196話 合流

 読者の皆様へ:更新が遅れて誠に…誠に…申し訳御座いませんでしたァァァァ!!言い訳をすると、お仕事が忙しすぎて執筆する時間がありませんでした。いつも最新話まで読んでくださってる皆様には、申し訳ない気持ちでいっぱいです。番外編は必ず完結させますので、今後も何卒よろしくお願いいたします。



 ☆★☆★


「だ、駄目です! シンジさんは私のモノです! ずっと此処にいるんです! 運命の相手なんですぅ!」


 俺の服の袖を掴みながら、目の前にいる4人に向けてユーナがおもむろに叫んだ。


「面白い冗談ね? この子供は一体何を言ってるのかしら? シンジは私モノに決まってるでしょ?」


 ”うふふ”と笑いながら、表情が一切笑っていない狂歌にーー


「いいえ! 兄さんは私のモノです!」


 先ほどの言葉に、むっとしたのか思わず言い返すサラ。


「シンジ君は私のモノだもんねー」


 ”実は私が本命だよね?”とでも言いたげな表情で、ウィンクしてくる美香にーー


「違うよ~ マスターは私のモノだよ?」


 ”みんな何言ってるんだろう?マスターはエレナのモノなのに”とでも言いたげな表情で言い返すエレナ。


 ーー全員の目からバチバチと火花が散っていくのが見える。


「シンジさんは私と結婚するんです!!! 誰なんですか!」


「……」


「んなっ!?」


「お、おば…」


「ふぇ?」


 ユーナの衝撃的な発言に思わず固まってしまう4人。


 ああ、なんでこんな事になったんだろう…


 そう思いながら俺は数十分前の出来事を思い出すのだった。


 ☆★☆★


 遡ること数十分前


「ん?この魔力反応…そろそろ来るな」


「む?どうされました黒騎士様!」


 数日前に魔人共を使って”血の花火”で嫁達に居場所を教えた俺は、ゆっくりとこの街に向かって進行している事を知覚していた。


 この距離ならあと数十分と言ったところだな!


「ああ、仲間が近くまで来てるんだ。あと数十分もしない内に到着するぞ」


「おぉ、なんと! 遂に合流出来るのですな!」


 我が事のように喜んでくれるリョウ。ここ数日一緒に過ごしてきたが、コイツのそう言う所は嫌いじゃない。流石はみんなに慕われているだけの事はある。


 ーーしかし、アイツら此処に来るまでに随分と時間が掛かったな。居場所を知らせたら秒で直ぐに来ると思っていたんだが…


 一体どこで道草を食ってたんだ?


「しっかし、このアダマンタイト?とかいう鉱石で作った武器は凄いですな!ミスリルよりも丈夫で、魔力伝達も速い上に軽い!いやぁ、素晴らしいですな!」


 ”ぬわっはっはっは”と笑いながら、身の丈程ある大剣を軽々と持ち上げ、頬擦りするリョウ将軍。ここ数日間、暇さえあればコイツは武具に関してずっと絶賛の嵐だった。


 コイツの言った通り、アダマンタイトはミスリルよりも軽くて丈夫、尚且つ魔力を通しやすいからな。魔力を無駄に消費しないから使いやすいのだろう。


 それにしても武具を作っておいて正解だったな。此処の住民は装備が乏しかったから、善意で戦闘員の装備を作ってやったら、大量の【信仰力】をゲット出来たぞ。未だに使い方は分からないが、ゲットしておいて損は無いだろう。


 ーーまぁ、他にも性能の良い鉱石がいっぱいあるんだがな。”プラチナム合金”に”ヒヒイロカネ”、”オリハルコン”と言った物まであるが、そこまで出さなくてもいいだろう。流石に戦力過剰になってしまうからな。仮に作ったとして、到底使いこなせるとは思えんし、一般兵士全員が伝説の武器装備とかシャレにならんからな。


「ハァハァ…素晴らしい…」


「ほ、程々にな…」


 刀身を見つめてうっとりとするリョウ将軍を後にし、俺は街の中央へと向かう。


「あ、シンジさん!」


 住民達とすれ違っていく中、元気よく声を掛けてくれる者がいた。


「ん?ユーナか」


「えへへ」


 振り返れば、元気よく抱き着いてくる少女。ユーナだった。


「どうしたんだ?」


「あ、あの!お礼が言いたくて探してたんです!」


「お礼?」


「は、はい! 実は、ライフポーションが完成したんです!殆どが中級ですけど、1個だけ上級ポーションが出来たんです。森で採取を手伝ってくれたお陰で完成させることが出来ました。ありがとうございます」


「おぉ、遂に出来たのか。良かったな!」


 マジか!ライフポーションって作れるんだ。初めて知ったぞ。内心で驚きながらも俺は必死にポーカーフェイスを貫いた。


「そ、それでその…迷惑でなかったら、お昼は私の家で一緒に食べませんか?お礼がしたいんです!!」


「言葉だけで充分だぞ。お礼なんて別に気にしなくても…」


「気にします!!」


 遠慮しようとした俺に、ユーナは言葉を被せる様に言った。


「来てください…頑張って作りますから…」


「わ、分かった」


「そ、それで…もし良かったら…今夜そのまま泊まっていきませんkーー」


 その時、ユーナの話を遮るように獣の咆哮が街中に響き渡った。


 赤面しながらユーナが何かをふり絞る様に言った気がするのだが…

 すまない!突然の咆哮に声がかき消されてよく聞き取れなかった!


『ゴアァァアア!!』 


『グラァアアア!!』


『ガルルラアア!!』


『ビャアアアア!!』


 突然の咆哮に、悲鳴をあげながら教会へと真っ先に逃げ惑う住民達。中には、気絶し倒れる者もいた。


「な、なんですか!?」


 狂歌達からすれば、やっと見つけたというサインでの咆哮なのかもしれないが、少々やり過ぎではないだろうか?変身を解いて人型になって静かに侵入すればいいものを…


 なんて考えている内に、いつの間にか目の前に数日ぶりに会う嫁達の姿があった。


「あなた!」


「兄さん!」


「シンジ君!」


「マスター!」


 今すぐにでも、愛しの嫁達に駆け寄りたい一心だったのだが。


 ーー如何せんさっきの突然の咆哮で、恐怖に駆られたユーナにしがみつかれたせいで身動きが取れないでいた。周りを見渡せば、泡を吹いて気絶している者が数十人もいる。


 その事を理解したのか、嫁達は抱き着くことを諦め、バツが悪そうな顔をしながらゆっくりと近づいてきた。


「あなた。此処に長居しすぎたわ。もう帰りましょう」


「だ、駄目です! シンジさんは私のモノです! ずっと此処にいるんです! 運命の相手なんですぅ!」


 狂歌の帰還を促す言葉に対し、俺が街から離れる事を理解したユーナは大声でそう叫んだのだった。



 ☆★☆★


 そして現在に戻り


 ーーそんな中いち早く正気に戻り、先に言葉を紡ぎ出したのは正妻の狂歌だった。


「うふふ。 ねーあなた? 私達がいない間に何をしていたか、じっくりと聞かせてもらえるわよね?」


「あ、あぁ」


 そこには”有無を言わさせぬ”といった表情で、こちらをニッコリと見つめ返す狂歌がいて。


 ーーその後、俺は嫁達に根掘り葉掘りと色々問いただされる事となるのだった。

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