188話 信仰力

「……なるほど。つまり脱走した魔人達が人類の味方をしていたんだな。そして今までここを守っていたと…」


「そういう事なのです!」


「ワシ等頑張りました!」


 なるほど。ハァハァと肩で息をしながら力説する二人を前に、俺は疑問に思っていた事が全て氷解した。


「私からも質問して宜しいですか?」


「ん、なんだ?」


 椅子に座ってウンウンと頷いていると、ミカエルがおずおずと右手を上げた。


は今までどちらに居たのですか?300年に突如姿を消し、今更急に現れたかと思いきや、今度は世の情勢を全く知らない御様子。ハッキリ言って謎です」


 今度はそっちの番か。まぁ薄々聞かれると思っていたぞ。


「た、確かに!」


「ワシも気になる!」


 ミカエルの問いに、今更気が付いた様子の二人。


 てか、始祖様って何だよ。始祖様って。


「え、ああ。そう言えば言ってなかったな。魔界に行って300年かけて魔物全てを全滅させて来たんだ。今後発生して人類を襲ってくる様な事も無いから安心しろ」


「「「っな!?」」」


 嫁達を生き返らせる為に、結果的にそうなった事実を三人に伝えるとー


「う、うそ、本当に!? す、凄い! 私のスキル【看破】が真実だと訴えているわ!」


「だから急に現れなくなったのですね!?」


「なんと!?」


 その場で驚きの声を次々と上げ始めた。


「人類の為に、1人で魔物の軍勢と戦っていたのですね…」


「ボロボロになりながらも何度も立ち向かって…」


「『地球には行かせん!ここから先は俺を倒してから行くんだな!』と言って、大勢の魔物を薙ぎ払って来たのですね!」


 いや、そんな臭いセリフ言った覚えも無いのだが…

 あ、あれ、おかしいな?妄想で段々美化され始めて来たぞ。


「お、おい。俺はそんな崇高な考えで戦ってきた訳じゃないぞ!もっとこう、ドロドロしたーー」


「う、うそ!?人類の為に戦うのが当然だと言いたいのですね。始祖様!此処に現れたのも……まさか、私達を救うため!?」


「カッコよすぎて惚れ死にします…もう、神って呼んでも良いですか?」


「それだ!!」


 ああ、もう駄目だ。否定したいのに勝手に良いように捉えられる。


「あなたが神だったのですね!?」


「私、これから毎日お祈ります!」


「実在したのですね!おおおお、神よ!どうかワシ等をお導き下さい!」


 はぁー、もう駄目だ。

 いくら言い換えても、三人は”ようやく神を見つけた”と言わんばかりの信徒の様な目でこちらを見つめてくるのだ。いくら言っても良いように変換される。


 軽い気持ちで此処に来たのだが、厄介なことに巻き込まれたな。


 そんなカオスの様な状況下で、俺の脳内に懐かしいあの声が響くのだった。


 『【信仰力】を獲得しました』

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