97話 狂歌

 読者様へ:最近体調が悪いです。更新途切れたらすみません。あまり期待しないでください。


 ★☆★☆


 扉を開くとそこにはー


「大事な話って何かしら?」


 スマホを片手に、疑問符を浮かべる制服姿の狂歌がいた。


 生きている。未来では死なせてしまったが、あの狂歌が生きている。


 そのことに感動し、思わず抱きしめたい衝動に駆られるが、我慢をした。


 いきなり抱き着いても、嫌がれるだけだ。


 今度こそは守ろう。そう胸に決意し、狂歌を正面を見据えると


 その場でこちらの返事を待っていた。


「シンジ?」


「ああ悪い。少し考え事をしていた。」


 不思議そうな顔をし、こちらを見つめてくる狂歌。その場で何か違和感がする。


(あぁそういえば。付き合う前はよく名前で呼ばれていたな。いつも『あなた』呼ばわりするからそっちに慣れてたみたいだ。)


 すぐに違和感の正体に気が付いた。


「大事な話があるんだ。俺の部屋に来てくれないか?お願いだ。」


 真剣な表情でそう告げると


「え、ええ。分かったわ。」


 若干戸惑ってはいるが、承諾してくれる狂歌。


 すぐに家にあがらせ、二階の部屋に案内することにした。


「今日は学校よ。準備をしなくていいの?シンジ。」


 今まで気になっていたのか、チラチラと服装を見ながら、遠慮気味に聞いてくる狂歌。


「平気だ。今日はサボるからな。」


「そ、そう。何だか雰囲気変わったわね。」


 今日は元々学校をサボる予定だ。そう答えると、少し驚く様子を見せる狂歌。


 今まで学校をサボった事のない俺に対し、驚いているのだろう。


「そ、それに何だか筋肉が凄いわね。筋トレしたの?」


 二の腕を指さし、少し嬉しそうな様子を見せる狂歌。


 筋肉が好きなのだろうか・・・


「連休中に鍛えた。」


「そう。」


 狂歌の質問に対し、それっぽいことを言った。


(だがもちろん嘘だ。10連休程度の日にちでは、これ程の筋肉はつかない。なんせ、修羅場を何度もくぐり抜けた先に、手にした肉体だからな。)


 そう思っていると


「どうして鍛えたの?それに、その髪イメチェン?」


「ああそう言えば。忘れてたな」


 言われて気付いたが、黒髪に何本かメッシュが出来ている。過去の俺は黒髪だったからな。


 さっきから頭部に視線を感じていたのは、それのせいか。


「まぁあれだ。大事な人を守る為に鍛えたとでも思ってくれればいい。」


「へぇそうなの。いるんだ大事な人(ボソッ)」


 階段を上がりながら答える。


 聴覚が強化されているため、聞き逃すことはしなかった。


「例えばお前とかな。」


「へ?」


 小さくつぶやく狂歌に、振り返って笑顔で答える。すると、予想外の行動に赤面する狂歌。きっと聞かれていないとでも思っていたのだろう。


(可愛いな。)


 なんて思っていると、自分の部屋の前についた。


「入ってくれ。」


「お、お邪魔します。」


 遠慮気味に部屋へと入ってくる狂歌。少し緊張しているようだ。それに、さっきから顔が赤い。さっきの階段での出来事をまだ引きずっているようだ。


 バタンッ


 扉を閉め、正面にいる狂歌に抱き着いた。


 もう、抱き着きたい衝動を抑えられなかったからだ。


「へ?」


 可愛い声を出し、驚く様子を見せる狂歌。


「シ、シンジ!?///」


 体温が上昇し、心音が大きくなっていた。


 この瞬間、狂歌は最も油断していた。


 だから俺は


「『五感遮断ブラックアウト』」


 闇魔法で無力化した。倒れる肉体。すぐさまキャッチし、ベッドに寝かせた。


 これで過去の狂歌が手に入った。異空間から未来の狂歌を出す。


「【融合】」


 ベッドで2人の狂歌を並べ、唱えた。融合し合う肉体。


 そしてー


「蘇生魔法-『復活リザーレクション』!」


 その瞬間、狂歌は光に包まれるのだった。




 ★☆★☆


 白河狂歌しらかわきょうか視点


 気が付くと知らない場所にいた。


「ここはどこかしら。」


 真っ暗な空間が何処までも続く、奇妙な世界だった。


 その場で立ち尽くしていると


「あら?あなたは....私....?」


 後ろから聞こえる声に反応し、振り返ると


 そこには鋭い犬歯の生えた、碧眼の女性がいた。


 まるで吸血鬼のような姿。そして不思議に思ったのが、その女性は、私にそっくりなのだ。


(まるで、鏡でも見ている気分だわ。)


 そう思っていると


「あなたは誰?」


 質問を投げかけた。するとー


「誰って。あなたは私でしょ?」


 まるで、当たり前じゃない。何を言っているの?とでも言うように答える女性。


 その表情は、一切嘘を付いていなかった。


「一体何を言っているのよ。私が2人いる訳ないじゃない!」


 私は訳が分からず、激昂して否定をすると


「本当に、これは一体どういう状況なのかしらね。」


 私にそっくりな女性は、考える素振りを見せた。


 その動作、挙動、クセ、そのすべてが私にそっくりだった。まるで同一人物であるかのように。


「あなた。今は西暦何年?」


 急に話しかけてくる女性。


「そんなの2120年5月10日に決まってるじゃない!」


 何を当たり前のことを聞いているの?と思ったが、私は正直に答えた。するとー


「どういう事なのかしらね....本当に....何故過去の私がいるの....それに....ここは本当にどこなのかしら....」


 戸惑う様子の女性。


「次は、『魔人薬』『触手』『四天王』『魔界』『獅子王』この中で知っている単語はあるかしら?」


「さっぱり分からないわ。」


 次に女性は、違う質問をしてくるけれど、私はまったく意味が分からなかった。


「そう....それを知らないのね....」


 ガッカリした表情を見せる女性。


「シンジは一体どこにいるのかしら(ボソッ)」


 その発言を聞いて私はー


「ちょっと。それってどういう意味かしら?何でシンジをあなたが知っているのよ。」


 思わず問いただしてしまった。


「何でって。それはシンジが私の婚約者だからよ。過去の私ちゃん。」


 女性は、当たり前だとでも言うように答えた。


「過去の私?何を言っているのよ。じゃあ、あなたは未来の私なの?」


「そうよ。」


「嘘ね!あり得ないわ。」


「本当よ。」


 引き下がらない女性。


「だったら確認させてもらうわ。私の秘密で。」


「別に構わないわ。」


 よっぽどの自信があるのだろう。女性は余裕の表情を浮かべていた。だから、質問攻めにすることにした。



「嫌いなものは?」


「父親。」



「好きなものは?」


「シンジ。」



「なにフェチ?」


「匂いフェチ。」



「一番の思い出は?」


「子供のころにやったシンジとのおままごと。」



「チャンスだって感じる瞬間は?」


「シンジが汗をかいたとき!ハンカチで拭き取れるから!」



「既成事実を作るには?」


「時雨さんと結託するのが一番早い!」



「あ、あってるわ。」


「当然よ。」


 全ての質問に即答で答える女性。


 目の前の女性が未来の私。でも、何となくだけど納得してしまった。


「未来では、家族を魔物に殺されたシンジが復讐に燃えてね。カッコよかったわ///」


 うっとりするその姿。私ってあんな顔が出来るのね。ちょっと色気が凄いわ。


 そう思っていると気付いた。


 吸血鬼の女性と私の身体が、いつの間にか光っていることに。


「これは一体なんなのよ!?」


「何かしら...これは一体....」


 私達の身体が光となって消滅していく。


 死んでしまうと思っていると、知らない記憶が頭に流れ込んできた。


 魔物と戦う記憶。四天王と戦う記憶。


 そして獅子王に殺された記憶。その瞬間理解した。


 過去の私と未来の私が、シンジによって、何らかの方法で融合されているという事に。


「消失していく身体....これは統合されているのね....私達が....」


 女性の言葉を最後に、私は再び意識を失うのだった。



 ★☆★☆


「あら?私いつの間に。」


 気が付くとベッドに寝かせられていた。


「お。起きたか狂歌。」


 目の前に現れるシンジ。その瞬間ー


「愛しているわ。


 抱きしめたい衝動に駆られ、私はシンジに抱き着いたのだった。

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