181話 始祖の魔人
「良いか?これから『熾天使』様の所まで向かう。妙な真似はするなよ」
「お、おう」
ヴァンと呼ばれる中年の男性は警備長だったようで、数名の部下を引き連れて俺を街の中へと案内してくれる事になった。
やはりというべきか、完全には信用されていないようで、俺の周囲を囲み、こちらが妙が動きをしようものなら即座に斬り捨てる陣形を取っている。
「ごめんね、シンジさん」
そんな中、申し訳なさそうに陣形外からユーナが謝ってきた。
命の恩人に対し快く歓迎するつもりが、大人たちのよそ者への警戒心で台無しになったとでも思っているのだろうか?
まぁ気持ちは分からなくもないが、街を警備する大人たちからしてみれば、俺のようなよそ者を簡単には受け入れられないのも事実。
怪しいよそ者なんかよりも、仲間を守る方がよっぽど大事だからな。受けた当人が不快に思ったりするのだろうが、対応としては何も間違っていないのだ。
だからこそ謝ってきたのだろうが、俺は割り切っている人間だ。いや元人間か?
だから、何とでも無いように答えた。
「気にするな」
そこからは会話が途切れ沈黙が続いた。黙々と先頭を歩くヴァンについていけば、またもや大門が現れる。
「警備長のヴァンだ!よそ者を『熾天使』様に会わせる!門を開けろ!!」
「今日の合言葉は?」
「”慈愛の羽根”」
「了解しました!!」
大声でヴァンが伝えれば、閉ざされていた門が左右に開かれた。
なるほど。二重の検問に合言葉の設定で侵入者を防いでいるのか。
「行くぞ」
ちょっとワクワクした気分になりながら、俺は街に入ったのだった。
★☆★☆
『ねぇ、見てアレ』
『あらやだ!え、嘘!?』
『変わった服装ね?』
街に入った途端、多くの住民に好奇な目でジロジロと見られた。
『ウホ、イイ男じゃない!?オネエちゃんゾクゾクするわ』
ただでさえ居心地が悪いのに、中には男の野太い声まで聞こえてきた。
「もう俺帰ろっかな」
「そんなこと言わないで下さい、シンジさん」
ーーそう呟いたとき。
「
澄み渡る女性の声が響いたと同時に、俺は光魔法で身体中を拘束された。
「戦闘員は前に、非戦闘員は直ぐに避難して下さい!!」
「なんか分かんねーが逃げるぞ!」
「警備兵!コッチだ!!」
突然の光景に目を丸くする住人だったが、上空で羽ばたいている女性が指示をすれば、すぐさま命令通りに行動が始まった。
「おい、急に何しやがる」
神官服を着た青髪の女性にそう言い放つとー。
「それはこちらのセリフです。何故あなたが此処にいるのですか!!”黒騎士”いいえ、『始祖の魔人』!!」
「ミカエル様....どうして.....」
白い6つの翼を羽ばたかせながら、女性は警戒した様子で言い返してきたのだった。
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