96話 違う選択

「朝からするだなんて。破廉恥だわ!」


 いつの間にか、扉の前に立っている母。


 ニヤニヤした表情を浮かべ、嬉しそうに言ってきた。


「なんでここにいるんだよ。」


 思わず問いかけるとー


「だって下で呼びかけても、全然降りてこないんだもの。夜中の件もあったし、心配になるじゃない。」


 平然とし、こちらの質問に、まともな理由で言い返す母。


「私、邪魔だったみたいね?」


 ニヤニヤした表情で言う母。


「8時までには支度するのよ?じゃあね」


 バタンッ!


 嬉しそうに言うと、すぐさまドアを閉めるのだった。



 ★☆★☆


「なぁエレナ聞いてくれ。」


「なにマスター?」


 エレナの両肩を持ち、真剣な眼差しで見つめた。


「魔界に行って過去の自分を探してこい。」


 キョトンとした表情を浮かべ


「え....でもお母様の護衛は?」


 護衛はどうするのかと質問してくるエレナ。


「今日は一日中ここを俺が見張っている。だから大丈夫だ。」


 安心させるようにエレナに言い含める。


「でも、私はー」


 しかし、それでも役に立ちたいのか、必死に食い下がるエレナ。


 だから俺はー


「お前が心配なんだエレナ。」


「ま、ますたー///」


 抱きしめて言う事を聞かせた。


「お前の魂は既に一部が欠けてる。俺ほど重症ではないが、いずれ代償で死ぬだろう。だから魔界で探して来てくれ。過去のお前を。。その影響で、予想外なことが起こるかもしれない。過去のお前がどこかで、違う行動をするかもしれない。もしかしたら、殺されるかもしれない。だから急いで探してきてくれ。他の奴に殺される前に。」


「マスター。」


 理由を言ってエレナを説得する。


「過去のお前が死んだら....魂はもう二度と修復できないんだ....今度はもう大切な人を誰も失いたくない....だから頼む....」


「うん....分かった」


 懇願し、本音を言うとエレナは納得した。


「待っててねマスター。すぐに戻るから!」


 英玲奈はそう言うと


 その場で空間を捻じ曲げ、魔界に行ってしまうのだった。




 ★☆★☆


 部屋でスマホを見つけ、メールを打つ。


『なぁ大事な話があるんだ。俺の家に来てくれないか?』


 LIMEで狂歌と美香に連絡をした。するとー


『分かったわ。すぐに向かうわね。』


 狂歌からすぐに返信がやって来る。


「返信はや!」


 思わずそう言ってしまう。


 何故なら連絡してから、まだ10秒も経っていなかったからだ。


 数分後には


『うん。出来るだけ早く向かうね。』


 美香からも連絡がきた。


 時計を見ると、7時20分となっている。


 狂歌が来るまでしばらく時間がかかるだろう。


 俺は私服に着替え、


「今日は学校をサボるか....」


 リビングに降りる事にしたのだった。




 ★☆★☆


 リビングに降りると、母が朝食を作って待っていた。


「あらら?意外と早かったのね。」


「なんもしてねーよ。」


 ニヤニヤしながら聞いてくる母。それに対し、俺は正直に答えた。


「エレナちゃんは?」


「あいつは魔界に用があるからな。しばらく戻ってこないぞ。」


 エレナが降りてこない事に対し、質問をしてくる母。


 朝食を作っていた。


「そうなの。ところで、なんで私服なのよ。着替えないの?今日は学校でしょう。」


 制服に着替えていない事に気が付いたのか、更に質問をしてくる母。


 手慣れた様子で料理をお皿に載せ、話しかけてくる。


「今日はここら一帯を守護するからな。学校に行ってる暇はない。」


 椅子に座り、目の前に朝食を出された。


「いただきます。」


 手を合わせ、朝食を食べる事にした。


「美味ッ」


 数百年ぶりの、まともな食事に感動し、思わずガッツいてしまう。


「ちょっとガッツきすぎよ!もっとゆっくり食べなさい。」


 その様子を見て心配になる母。きっと喉でも詰まらせると思ったのだろう。


 注意されてしまった。


「シンジあなたー」


 その場で一心不乱に食べていると


「なんで泣いてるのよ」


「えっ」


 一瞬何を言っているんだ?と思ったが、言われて気付いた。


 顔を手で触れると、いつの間にか涙を流れていたのだ。


 すぐさま手で顔を拭き、涙を消す。


「数百年ぶりのまともな食事に、感動したみたいだ。」


 正直にそう言うと


「もう最初からそう言いなさいよ。吃驚したじゃない。」


 安堵した表情を浮かべる母。


 お代わりを要求し、俺は朝食を食べ続ける事にしたのだった。




 ★☆★☆


「狂歌まだか。」


 リビングのソファーにくつろぎ、狂歌が来るのを待っていた。


 するとー


「狂歌ちゃんが来るの?」


 テレビを見ていた母が急に話しかけてきた。


「ああ。」


「どうして?」


 疑問符を浮かべる母。


「言ってなかったっけ?それはアイツが、俺の仲間の一人だったからだよ。」


 そう言うと


「ええええ。そうなの?仲間だっていうから、てっきり男かと思ってたわ。」


 驚愕する母。今まで勘違いしていたようだ。


(まぁ大事な仲間としか言ってなかったからな。俺の方にも、原因はあるだろう。)


 そう思っていると



 ピンポーン



 インターホンが鳴った。


 その瞬間ソファーから飛び降りる。


 はやる気持ちを抑え、急いで玄関へと向かった。


 扉を開けるとそこにはー


「大事な話って何かしら?」


 スマホを片手に、疑問符を浮かべる狂歌がいたのだった。

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