125話 修羅場

「あら?どうしたのシンジ。狂歌ちゃん達は?」


 1階に降りると、怪訝そうな顔で訊ねてくる母さん。


 どうして部屋に置いてきたんだ、と言ってるのだろう。


 だから俺は、事情を説明することにした。


「エレナが抱き着いてきた時に、他の皆がちょうどドアを開けてな。」


「え?」


 少し驚いた様子を見せる母さん。


「あいつら目線だと、エレナを知らないから、俺が他の女と浮気してたように見えたんだ。」


「......ああ」


「それで今、部屋から追い出された所でな。どういうことなのか、エレナに問い詰めているんだろう」


「......なるほど」


 そこまで言えば、大体の事を母さんも察した。


「つまり何が言いたいかと言うとー」


「修羅場ってことね」


 母さんが要約してくれた。そう、修羅場だ。それも朝っぱらから。


 まさかのタイミングの悪さに、自分でも少し無いだろと思うほどだ。


 本当は、みんなが来てからしようとしてたんだ。


 未来では、他にもう1人仲間がいたんだと、エレナを紹介する予定だった。


 そこで、何かを言われる覚悟はしてたんだ。


『最低』や『浮気者』と言われ、ビンタされる事も覚悟していた。


 だが、まさかこんな事になるとは・・・・


「そういう時もある。」


 これからの予定を考えていると、誰かに背中を軽く叩かれた。振り返るとー


「それは、モテる男が通る道だからね。父さんなんか若い頃は、修羅場起こしまくて、覚えてないくらい経験した。だがこの通りピンピン生きている。案外何とかあるものだよ。」


 イケメンスマイルを浮かべながら言ってくるのは、父さんだった。


 そうだと良いな。平和に終わりますように。


 俺は、心からそう願う事しか出来ないのであった。




 ★☆★☆


 シンジの部屋では


 赤髪の美女を囲むように、武装した3人の魔人が立っていた。


 殺気が漂い、空気が冷気と化したのかと思うほど、部屋全体が冷たくないっている。


「それで?あなたがシンジを誑かしたのね?」


 狂歌が、エレナに槍を突き付けてそう言うと、顔を赤く染めながらエレナは答えた。


「ううん、逆だよ?誑かされたの。エレナはマスターの色に染められちゃった♡」


 両手を顔に当てて、嬉しそうに答える姿。殺気が漂うその一室では、場違いだと思わせるほどにエレナは飄々としていた。


 まるで、命の危機を感じ取っていないかのように。


 エレナの答えに、青筋を浮かべる3人。更に殺気の濃度が高くなった。


「仲間になったのはいつなの?」


 美香が、鉤爪をチラつかせてそう言うと、真顔でエレナは答えた。


「あなた達が死んだ、その日だよ?」


「嘘....」


 まるで何を当たり前のことを言ってるんだ、とばかりに言うエレナ。


 その答えを聞いて、美香は少なからずショックを受ける。


 死んだそのすぐ直後に、新しい女を作ったと思ったから。


「出会った当時は、人間に変身出来てたの?」


 比較的冷静となっているサラが質問をした。


「そんな訳ないよ。あの時は中級だったからね。」


「そう....」


 少なからず、その答えに安心する3人。


「あの時から"300"年経って、ようやく変身出来たかな。」


「「「ッ!?」」」


 その答えに、3人は驚くのだった。

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