51話 圧倒的

「嘘...だろ...」


 思わずつぶやいてしまった。


 獅子王の魔力が更に上がったからだ。


「本気で行かせてもらうぞ。もっと俺様を楽しませろ!」


 そう言うと、獅子王の速度が更に上がった。


 一瞬姿を見失ったかと思うと、腹に今までよりも重い衝撃を食らう。


「がはっ。」


 吐血した。


 今の一撃で腹部の鎧が砕け、肉体が露わとなる。


(マズい。さっきよりもスピードとパワーが増してやがる。)


 前回の一撃では鎧にヒビが入るだけで済んでいた。


 しかし、今の一撃はさっきの比ではなかった。


 危機感を感じるシンジの額にさらに汗が募る。


「やっぱり見間違いじゃねぇな。てめぇリビングアーマーかと思ってたがどうやら違うな。あいつらは肉体を持ってねぇ。お前突然変異種だろ?それに城の外で暴れてる3体に幹部級お前の仲間だな?」


 攻撃の手を辞め、獅子王はまた勧誘をしてきた。


「だから何だ。」


「最後にもう一度だけ聞く、外にいる3体とお前、俺様の配下となれ。実力も申し分ないからな。新たな四天王に入れてやるぞ。それに人間界を侵略できた暁には世界の半分をくれてやる?どうだ悪い話じゃねーだろ?」


「さっきも答えたが、死んでも御免だな。」


 それでも俺は拒否する。侵略に興味は無いからな。


「そうかよ.......じゃあ死ね!」


 残念そうな顔を見せたかと思うと、獅子王は容赦なく攻撃を仕掛けて来た。


 ギリギリで反応して両腕で辛うじて防御したが、へし折れた。


(なに!?)


 内心で驚愕しながらも、すぐに神速再生で腕を治す。


(身体強化してるのに、なんでさっきから体が重いんだ?攻撃力、速度、防御力、反応速度、すべての身体能力がみたいだ。)


 俺は防戦一方となり、徐々に獅子王に追い詰められていく。


 背中に4対の翼を出す。


 現時点では不利だ。上空に飛び、上から攻撃することにした。


 上空で膨大な魔力を溜める。


「雷槍。」


 雷魔法で生み出した青い槍を投擲した。


 獅子王に当たり、爆発して煙が舞う。上空から何発もの雷槍を穿つ。


「や、やったか?」


 煙が晴れるとそこには獅子王はいなかった。


 背中から気配を感じ、振り返るようとしたが衝撃を受け、


 背中に獅子王が足をのせて動きが取れなくなる。


「安全圏から攻撃しやがって。」


 鬣はチリチリとなり、背中には数本槍が刺さった跡がある。


 イライラしたような顔をしながら、俺の翼に手をかけ


「ふんっ。」


 獅子王に全て引きちぎられた。


「があああああ。」


 あまりの痛みに思わず絶叫してしまう。


「死ね。」


 背中を片足で押さえつけられ、身動きの取れなかった俺の頭部に拳が迫ってくる。


(マズい。このままでは死ぬ!)


「【闘気・極】!」


 追い詰められらた俺は、奥の手を使うことにした。


 このままでは負ける。出し惜しみなどしている場合ではない。


 闘気によるブーストがかかり、力が漲ってくる。何でもできそうな感覚になる。


「ほう?使いこなせるのか。」


 膨大な力が内側から漲り、離脱することが出来た。


 互いに警戒をしながら対面する。押さえつけられていた間に、何もしなかった訳ではない。


 刀に膨大な魔力をギリギリまで付与していたのだ。


(ここからは俺のターンだ!)


 獅子王を刀で弾き飛ばし、全力の一撃を与える。


武御雷神タケミカヅチ4連撃。」


 獅子王が両腕で防いだが、両腕を切り落とすことに成功する。


「ぐああ。」


 流れ出る濃密な電撃に痺れ、絶叫する獅子王。体から煙を出していた。


 獅子王はうめき声をあげながらも両腕を再生させ、直ぐに反撃してくる。


 今までやられていた鬱憤をここで晴らすことにした。


加具土命カグツチ2連撃。」


若雷ワカイカヅチ。」


 炎で焼き切り、電で出来た針を獅子王目掛けて飛ばす。


 目に刺さり焼き切った。


「ぐあああ。」


 うめき声を漏らし、目をつぶされた獅子王は防戦一方となる。


 必殺技を繰り出し、攻防が逆転した。


 獅子王は勘が鋭いのか目が見えない状態でも攻撃を避けてきた。


(野生の勘ってやつか?)


 腕を、足を、斬り飛ばされてもすぐに再生させてくる。


 目もいつの間にか治っていた。


(こいつ、全然魔法使ってこないな。近距離特化型か?)


 傷をつけてもすぐに治り、こちらは必殺技で魔力を消耗していく。


 俺は、奥の手である闘気を解除した。


(あいつ未だに闘気使ってこねぇぞ。し、魔力使い過ぎた。この状況マズいな。)


「ハァハァ....」


 息切れをし、内心焦っていると


「そろそろ頃合いだろう。俺様が本物の闘気を見せてやるよ。」


 そう言うと獅子王は体中に黄色いオーラを纏い始めた。


「絶望しろ。これが。」


 獅子王はニヤリと笑うとそう言った。


(嘘だろ?なんだそれは。)


 俺は力の差に驚愕するのだった。

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