106話 洗脳

 読者の皆様へ:最近更新遅くてすみません。9月は更新出来る様に頑張ります。


 ★☆★☆


 公園の帰り道、美香と2人で帰っていた。


 狂歌は軽い用事を思い出したのか、急いで帰ってしまったが、別れ際に絶対に行くと言っていたので、きっとパーティには来るだろう。


「あ、そうだ。シンジ君」


 美香が急に話かけてきた。


「うち、融合の影響でこんな体になっちゃったじゃん?」


 自分の胸を強調しながら、疑問形で言ってくる美香。


「まぁ....そうだな....」


 服の上からでも分かるスタイルの良さに、思わず釘付けになりかけた。


 若干、目のやり場に困りながらも返事をすると


「うち家に帰った時に案の定、親に驚かれちゃってね。急成長したとか、サプリメントのおかげとか、色んな言い訳とか用意してたんだけど。なかなか信用して貰えなくて....」


 少し落ち込んだ様子を見せる美香。


「急成長やサプリって....かなり無理があるな....」


 流石に、この言い訳には無理があるだろと思いながらも、他に良い案を探すが全く見つからなかった。


 前の美香の姿を思い出しながら答える。


 狂歌であれば、肉体に変化はあまり無かった。


 しかし、身長がいきなり10センチほど伸び、胸がいきなり大きくなれば、誰だって驚くだろう。例えそれが自分の娘であったとしても、信じられないのも無理はない。


「だからねうち。親を気絶させて来たんだけど。何か信用させるいい方法ってないかな?って思って。」


「は?」


 急な発言に思わずビックリし、立ち止まってしまう。


 しかし、よくよく考えてみると、それが一番いい方法だという事に気が付いた。


 騒がれる前にきちんと処理をしたからだ。まぁ殺してはいないが。


「あるっちゃあるぞ。信用させる方法。」


「えっ。あるの?どういう方法?教えて!」


 返事をすると勢いよく近づき、「教えて教えて」と食いついてくる美香。


 よほど困っていたのだろう。


 だから、もったいぶらずに教えることにした。


「【催眠】か【洗脳】をすれば良いんだよ。」


「へ?」


 一番てっとり早い方法を教えると、唖然とした様子を見せる美香。


 寝ているなら、【洗脳】が一番手っ取り早いな。


 流石に、こういう方法を取ってくるとは思っていなかったのだろう。


「そ、それって危険なんじゃ?」


 少し引いた様子を見せてくる。流石に自分の親を洗脳する事には抵抗があるみたいだ。


 まぁ俺だって人間に使うのに、抵抗あるから出来れば使いたくはないが。この際は仕方が無いだろう。


「大丈夫だ。軽く思い込ませる程度なら、思考能力や精神に異常は出ない。」


「本当に?」


 安心するように言うが、心配なのか何度も聞いてくる美香。


「連休中に成長したって思いこませれば、影響は出ないぞ。安心しろ。」


「そうなんだ....うん....分かった....」


 安心するように言うと、少しぎこちないながらも承諾をしてくれる美香。


「じゃあ今すぐお前の家に行くぞ。」


「うん分かった。」


 時間に間に合わせる為、美香の家に急いで向かう事にしたのだった。




 ★☆★☆


「ここが私の家だよ。」


 美香に案内されながら、家についた。


 ここに来るのは小学生以来の為、懐かしい気持ちになる。


「お邪魔します。」


 靴を脱いで、家の中に入ると、ある一室に案内をされた。


「ここだよ。」


 美香が襖を開けるとそこには、畳に2つの布団が敷かれた状態で、美香の両親が寝かされていた。


「じゃあ、やるぞ。」


 そう言って寝息を立てている、美香のご両親の前に立つ。


 美香は緊張した面持ちでジッとこちらを見つめてきた。


 失敗しないように祈っているのだろうか。まぁ、そんなことは起きないが。


「【洗脳】」


 美香の両親の後頭部を指で刺す。少し血が流れ、美香のご両親の身体が軽く痙攣するが気にしない。


 そのままジッとして、魔力を送り込む事にした。


「ちょっと!シンジ君!」


 慌てて思わず大きな声を出す美香。口封じの為に殺したとでも思ったのだろうか。


「ひ、酷いよ。口封じの為に殺すだなんて。うち信じてたのに....だから方法を教えてくれなかったの?」


 泣きそうな顔でこちらを見てくる美香。あ、そう言えば方法を教えていなかったな。


「悪い、言い忘れてた。あと、お前の両親殺してないからな。」


「へ?」


 呆けた表情を見せる美香。すぐにこちらに近寄ろうとしたが、言葉制する事にした。


「落ち着け、ここから先は繊細な作業が必要だ。邪魔したら失敗するからな。」


「わ....分かった....信じてるからね....」


 まぁ、洗脳に繊細な作業なんて必要無いが、万が一失敗するとなるとヤバい事になってしまうと思わせることが大事だ。


 衝動を抑え、ぐっとこらえる美香。作戦通りだ。


 流石に両親が痙攣してる姿を見て平常ではいられなかったのだろう。


 必要な分の魔力を脳に送り込み、記憶を操作する事にした。


『10連休中にサプリメントのやり過ぎ』で、急成長した事にして記憶を改ざんした。


 全ての作業が終わった後、後頭部から両手の指を抜き、傷ついた部分を【時空間魔法】で再生させた。


 布団にあった血の染みが、逆再生をするかの様に後頭部に戻っていく。


(昔、魔物の思考能力と意識を濁らせて、なんでもいう事を聞く洗脳兵を実験で作ったことを思い出すな。)


 そう思っていると


「ここは何処....じゃなくて、あれ?なんで私寝ているの」


「何で寝ていたんだけ?」


 頭を押さえながら、目覚める美香の両親。


「お父さん。お母さん。」


 目に涙を堪え、両親に抱き着く美香。凄く心配していたのだろう。


「もう、なんで美香泣いてるのかしら。」


「これは一体どういう状況なんだ?」


 抱き着く美香をなだめる母と、未だに状況をのみ込めていない父。


 ここは俺が説明する事にした。


「こんにちは。お二人とも急に倒れたんですよ?覚えてないですか?」


 そう声をかけると


「あなたはシンジ君?」


「む?あのシンジ君か?」


 今気が付いた様子を見せる。


「美香から電話が来て、お父さんとお母さんが急に倒れちゃったって慌てて。それでお二人を、ここまで運ぶことにしたんですよ。救急車を呼ぼうとしたら今お二人が目覚めたというのが状況です。」


 まくしたてる様にそう言うとー


「そうだったのね」


「む?そうなのか」


 納得する2人。


「心配したんだよ。」


 両親を抱きしめながらそう言う美香。


 まぁ別の意味で心配していたのだろうけれど。


「やっぱり美香あなた、したわね。」


「そうだな。お父さんは嬉しいぞ。もう成長しないと思っていたからな!」


 美香に語り掛ける2人。洗脳は成功したようだ。


 経過を見た後、特に問題は無かったので、俺は帰る事にしたのだった。

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