58話 融合と300年

「これが俺の姿か。」


 


 巨大な姿見で全身を確認した。


 真っ黒な毛に全身覆われ、覗く鋭利な牙が見える。


 獰猛な目つき。左右の異なる赤と青の瞳。


 そして尻尾。その姿はまさしく狼だった。



『【王気】が最終派生【覇気】に成長しました。』



「は?」


 突然脳内に表示された文字に驚き、思わず「は?」と言ってしまった。


 獅子王の自信満々な発言と、数百年経っても成長しなかったことから打ち止めだと思っていたが、どうやら違ったようだ。



【覇気】…【闘気】の最終派生。巨獣クラスにしか扱えぬ力。奥の手が存在する。それは生命力を対価とする秘儀である。



(これでようやく最終派生になったのか。長すぎだな。獅子王あいつ嘘つきやがって。何が【王気】が最終派生だよ。マジで信じたじゃねーか。)


 久しぶりに進化をした俺は自身を『解析』することにした。



「名前」秋山真二

「年齢」317歳

「 L V 」 800

「階級」巨獣

「種族」黒狼ブラック フェンリル(突然変異種)

「体力」800000/800000

「魔力」800000/800000

「筋力」800000

「耐久」800000

「俊敏」800000

「能力」【捕食】【強欲】【憤怒】【傲慢】【解析】【魔力操作・超】【身体能力・超】【神速再生】【覇気】【体力自動回復・超】【魔力自動回復・超】【生命力吸収】【魔力吸収】【魔力付与】【部分強化】【危機感知】【気配感知】【熱源感知】【生命感知】【魔力感知】【警戒】【隠密・超】【気配完全遮断】【熱源視】【暗視】【無音】【無臭】【索敵】【孤独耐性・超】【斬撃耐性・超】【打撃耐性・超】【魔力攻撃耐性・超】【痛覚遮断】【集中力強化・超】【弱点看破】【思考加速】【並列思考】【限界突破】【暗殺・超】【刀術・超】【格闘術・超】【体術・超】【竜装】【竜化】【竜眼】【魔眼(未来視)】【咆哮】【威圧】【狼化】【鉤爪】【獅子化】【剛体】【不眠不休】【念話】【催眠】【洗脳】【殺意】【殺気】【恐怖】【狂気】【冷徹】【解体】【変身】【誘惑】【拷問】【融合】【縮地】【天歩】【水歩】【飛翔】【追跡】【嗅覚強化・超】【消化強化・超】【視覚強化・超】【聴力強化・超】【味覚強化・超】【回避強化・超】【不屈】【根性】【悪食】【無呼吸】【触手】【魔刀生成】【操糸】【擬態】【天命】【天魔】【神力】【神耐】【神速】【状態異常無効】【火魔法】【雷魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】【闇魔法】【光魔法】【氷魔法】【毒魔法】【呪詛魔法】

「称号」<元人間><適合者><魔人><突然変異種><モテ男><黒騎士><格上殺し><格下殺し><殺戮者><魔王><復讐者><冷徹者><修羅><超越者><巨獣>



 王級から初めて巨獣に進化した存在。


 修羅と化し、長年の時をえてようやく進化できた。



「ブラックフェンリル...グレイブをベースに融合したって意味はそういう事か...通りで...」


 あの時のグレイブの発言をようやく理解した。


「それにしても300年経ってたのか。長かったな。」


 赤黒い空を見上げ、思い出すシンジ。


「ま、マスター?もう、元の姿には戻れないの?」


 泣きそうな顔でこちらを見てくるエレナ。


「何泣きそうな顔してんだ。戻れるか試しにやってみるか。」


 自分の体を魔力で人型に変化させることが出来るか試してみた。


 肉体を縮めるイメージで、自身の周囲を膨大な黒い魔力で覆う。


 すると簡単にできた。


「やったー。マスターが元に戻った。」


 狼人の姿に戻ると、嬉しそうな顔で正面から抱き着くエレナ。


 やろうと思えば、狼の耳と尻尾の生えた状態に戻ることも、人間の姿にも戻ることが出来る。


 ただ、今までと違うのは『黒狼』であることが主体に変わってしまったという点だ。


 人型の状態になるには一々変身をしないといけなくなってしまった。


(まぁ。どうでもいいか。)


 とりあえず、気になったことをエレナに聞いた。


「俺が進化した直後どうなってた。」


「うーんとね。マスターが突然意識失って。その直後に突然黒い闇に覆われたんだよ。」


「それで?」


「数分したら、グニャグニャしていた闇が動きを止めて、卵みたいな形になったの。」


 そう言って、後ろにある巨大な卵のような殻を指さすエレナ。


(なるほどな。そんなことがあったのか。そこから俺が出てきたらこうなってたってことだな。)


 そう考えていると


「でもマスター元気になって良かったー。ここ数百年マスターから感情がなかったから私ちょっと怖かったの。」


 抱き着きながら笑顔を見せるエレナ。


(そういや、俺は余裕がなかったな。)


 最初は『朱雀』の居場所と『魔水の泉』の場所を教えてもらうだけの関係だった。


 赤スライムと呼ぶのは不便だった。だから名前を付けた『英玲奈エレナ』と。


 俺の好きなゲームキャラの名前を付けた。そうしたらいつの間にか懐かれてしまった。


 近くまで案内されたが、『朱雀』から溢れ出る気配だけで格の差を思い知らされた。


 絶対に勝てないと。だから進化する可能性に目を付けた。経験値が多く溜まり、自身を強化してくれる『魔水の泉』に。。


 終わりのない戦闘の日々。代り映えしない景色。いくら殺しても溜まる経験値はちっぽけだった。進化する兆しは一切無い。


 それに、魔界各地に散らばって存在する『魔水の泉』。全て探すのに苦労した。


 休憩は一切しない。時間が勿体無かったからだ。


 そんな日々を数百年過ごしていたら、いつの間にか俺から感情は消えていた。


 それに、エレナが俺とずっと一緒に行動していた訳ではない。


 とある事をしていたり、魔界から人間界に遊びに行ってたりしていたのだ。俺の生まれた世界に興味を持ってしまったせいだ。


 それでも、長い時間共に過ごした事実は変わらない。


 あいつは俺のことをマスターと呼ぶが、俺にとってエレナは友人のような存在となっていた。


「悪いな。俺には余裕が無かったみたいだ。」


 エレナの頭を撫でる。丁度いい高さに頭があったからだ。


「えへへ。~♪」


 嬉しそうな顔をするエレナ。


「ところでマスター。あの殻食べてもいい?」


 そう言って指さすエレナ。


「好きにしろ。」


「やった~。」


 一瞬で殻に覆いかぶさり、あっという間に吸収していく。


 数十秒もかからず、消滅した。


「ふ~美味しかった。ところでマスター。『朱雀』にもう挑むの?」


 聞いてくるエレナに俺は次の目的を答えることにした。


「いや、まだだ。まずは『白虎』を殺ってから力をつける。」


 俺はエレナにそう答えるのだった。

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