187話 過去の出来事
「それで?どうして俺以外に魔人がいるんだ?」
「「「ッ!?」」」
案内された客室にて、俺は今まで疑問に思っていた事を真剣に問いただすと、全員がハッとなって息を吞む声が聞こえた。
うーん。威圧しすぎただろうか?
結構緩めたつもりだったんだが…
加減が難しいな。
「…私が説明します」
威圧を調整し、場の空気を軽くすると、緊張した面持ちで説明を名乗り出たのはミカエルだった。
「ミカエル!」
「語らんで良い!ここはワシ等が…」
おっと、何やら事情があるのだろうか?
辛そうにしてるし、言いたくないのなら他の2人に言わせるべきか?
場の空気を読み、俺は2人に聞こうとするとー
「良いの…止められなかった私にも責任はあるもの…全部私が説明するわ」
止めてくるミコトとリョウの制止を振り払い、ミカエルは辛い表情で語りだした。
「今から300年程前、黒騎士様と『憤怒』のダルファーという魔物が死闘を繰り広げた地区にて、とある研究者が黒騎士様の血液を大量に採取しました。今まで小量しか採取出来なかった”貴重な血液”が、それはもう…至る所に血液が飛び散り、各国から来た他の研究者たちも大興奮したそうです」
懐かしい名前だな。あの時、暴走してなかったら俺はきっと勝てないでいただろう。まぁ、今の俺ならワンパンで倒せるがな。
心の中で懐かしいなと感じながらも、俺は冷静な表情で話の続きを促す。
「各国はこぞって血液の培養と研究に励みました。なにせ、”解明してしまえばヒーロー達とは異なる新たな人類の進化を得られる”と、”実際に
「…随分と詳しいな」
「彼の助手をしていましたから……私が魔人になったのは彼の人体実験に無理やり参加させられたからです」
思わず呟いてしまった言葉に、自嘲めいた笑顔で答えるミカエル。
黙っていれば良かったー!今ので場の空気が少し悪くなったぞ。
だから、代わりにミコトとリョウが説明すると最初に名乗り出たのか。
「そ、それで?」
「その後、彼は自分の完成間近実験を政府に奪われそうになり、暴走しました。過剰に摂取した『新・魔人薬』により、正常な判断が出来なかったのでしょうね。実験体である私を含めた大勢の魔人達を率い、死にたくない一心でアメリカ政府と戦いました。彼は戦いで仲間を失えば、他から無理矢理攫い新たな仲間を作って補充していきました。そんな事を続けていけば、いずれ人類の新たな敵と認識されるとも知らずに……気付けば引き下がれない状況にまでなっていました。自分が作った転移装置を作動させ、気付けば人類と魔人による戦争が始まっていたんです。第五次世界大戦と呼ばれ、多くの国が魔人達によって滅ぼされました」
「なるほどな…」
つまり、人間を無理やり魔人に変えてしまえば、後戻りの出来ない戦力が手に入るって事か。
本人に戦う意思が無かったとしても、魔人として人類に脅威とみなされるのだから、本当に
「ミコトもリョウも無理やり魔人にされた可哀想な…」
と言いかけた所で、ミカエルは思い出す。
『僕から先に魔人にしてくださぁああいいい!』
『こんな奴より、私からでお願いしまあああすぅぅぅ!!』
捕虜として捕えれていたミコトとリョウが、競い合って自ら志願していた時の事を。
「ーーいえ、喜んでいた気が……むしろ自分から進んで志願したような?」
「「ゴ、ゴホンッ!」」
ミカエルの説明に、ワザとらしい咳ばらいをする二人。
ん、なんだ? 急に2人の体温が上昇したぞ…
「と、ともかく!人類と魔人が対立した世の中となりました!」
「『無理やり怪物にさせられた俺達が、何故人類と戦わないといけないんだ』、『確かに怪物みたいな見た目になったが、心までは怪物に染まっていない』とワシらのように無理矢理、無理矢理!魔人にさせられ、人類との戦いに不満を思った魔人達も少なからずいました。そこで一部の魔人は脱走し、人類に味方する魔人達も現れる様になったんです!」
「ここを守る事が、魔人となった私達の使命でもあると思ったんです!」
ミコトとリョウは息を荒くしながら、そう力説した。
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