124話 エレナ

「ねー。マスター」


「なんだ?」


「好き♡」


 性行為が終わった後、ベッドでエレナと添い寝をした。もちろん、お互い裸だ。


 隣の部屋でサラがいるのに、イケない事をした。自覚はあった。


 あったが、それが背徳感として変換され、更なる興奮へと際立たせたのだ。


 エレナが可愛すぎて途中から夢中となり、気が付けば朝となっていた。


「マスター」


「なんだ?」


「もう一回しよ?ね?お願い。」


 腕枕をしていたエレナは、胸を押し付け誘惑をしてきた。


 や、柔らかいな。


 さっきからこれだ。快楽を知ったエレナは、さっきから事あるごとに誘惑をしてくるのだ。


「駄目だ。今日はアイツらが家に来るからな。」


 だが、その誘惑を断ち切り、服を着替える。


 流石に、性行為中を見られたら、どうなるか分かったモンではないからだ。


「えーいいじゃん。もう一回だけ?ね?ね?いいでしょ?」


 全裸でエレナが更に誘惑をしてきて、抱き着いてきたその瞬間ー


 ガチャリ


「兄さん。おきt-」


「あ.....」


 ドアを開けたサラと、目が合った。


「あなた。今日は祝日だから遊びにk-」


「シンジ君。今日は遊b-」


「あ......」


 続けて入ってくる狂歌と、美香の目が合う。


「あなた!」


「シンジ君!」


「兄さん!」


 沈黙がその場を支配した。


 マズい! マズいぞ! この状況は非常にマズい!


 まさか、エレナに裸で抱き着かれている所を、3人同時に見られるとは!


 こんな朝早くから、来るとは思っていなかったぞ!


「ちょっと待ってくれ。これh-」


 なにか言い訳を言おうとしたが、時すでに遅し。


 怒った3人が、既に魔人と化していたからだ。


「「「浮気は許しません!」」」


 こちらの言い訳を聞くハズも無く、俺は3人に包囲されると、その場で説教をされるのだった。




 ★☆★☆


「コイツは、エレナと言ってだな。強敵を倒す為に長い間、旅をして一緒に過ごしてたんだ」


「ふーん。つまり、その人は”エレナ”さんと言って、未来の仲間だったと?」


「はい」


 エレナについて尋問をされた後、目の前に立つ狂歌が要約をした。ちなみにエレナは、服をちゃんと着た。


「へー?知らない間に....」


 そろそろ、槍の先を下ろしてはくれないだろうか。狂歌さんや。


 さっきから、心の臓を狙い定められても困るんだが。


 まぁ仮に死んでも、生き返る身体になってるから、別に構わないのだけれども・・・


 因みに、隣にはニコニコと笑顔を浮かべながら、正座するエレナがいる。


 おい、なんで笑顔を浮かべているんだよ。状況を察してくれ。


 っておい!説教されてる途中で、ニコニコしながら俺の腕に抱き着くな!


 状況を理解してるのか、していないのか。関係ないとばかりに甘えてくるエレナ。


「ちょ!おい、それはやめ-」


「あなた!」


 案の定、正妻きょうかに怒られた。うん理不尽だ。止めようとしたのに。


 まぁあっちからしたら、浮気した上に説教してる途中で、イチャつき始めたように見えたのだろう。


 うん。やっぱり理不尽だ。


「うちらが死んでる間に、を作ってたんだね。シンジ君」


 目からハイライトが消え、闇魔法を纏わせた鉤爪で、俺の首筋を這わせる美香。


 ちょっ。やめろ!くすぐったいぞ。


「兄さん。それは少し寂しいです」


 と言いつつも、火魔法を拳に纏わせるサラ。


 目が笑っていないから凄く怖い。


 まぁガチで攻撃されても、ダメージを受けないだろうが・・・・


「ていうかお前ら、死ぬ前に一度エレナに会ってるぞ」


「「「え?」」」


 そう言うと、3人は呆けた顔を見せた。うん、なんかシュールだな。


「エレナ。俺達が出会った時の姿に”変身”してくれ」


「わかった~」


 返事をもらうと、直ぐに変身をするエレナ。


 液体と化し、その場で形を整えていくと、一匹のスライムが出来た。


 うん。赤黒くなってるが、面影があるな。


 そして、それに気が付いたのか。


「「「あの時のスライムだったの!?」」」


 3人はエレナを指さすと、驚いた拍子に声をハモらせるのだった。

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