104話 推測

 冬柴美香ふゆしばみか視点


 作戦会議が終わるとうちは、時雨さんに手を掴まれ、寝室まで連れていかれることになった。


 すぐにワイシャツに合うズボンを選び、貸してくれることになったのだが、今度は下着となった。


「うーん。こんなのはどうかしら。」


「す、透け透けの下着....」


 手渡された黒い下着を見て、思わず苦笑いしてしまう。何故なら、うちが一度もはいた事もないような大人の下着であったからだ。


「ごめんなさいね。こういうのしか持ってないのよ~。それに、そんな恰好で家に帰らせる訳にもいかないでしょ?」


 時雨さんは申し訳なさそうに謝って来た。悪意は特に感じられない。


 ほ、本当にこれしか持ってないんだ・・・


 内心で思わず凄いと思ってしまった。ノーマルな下着が一個も無かったから。


 そ、それに善意で貸してくれる人には、流石に贅沢は言えない。無いよりマシなのだから。そう考えればうちは我慢できる。


「あ、ありがとうございます。」


 だからうちは、感謝してその場ですぐに着替えた。


 幸いにも、サイズはちょうど同じだった。これで下着無しで帰ることも無くなった。


 良かったと思わずホッとしていると


「美香ちゃん。」


 後ろから時雨さんに声をかけられた。


「何でしょうかお義母さん。」


「未来でうちの子がお世話になったみたいね。美香ちゃんが融合している間に、狂歌ちゃんとも話し合ってたけれど、辛い時にあの子を支えてくれてありがとう。」


 何だろうかと思い、後ろを振り向くと時雨さんにお礼を言われた。


「い、いえ。私も辛かったので、むしろ支えてもらったと言いますか....」


「うふふ。そうなの。それでもありがとね美香ちゃん。」


「はい。」


 少し照れながら口ごもると、時雨さんに笑われてしまった。


「それにしても、さっきあなた達が急に変身するものだから、私吃驚したわ。」


 さっきのリビングでの出来事を思い出し、そちらに話題を振る時雨さん。


「あの変身を私たちは魔人化と呼んでいます。」


「魔人化....」


「シンジ君の魔人化が騎士姿なのは、きっと大切な人を守れなかった後悔と、無力な自分への激昂、それに大切な人を守れるだけの強さが欲しくて願ったから、あの姿になったんだと思います。」


「大切な人....」


「まぁ復讐がほとんどの動機みたいだったので、これはうちの勝手な推測なんですけどね。」


 気が付けば、部屋の空気がしんみりとしている事に気が付いた。


「今回は大丈夫ですよ。相手はただの中級。こっちは幹部級2人にシンジ君が居ますからね!過剰戦力ですよ。誰も死なせません。だから安心してください。」


 時雨さんを安心させるためにうちは、笑顔でそう言う事にした。


「そう。美香ちゃん大怪我だけはしないようにね。」


「はい。」


 うちは時雨さんから注意を受けた後、荷物をまとめ、すぐさま家に帰ることにしたのだった。




 ★☆★☆


 ???視点


 それは気が付くと公園の中にいた。


「Gigaga!」


 ついにやったぞ!


 空間をこじ開けた後、無事人間界にたどり着くことが出来た。


 目の前には、知らない道具の様な物が沢山ある場所に出た。


 周囲には知らない建物に、青い空、きれいな空気が流れている。


「Gogo」


 ここが人間界か。良い所だな。低レベルな生物気配ばかりだ。


 虫けらがウジャウジャいやがる。すぐさま支配してくれるわ。


 だが、その前にー


「Kikiki?」


「Lololo?」


「Wawawa?」


 後ろを振り向くと、素っ頓狂な顔でこちらを見てくる雑魚共がいた。


 全ての魔力を使い切ったのか、全身から汗を流しながら、膝に手をついていた。


「Gorara(もうお前らは不要だ。ここで死ね)」


 もうお前らは必要ない。王になるのは1人で充分。そう3体に伝えるとー


「Kika!(なに!)」


「Lolo(オラ達を)」


「Wawa!(騙したのか!)」


 3体の雑魚魔物は一斉に襲いかかってきた。


 もとからこいつらは利用するためだけの道具。


 人間界への片道切符と、魔力補給のための餌だ。


 だから、こいつらを始末することにした。




 数分後ー


 それは公園で1人、3体の魔物を食べ終えると


「Gororo(手始めに、ここら一帯の人間を虐殺するか)」


 そう考えると触手を持つ魔物は、快楽を求めその場から移動する事にしたのだった。

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