180話 検問

「そこの者、止まれ!!」


 ユーナと町の入り口にある大扉まで行くと、高台で門番をしている人物が警告してきた。弓には既に矢を番えており、いつでも放てるようにしている。


 ”妙な事はするなよ”とこちらを睨みつけ、警告してきた。


「囲め囲め!」


「ちょっと....皆話を聞いt-」


「子供は下がっていろ!」


 続けて、鎧を纏った兵士達がぞろぞろと門から現れると、ユーナは一部の兵士達に退避させられ、槍の先端を突き付けられた状態で、俺は大勢の兵士達に囲まれてしまった。


 やけにピリピリしているな。


 ん?このやり鉄か?いや違うな、構造が全く違う。それにこの金属、魔力を帯びていやがる。ミスリルか?


 見覚えのある金属に俺は懐かしさを覚えた。


 そう言えば魔界にも沢山あったな。魔力を帯びた種類の違う金属達が。


 まぁ、俺が勝手に命名しただけだから、この世界では何て呼ばれてるか知らないがな。


「ヴァンおじさん!この人は悪い人じゃないよ!!」


「それはこちらが決める事だ!!」


 ユーナの叫びを一蹴する中年のおじさんことヴァン。


「さて質問だ。貴様此処の住人では無いだろう。何処からやって来た?」


「外の世界だ。仲間とはぐれてしまってな。偶然ユーナとあそこの森で出会ったんだ。まさかこんな所に町があるなんて思わなかった」


「外の世界?あり得んな!!ここ以外の人類はとっくに滅んでいる!それに、だ。人類最後の希望と謡われたこの場所を知らぬ者は居ない!白々しいぞ!!」


「うーん。そう言われてもなぁ」


 困ったぞ。さっきから凄く警戒されている。何故なんだ?


「先の戦いで『将軍』や『暗殺者』殿が負傷している今、好機だとでも思ったか?我らの仲間を誑かし、中に侵入が出来るとでも?舐めるなよ魔人共目が」


 このおっさんさっきから怖いぞ。どうしたんだ。先の戦いとか俺全く知らないぞ。


「分かった。歓迎されてないようだし、俺は帰るよ。じゃあなユーナ」


「あっ。ま、待ってシンジさん!」


 後ろからユーナの引き留める声が聞こえてくる。


 周囲の殺気に居心地の悪さを感じた俺は、帰る事にしたのだ。歓迎されていない以上どうする事も出来ないのだから。


「おっと、忘れてた。コレここに置いていくぞ」


 帰る際に、俺は森で採取した薬草の束と、さっき殺した魔人3体の首を置いていく事にした。


 もう必要が無いからな。持っている意味も無いし。


「なっ!?」


「マジかよ」


 何故かは分からないが、ユーナがとかどうとか言ってたな。


 周囲の反応をみるとやはりと言うべきか、案の定驚いている。きっとドン引きされているんだろうな。結局あれはどんな意味があったんだろう。そう考えながらその場を立ち去ろうとするとー


「疑って申し訳なかった。事実だったのだな。てっきり人に化ける事の出来る高位の魔人だとばかり思っていた」


 周囲の兵士達が槍をおさめると、ヴァンと呼ばれる人物が高台から降りて頭を下げてきた。


「『魔人王』に従う魔人共は、同族同士で殺し合いが出来ないように誓約されている。魔人を3体も狩ってる事から、少なくとも敵ではない事が分かった。おい、開けろ!」


 ヴァンが部下に命令を出すと、閉じていた門の扉が徐々に開き始めた。


「歓迎しよう。最後の砦ラストフォートへようこそ。最終確認の為、これから『熾天使』様に会ってもらう」


「よかったシンジさん!」


 なんやかんやあったが、無事信用が得られた俺は街に入る事が出来たのだった。

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