144話 独り言

 読者様へ:前話でのエレナのステータスちょっと変更あります。(+4000000)の部分です。知らない方は是非。


 ★☆★☆


 あれから6日後


「はい。これ借りてた金ね」


「んなっ!」


 目の前に持ってきた3つの”大きなスーツケース”を全て開くと、爺さんは目を限界まで見開き、ギョッとした様子を見せた。


「じゅ、十億では無いか!?」


「え?あ、うん。だって倍にして返すって言ったじゃん」


「ほ、本当に返すとはな.....それも倍にして.....」


 爺さんは、未だに信じられない様子で唖然としている。


 心なしか、額には冷や汗をかいていた。


 ただの高校生が、数日で億単位を稼いできたのだ。


 それに、初めからあげる気で居た爺さんだ。帰って来るとは思わなかったのだろう。


 驚くなと言う方が無理な話だ。


 その反応に俺はウンウンと満足しているとー


「ど、どうやって稼いだ。も、もしや違法な手段では.....」


 爺さんが何か違法な手段で、俺が大金を手にしたと勘違いをし始めた。


「短期間で稼ぐ方法.....もしや麻薬か!?」


 その考えに至り、ギョッとした様子を見せる爺さん。


「は、ははは。な、何を言ってるんだよ。そ、そんな訳無いだろ?」


 これは面白い展開になりそうだな。


 そう思った俺は、分かりやすく動揺を見せる事にした。


「ば、馬鹿者!軽い犯罪ならば簡単にモミ消せるが、麻薬取引は無理じゃぞ!」


 俺の反応で察したのか、動揺しながらも叱ってくる爺さん。


 今度は手が震え、額から出る汗が止まらなかった。


 てか、軽い犯罪ならモミ消せるのかよ!流石はフィード家だな。


 内心で”どうするべきか”と考えてる爺さんとは裏腹に、俺は内心で飄々としていた。


「犯罪を犯すような奴にサラは任せらrー」


「なに本気にしてるんだよ。冗談だ。冗談」


 爺さんは覚悟を決めて、俺からサラを引き離そうとしてきた。きっと無理やりにでもサラをアメリカに帰す気だろう。犯罪者には、大事な義娘むすめを任せられないからだ。最悪の場合、SP達に俺を拘束させようとしている。


 だから俺は言葉を被せるようにネタバラシをする事にした。


「.....へ?」


 すると案の定、素っ頓狂な顔を浮かべる爺さん。


「な、なんじゃ。冗談か。心臓が止まるかと思ってたわい」


 数瞬後に冗談だと分かり、ホッと息をついていた。


「FXとか証券とか投資系を色々やって稼いだんだよ」


「なに!見せるのだ」


 携帯で取引の履歴を見せると、爺さんに奪われた。


「そうだったのか.....その年で稼ぐとはな......」


 俺に聞こえないと思っているのか、爺さんはブツブツと呟き始めた。


「6日か.....やはりワシの血を継いでるようじゃな......ワシが十代後半の時は”これの”数倍は稼いでいた......この程度3日も掛からんかったぞ......ワシには一歩及ばぬがこれほどの才能があったとはな......グレンには任せられなかったが、シンジになら後を継がせても.....”フィードコーポレーション”の次期社長に相応しいな......じゃがいきなり社長にするとコネで入った”ボンボンの跡取り”と思われる....無能な上司は部下に好かれんからのぉ......幹部や古参メンバーは納得せんじゃろうな.....なら小さな会社を任せてテストをするか?.....実績があれば奴らも納得するじゃろう.......」


 マジかよ。


 俺がズルして稼いだ大金を、爺さんは実力だけで稼いだのか。


 それもたったの3日で。


 俺は目を見開き、思わず驚いてしまった。


「じゃあ、お金は返したからな」


 俺はテーブルに置かれていたスマホを、取り戻した。


 しかし、爺さんは未だに何かをブツブツと呟いている。


「そうなるとアメリカの.....いや日本でいいか?.....それならば......」


 目の間で手を何度もヒラヒラさせるが気付いている様子はない。


 もう帰るか。


「じゃあな爺さん」


 爺さんに声を掛けるが一切返答が無い。未だに自分の世界に入っている様だった。


「それならば経験をつませるのがベスト....取引先のジェームズに.....いやローランドを付けるか?.....補佐はダンテにするか?......ミカエルでもいいな.....だがあいつゲイだからのぉ.....シンジの貞操が心配じゃ....ミランダは.......駄目だ......目移りしたらサラが悲しむ.......」


 無視られた俺は、少し悲しい気持ちになりながらも、爺さんの部屋を後にしたのだった。




 ★☆★☆


 数十分後


「やはり男は胸じゃな....大きい方がワシはそそる......シンジお主は”巨乳派”か?......それとも”貧乳派”か?.....まさかケツ派なのか?......そこのところはどうなんじゃ!」


 ブツブツと呟いていたウイリアムは、ようやく顔を上げた。


 いつの間にか投資の話から脱線し、女性の好きな部分へと話がすり替わっていることにウイリアムは気が付いていない。


「あれ、シンジは?」


 周りを見渡すが誰も居ない。SP達に何処へ行ったかと問い詰めるとー


「もう、20分前に出て行かれましたよ」


「な、なんじゃとー」


 ウイリアムの驚いた声が部屋に響いた。


 そして最後に、聞こうとしていた事を思い出す。


「聞きそびれた.....末期まで進行していたガンが、何故初期症状まで戻ったのかについて.....病院で手術を受けたら無事成功だった......シンジの言う通りじゃったわい......」


 ウイリアムは”次に会った時”に聞こうとしていた事を、この時思い出したのだった。

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