52話 『獅子王』ゴルダック

 ★☆★☆


(何なんだよ【王気】って...また差が開くのかよ...)


 黄色く輝くオーラを纏う獅子王を正面から見据える。


 さっきから冷や汗が止まらない。あいつに少し恐怖している。


 正直舐めていた。王級に進化して増長していたんだ。同格なら勝てると。


 同じ階級なら絶対に勝てると思っていたんだ。


 でも違った。こいつは


 俺よりも更に強い切り札を持ってた。それに、少し魔力を使い過ぎた。


 身体が重く、さっきから息切れが止まらない。


(頼むからこっちには来るなよ。お前ら。)


 近くに落ちていた獅子王の足を捕食して、少し回復する。


 俺は【闘気・極】を全力で解放した。


「最終派生持ってるからって調子に乗ってんじゃねーぞ!」


 震えを消し飛ばすために吠えた。全身に青いオーラを纏う。


「ここからが勝負だ!【憤怒】【闘気・極】全力解放!」


「王級になっても選ばれた者にしか使えぬ力!冥途の土産に俺様が見せてやるよ。地獄で後悔しやがれ!【傲慢】【王気】全力解放!」


 俺は理性を吹き飛ばし、全力の獅子王に戦いを挑むのだった。




 ★☆★☆


 獅子王ゴルダック 視点


(こいつムカつくが、やっぱり面白い奴だな。)


 憤怒を解放し、理性を失ったシンジを正面から見据える獅子王。


 これが、ゴルダックのシンジに対する第一印象だった。


 最初は、【隠密】【気配遮断】【擬態】を使って俺様の部屋に入ってきやがった。


(あのザコ上手く利用されてんじゃねーぞ。)


 イラついて殺そうと思ったがやめた。面白そうな相手を連れてきたからな。


 だからあえて俺様は、あえて気付かないフリをしてやった。


 蛇野郎に激怒することであいつに隙を見せた。


 そしたら、呪詛魔法で俺様を暗殺しに来やがった。


 腕に魔力を集め、した。こっちの方がより強化できるからな。それでも、軽く斬られてしまったが。


(こいつ、捕食を持ってやがる!?)


 匂いでわかった。『捕食王グレイブ』の強烈な匂いがしたからだ。


 それに【強欲】と【憤怒】の匂いが微かにだがした。


(あいつら、こいつに喰われたのかよ。それに俺様と同じ王級クラスじゃねーか。)


 本能で察した。


 四天王は全滅したと。今まで邪魔していたのはこいつだ。ダルファーがやられたなら

 他の新入り幹部もやられているはずだ。


 腕にかけられた呪詛魔法は『カルマ』のだと確信した。


 ムカついて思わず殺すと言っちまったがな。


(だが、俺様の配下にしたら使える駒になるはずだ。)


 獅子王は確信していた。


(俺様が上手く使ってやる。)


 だから勧誘してやった。いい駒になるからだ。


 仲間になれば、今まで邪魔してきた罪をと。


 本当ならば俺様の邪魔をした者は即殺すが、こいつは殺すには惜しい。


 配下となれば、侵略した世界の半分をくれてやると言ったんだ。


 だが、あいつは断った。ムカついたぜ。俺様の勧誘を断ったんだからよぉ。許せねぇ。


 殺さないように痛めつけて、分からせてやろうとした。俺様に仕えるべきだと。


 それに、外で暴れている3体の幹部級はこいつの配下だろう。


 俺様との戦闘で、ザコ共が邪魔しないように殺せと命じてるはずだ。


 俺様だったらそうする。


(それにしても、こいつなかなかやるな。)


 俺様は、ますますこいつが欲しくなった。


 武器にさせる戦い方。


 魔力武器にを付与して戦う高等技術。両目の違う魔眼。


 殺すには惜しい人材だ。面白過ぎて一瞬だけ忘れちまった。


 だが、それでも俺様の『獅子連撃』をまともに食らって生きてやがったんだ。


 更に欲しくなった俺様は絶望させることにした。


【傲慢】を解放した。


 


(何か体の異変に気付いているようだな。まぁ教えてやる義理は無いが。)


 それでもあの突然変異種は、頑張った。【闘気・極】で対抗してきた。


(やるな。あの熟練度、か?)


 そろそろ実力差が分かった所だろう。


 最後のチャンスで、もう一度だけ勧誘をしてやった。


(これが最後のチャンスだぞ。判断を間違えるなよ。)


 俺様は期待していたが、あっさりと裏切られた。


『死んでも御免だと。』


(舐めやがって。俺様が勧誘して、いい気になってんのか?もういい。てめぇを殺して3人の見せしめにしてやるよ。どっちに着くのが正しいか分からせてやる。)


 俺様は本気を出すことにした。こいつはもう要らない。力をつける前にここで殺す。外にいる3体を仲間にしよう。決定だ。


 俺様は、【闘気・極】のである【王気】と、【傲慢】を最大限まで使い、始末することにした。


『王級になっても選ばれし者にしか使えぬ力。冥途の土産に俺様が見せてやるよ。地獄で後悔しやがれ!【王気】【傲慢】全力解放!』


 全力の2人はぶつかり合うのだった。

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