詩葉しようは言う。


 ― 辛そうだったから。だから助けた。そんなの、当たり前のことだろ? ―


 相手が誰であろうと関係ない。その言葉に晨鏡の心が動く。


 詩葉に一宿一飯の恩義を受けた晨鏡。

 そこに郷城の役人―南信なんしんがある報をもたらす。


 郷城の門が閉まっている。


 王国には大きい方から州城、県城、郷城そして郷城の支城があるが、建国以来180年余り、いずれの城でも門が閉じたことはない。

 外敵もなく、内政も安定しているこの国では、今まで門を閉ざす必要が無かったからだ。


 その門が閉ざされている。

 それは一体何を意味するのか。


 城門前に掲示されていた張り紙には「城を制した者に統べる権利を与える」との記述があったという。


 詩葉の店を後にし、南信と共に城に向かう晨鏡。

 郷城の統治者、郷主ごうしゅである高長こうちょうは戸惑うばかりで事態に対処できていない。


 城門に到着し、門を見上げる。

 重厚な鉄の扉が行く手を閉ざす。


 ― 扉というからには扉だったのだな ―


 晨鏡は思う。



 この扉は作られて初めて、扉としての本来の役割を果たしたのだろうか

 この扉に心があるとしたら、ようやく仕事ができたと喜んでいるのだろうか

 扉の向こうには、城壁の向こうには何があるのだろう。



 立ち止まっていた男が、その一歩を踏み出す――――




~登場人物~


晨鏡しんきょう

 25歳。州の役人登用試験である州試しゅうし三席さんせき=第3位の成績で及第きゅうだい=合格した秀才。州城学校を卒業して都に上るが、国の役人登用試験である国試こくしに失敗。

 州の官僚となるが、「州試三席」の呪縛に囚われ、職場に馴染むことが出来ない。ほどなく勤務態度の悪さから左遷され、州城→県城→郷城と異動させられる。

 半年前に深泉郷に異動となった後も居場所を見つけられずにいたが、「騎射術きしゃじゅつ」と出会い、友人と呼べる人たちを見つける。しかし、その三か月後、つい酒の席でそれまでの鬱憤うっぷんを爆発させてしまう。

 人を傷付け、さらに自暴自棄になる晨鏡。詩葉との出会いが彼の人生を変えていく。

 郷から県へ。そして州へ。やがて晨鏡は、戦国群雄の一人となって、天下統一を目指す戦いに身を投じていく。


詩葉しよう

 23歳。明るい茶髪の持ち主。深泉郷郷城で、父から譲り受けた宿屋を兼ねた居酒屋を営んでいる。酒に酔ってずぶ濡れで転がっていた晨鏡を助け、晨鏡を支える存在となっていく。


南信なんしん

 20歳。深泉郷郷城の若き役人。郷の役人登用試験である郷試ごうしを合格した。晨鏡を「恩人」と慕っている。


高長こうちょう

 深泉郷郷主。州試及第も目立たない存在だったが、派閥に属していなかったため5年前の政争に巻き込まれず、空席となった深泉郷郷主の座を得る。閉門事件がなければ郷主の座を最後に退官する予定だった。


守備隊長

 深泉郷で警察組織を兼ねる郷城守備隊の隊長。名前はまだ無い。

 

 

 

 



~舞台設定~


 物語の世界では、舞台の設定上、カタカナ用語を用いていません。カタカナを用いない理由は物語上でいずれ明らかになる予定です。

 ご期待いただければ幸いです。


 とはいえ、カタカナを用いないと非常に書きにくい部分もあり、日本語に直すとどうなるんだろう~~~と調べながら書いております。

 ですので、ちょっと強引だったり、意味の通じにくいところがあったりするかもしれませんがご容赦くださいませ。


 また、人名や地名に関しても漢字のみで表記する都合上、人名に関しては音だけで文字を当てはめています。(地名は単純に音読です)

 漢字の意味を調べながら当てはめているつもりではありますが、この名前は意味合いがおかしい、人名として相応しくない、というものがありましたら遠慮なくご指摘いただければ幸いです。


 度量衡どりょうこうは、日本の江戸~明治期に使用されていた尺寸法を使用しています。

 どんぶり勘定で計算しておりますので、多少のズレはご容赦ください。

 尺寸法で記載する際は、( )内にメートル法での長さを記載する予定です。




 それでは、引き続き第2章「惨劇」をお楽しみください。





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