105話 始末

 読者様へ:最近深夜帯の更新が多くてすみません。寝る前しか書く時間が取れないのです。


「全然こねーな。」


 作戦会議が終わってから既に数時間が経過している。


 狂歌と美香が家に帰ってから、やる事の無くなった俺は、現在自分の部屋でくつろいでいた。


 念の為、全力で魔力探知を使っているが一向に反応が無い。


「流石に全世界丸ごと探知するのは、やり過ぎたか。まぁ日本全体だけで良いか。」


 この程度どうってことないが、流石に索敵範囲を絞る事にした。


 時計を見ると既に午後4時となっている。


「そろそろ来ても良い頃合いだが」


 そうつぶやくと、魔力探知に4体ほどの魔物がかかった。


 1体が中級程度で、残りが下級の雑魚。


 中に身に覚えのある魔力反応がある。この中級が触手野郎だ。


「それにしても、4体だと?」


 予想外の数に少し驚いてしまった。前回は触手野郎の1体だけだったはず。


(何故4体も出現した....まさか、過去を書き換えたことで出現する数が増えたのか....)


 そう思っていると、1体ずつ生命反応と魔力反応が消えていった。


(何故!?)


 一瞬疑問に思ったが、すぐに理解した。


「ああなるほど....仲間割れ....そう言う事か....」


 近くにヒーローはいない。つまり、触手野郎が殺したという事。


 きっと人間界に来るときに魔力を使い過ぎたから、雑魚を喰ってエネルギーの補給をしようとしたのだろう。


 魔力反応は、ここからすぐ近くにある公園だ。


 ぶっちゃけ身内以外死のうがどうだって良いが・・・


 まぁ犠牲者が出る前に殺しておこう。


 家を飛び出した後、俺は急いで公園に向かう事にしたのだった。




 ★☆★☆


 触手視点


「Gobe」


 あいつらマズかったな。でも魔力が回復したから良いか。


「Guhehe」


 手始めに、ここ周辺の人間を食ってもう少し回復させるか。


 雑魚を食べた後、ここから移動する事にしようとしたその時ー


「Ga!?」


 強烈な殺気を感じた。今まで感じたことも無いくらいの殺気。


 まるで『捕食王』のような、絶対的な存在に目をつけられた。そんな感じがする。


 あまりの恐怖にその場から動けない。


「Aaaaaaaaaaaa」


 足が震える。殺気を向けられただけで心臓が止まりそうになった。


 どうしてだ?人間界に行けば俺は王になれるのでは無かったのか?


 どうしてなんだ。こんなヤバい奴がいるなんて聞いてないぞ!


 その場で恐怖に震え、固まっていると、突風を感じた。


 その後何もない空間から突然、目の前に全身鎧を纏った奴が現れた。


 黒い狼のデザインの全身鎧。頭部の隙間から覗く縦長の異なる瞳。全身を纏う、不気味な青黒いオーラ。


「久しぶりだな?糞野郎。」


「Aaa....」


 それを見た瞬間、触手の魔物は王になる事を諦めた。




 ★☆★☆


 家を出た後、【擬態】で透明化し、変身をした。


「【飛翔】!」


 背中に6対の黒い翼を生やす。これなら走るよりずっと早いからだ。


 翼に雷魔力を纏わせ、一気に飛んだ。


「『黒雷飛翔』」


 おお、結構早いな。一瞬であっという間に公園についた。


 上空から見下ろすと、赤黒い触手を持つ魔物が見え、思わず殺気を飛ばしてしまう。


 地面に着地し、【飛翔】と【擬態】を解除した。


 すると目の前に、突然俺が現れたように見えるから驚いたのだろう。


 ビクビクしながら、驚き固まっていた。


 それと同時に、触手野郎を見た瞬間、家族が殺された光景を思い出してしまう。


 その影響で思わず【覇気】を、無意識のうちに使ってしまった。


「久しぶりだな?糞野郎。」


 そう言うと、触手野郎は恐怖に怯え、その場から逃げようとしたのだった。




 ★☆★☆


 触手視点


「Gaaa!」


 こんなの聞いてない!こんなヤバい奴がいるんだったら、最初っから人間界に来なければ良かったんだ。


「Gu!」


 クソ。逃げるしかない。この場所から一刻も出なければ!


 そう思って逃げようとしたら、


 ドン


 見えない壁にぶつかった。さっきからこの先を進もうとするが、見えない壁に邪魔される。


「Ga?」


 どうして?思わずそう言うと


「それは魔力で作った『結解』だ。お前をここで逃がす訳ないだろ?ここで死ぬんだよ。」


 鎧を纏った奴に声をかけられた。何を言ってるか分からないけれど、そいつは物凄く怒っていた。


 ここはこいつの縄張りみたいなモノなのか?


 こんな奴の怒りを買うくらいならば、魔界で静かに過ごしてればよかった。


 そう思っていると


「Ga?」


 違う方向に逃げる最中に突然こけた。なんでだ?つまずいた覚えはないぞ。


 それに、なんで両足の感覚が無いんだ?


 恐る恐る見ると、両足は既に無くなっていた。


「Gaaaaaaaaaaa」


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いー


 遅れて感じる痛みに思わず絶叫した。


「あはははは。無様だな。」


 黒い鎧を纏った奴を見ると、俺の両足を両手に抱え、狂ったように笑っていた。


「Gigi」


 もう駄目だ。殺される。そう思った瞬間


黒鳴雷クロナルイカズチ


 胴体を貫かれ、全身に黒い電撃を浴びせられた。


「Goaaaaaaaaaaaa」


 今まで味わったことのない痛みに、思わず絶叫する。


「危ない危ない。忘れる所だった。」


 死ぬと覚悟したその瞬間、電撃が止まった。


「Ga....aa?」


 朦朧とした中、黒い鎧を纏った奴を見るとー


「時空間魔法ー『無限地獄』」


 何かの魔法を発動させられた。


 終わったのかと思い目を開けたが、時すでに遅し。


「もう目障りだ。死ね。『灼熱炎舞・改』」


 その言葉を最後に、黒い炎で焼き尽くさせたのだった。




 ★☆★☆


「不安要素の第1号がとりあえず消えたな。」


 触手野郎を殺した後、その場で一息つく。


 あいつには、特別な魔法をかけた。


 死後、永遠に癒えない痛みが続くように『無限地獄』をかけておいたのだ。


 死んだからと言って、痛みから解放される訳では無い。


 過度な精神的ダメージは魂を崩壊させる。つまり、魂がぶっ壊れるように設定しておいた。


 成仏できず、魂が消滅するまで永遠にこの場で苦しむことになるだろう。


 これで一安心だなと思っているとー


「あら?もう殺しちゃったの....」


「既に終わってた....」


 後ろから遅れてきた、狂歌と美香に声をかけられた。


 変身はしていないが、


 それほどまでに、戦いたかったのだろうか。


 少し悪いことしたな。なにか埋め合わせをせねば。


 何かないか。何か。


「あっ。今日両親の結婚記念日でパーティやるけどお前ら来るか?」


 この後の予定を思い出し、2人を誘うことにした。


「え?いいの。行きたい!」


「絶対に行くわ。」


 母に2人を誘っておくように言われていたが、すっかり忘れていた。危ない危ない。


 2人の返事をもらった後、お互いに家路につくことにしたのだった

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