133話 色目

 授業中のクラスでは


「えー。であるからして。ここの部分を代入して。2Xをえー」


 まだ、ここの範囲終わらないのかよ。


 未来で高卒認定試験クリアしてるからぶっちゃけ余裕なんだが・・・・


 退屈に思いながら、俺はボーっと数学の授業を受けていた。


 早く終わんねーかな。


 頬杖をしながら、時間を確認しようと前を振り向くとー


「.......スピー......スピー......」


 エレナが授業中に、教師の前で堂々と眠っていた。それも一番前の席で。


 ておい、エレナ!?お前、よく1番前の席で寝れるな!先生絶対に困ってるだろう。


 そう思い、教師を横目にチラリと目を向けるとー


「こらこら。温まってから眠りなさい」


 いやいや起こせよ!なに快適にさせてんの?


 眠っていたエレナの背中に、着ていた上着をかけるという謎の行動をする高齢の教師。


 まるで、孫を甘やかすように。自らエレナの睡眠を促していた。


 しかし、良く観察すれば、心なしか目が虚ろな気がする。


 そういえば忘れていたな。教員全員が”洗脳”されていたと言うことに。


便。」


 洗脳の便利さに、俺は思わずそう呟いてしまった。




 ★☆★☆


 授業が終わり、帰りのHRが終わるとー


「冬柴!これを職員室に持っていってくれ。」


「はい」


 美香は担任の教師に、職員室まで山積みノートを運ぶよう頼まれていた。


 では、まだ残っていた生徒が何人か居たが、誰も手伝おうとはしなかった。部活があるからと、バイトがあるからと、何かと言い訳を見つけては美香の頼みを断っていたのだ。


 しかし、今では。容姿が激変し、注目の的となった美香。


「冬柴さん手伝うよ!」


「いいよ、これぐらい平気だから。うちのことは気にしないで」


 普段から手伝おうとしなかった男子達は、ここぞってばかりに手伝いを申していた。その反応に戸惑う美香。


「ぼ、ぼぼぼ僕も!」


「体力には自信あるからね!」


「美香さん。運ぶのは任せてくれ!」


「おい、何さり気なく名前で呼んでるんだよ!」


「抜け駆けだぞ!」


「そうだぞ!」


 美香が平気だと断っても、まるでチャンスだとばかりに、色目を使って必死にアピールをする男子達。


 現金なものだな。普段から気にしていなかった癖に、綺麗になった途端これかよ。


 俺の女に色目を使ってんじゃねーぞ。


 その行動に、イラついてしまった俺はー


「量が多いな。手伝うぞ美香」


 積み重なったノートの束を強引に取り、早く教室から出るように美香を促した。


 何冊あるんだこれ?美香1人で職員室まで全部運ばせる気かよ。


 まぁ本来ならこの程度、”巨獣”の俺らには関係ないが・・・・


 いや違うな。


 俺は待っていた狂歌達に”合図”を送り、先に帰るように促す。


「うそだろ....」


「チャンスが.....」


「チッ」


「邪魔しやがって.....」


「なんなんだよアイツ....」


「お高くとまってんじゃねーぞ....」


「俺らが手伝おうと思ったのによ.....」


 教室を出ると悪態をつく男子達。


「ーッ!?」


 その言葉が聞こえ、美香が傷ついた顔をした。


「少し先に行っててくれ」


「え?」


 だから俺は、美香に先に行くように促す。


「いいから気にするな」


「う、うん」


 これから釘を刺すところを見られたくなかったから。


 一旦床にノートの束を置き、教室に戻る。


「おい....」


「な、なんだよ」


 自分でもビックリするぐらい低い声が出た。その声に、たじろぐ男子達。


「”幼馴染”の容姿が変わった途端、色目を使ってんじゃねーぞ。お前らの声、全部聞こえてたからな」


「だ、だったらなんだよ!シンジには関係ないだろ!」


「お前には、狂歌さんがいるんだから邪魔するな!」


「サラさんもいるから良いよな!モテる男は」


「おい、馬鹿辞めろって!」


 聞かれてたことに動揺しつつも、必死の強がりで言い返してくる男子達。


「あ?」


 その瞬間、思わず殺気が出てしまった。


「「「ヒィ!」」」


 一斉に悲鳴をあげ、身体をブルブル震わせる男子達。


「”美香も”俺のモンだ。次また色目を使おうとしたら.......分かるよな?」


 含みを持たせて言うと、コクコクと頷く男子達。


 教室の扉を閉め、ノートを持った後、俺は急いで職員室に向かうのだった。




 ★☆★☆


 読者様へ:次回エロです

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