50話 王級対王級

 ★☆★☆


「てめぇ。ぶっ殺す。」


 獅子王に殺気の籠った目で見られる。


(クソっ。暗殺失敗かよ。)


 気付かれてないと思っていたが、バレていたようだ。


 急いで刀を魔力で作りだす。


(今ので死んでてくれれば助かったんだがな。)


 首を切り落とす勢いでやった。本気でだ。


 最悪防がれても腕の1本は持っていく予定だったが、左腕を斬りつけるだけで終わってしまった。


「てめぇ。【捕食】の能力持ってんだろ。」


「なんだそりゃ。俺の能力は暗殺系統だぜ?」


 適当にはぐらかすことにした。答える義理は無いからな。


「しらばっくれても無駄だ。お前からはグレイブと同じ匂いがする。それに、お前アルフォースとダルファー喰っただろ。【強欲】と【憤怒】も手に入れたな?」


「何の話だ?誰だそいつらは。」


 知らないふりをする。


「まだしらばっくれる気か?てめぇが捕食の能力を持ってるのは、もう確定事項なんだよ。俺様を馬鹿にしてるのか?決定的なのは、お前が【呪詛魔法】を使ったことだ。」


 イラつきながらも説明してくれるようだ。


(ありがたいこって。)


「【呪詛魔法】は本来、骸骨スケルトンにしか使えない魔法のはずだ。てめぇ動くリビングアーマーだろ。種族的に使えるはずがねぇんだよ!』


「へぇー。」


「ッチ。俺様が説明してる間に魔力練ってんじゃねーぞ!」


 説明してくれている間に魔力をこっそり練っていたがバレてしまったようだ。


八咫烏ヤタガラス8連撃。」


 闇魔法を刀に纏わせ斬撃を飛ばした。


 斬撃は闇色のカラスとなり獅子王に向かって飛んで行くが、全て叩き潰された。


(俺って魔物的にはだったのか。でも肉体あるぞ。ああ、そういう事か。まぁ今は竜装魔人だがな。)


 考えている最中に、獅子王は懐まで一瞬で肉薄し拳での連撃を繰り出してくる。


 身体強化で攻撃を躱しつつ、こちらも応戦するが攻撃が全て防がれる。


「こりゃ四天王全滅だな。お前だろ?人間界に送ったのを殺して邪魔してたの

 は。俺様に仕える気は無いか?そうすれば、邪魔した罪を半殺し程度で済ませてやる。」


「死んでもごめんだな。」


 魔王なんぞに使える気は毛頭ない。


 俺達はこいつを殺すために魔界ここまで来たんだ。


 こいつを殺せば全て終わる。だから勧誘を断った。


「てめぇ。俺様が勧誘してるのに断るとはいい度胸だな。」


 獅子王は鬣を逆立たたかと思うとその場から一瞬で姿を消した。


 左に気配を感じる。見るともうすぐそこまで右の拳が迫っていた。


(速っ。)


 急いで腕をクロスにして防御をした。


 ズシンと思い一撃をくらう。


「ぐはっ。」


 今ので両腕の鎧にヒビが入った。すぐさま再生させる。


「やるな。今の一撃に耐えるか。流石は俺様と同じ王級だな。」


「ッチ。バレてたのかよ。」


(格下と思い込ませて油断させる作戦が台無しになったな。)


「当たり前だ。魔力を隠蔽していないでとっとと本気を出しやがれ!」


 魔力を隠蔽することを辞めた。膨大な魔力を開放する。


「ハハハハ。そうこねぇとな。まさか俺様以外にも王級がいたとはな。驚きだぜ。」


 獅子王も膨大な魔力を解放する。


 俺達は互いにぶつかり合った。神速の速さでその場を駆け巡る。


「馬鹿が!隙だらけだ。」


「お前がな。加具土命カグツチ


 竜眼で正面から肉薄してきた獅子王の筋肉の動きを読んだ。


 鉤爪を躱し、逆袈裟懸けに斬る。


 刀に付与した火魔法で獅子王の腹から肩まで斜めに焼き切った。


 今度は上手く斬れた。傷を与えることに成功する。


 それでも構わず攻撃をしてくる獅子王。


 竜眼のおかげで何処から何をしてくるのかが直ぐに分かる。


 相手の右膝蹴りが飛んでくる。


 避けた先に今度は左のストレートが飛んできた。


 躱されることを前提に攻撃を仕掛けて来た。


 時にフェイントを混ぜて攻撃をしてくるが全て見極めることが出来た。


「どうした?避けるだけで精一杯か?」


 獅子王が煽ってくるが気にしない。


(竜眼結構使えるな。)


 そう思いながらも刀に毒魔法を付与していく。


 両方から鉤爪が迫ってきた。


 電流加速ライトニング アクセルで加速し背後に回り込む。


鳥兜之根スルクカムイ3連撃。」


 介護を斬りつけようとしたが、すぐに反応され左腕で3連撃を防がれる。


 周りにトリカブトのような花が一瞬だけ舞い、すぐに消滅する。


 微かにだが傷をつけることが出来た。


「ああ?今の攻撃なんざ俺様には-」


 と言った瞬間に「ごふっ」と吐血した。きっと効かないとでも言いたかったのだろう。


 見れば目からも出血している。


「てめぇ。【毒魔法】使いやがったな。」


 左腕が紫色になり、毒に侵食されていった。


 獅子王は急いで腕を切り落とす。


 ブシュっと肉の断つ音が響く。左腕から大量に出血していく魔王。


「シ、獅子王様!」


 蛇が入り口付近で叫んでいる。やられると思って心配したのだろう。


 今まで静かにしていた蛇が叫んだ。


「ふ、ふふふ、フハハハハハ。」


 怒るのかと思ったら、突如笑い出した。


 全身の傷や毒を神速再生で一瞬で治す獅子王。


「面白い。面白いぞ。もっと俺様を楽しませろー。」


 また振り出しに戻る。


 獅子王は切り落とした左腕を俺目掛けて蹴り飛ばした。


 避けると、入り口付近で立っていた蛇に当たる。


「ぎゃああ。」


 扉をぶっ壊して、玉座の間から放り出された蛇。


(ッチ。めんどくせえな。戦闘狂かよ。)


 その後も攻撃をしていくが再生ばかりされる。


 次第に攻撃ばかりしていた俺の攻撃パターンが読まれていく。


 肉を切らせて骨を切る戦法で来るようになったからだ。


 次の攻撃を躱し、反撃をしたが右腕をつかまれてしまった。


(マズい。捕まった。)


 腕を切り落として離脱しようとしたが、一歩遅かった。


「俺様に捕まったな。」


 獅子王は狂気を貼り付けた顔でそう言いながら笑った。


「しまt-」


 もう遅かった。相手が攻撃モーションに入ってしまったからだ。


「獅子連撃」


 手に。頭に重い一撃を何発もくらう。


(こいつ。闘気を部分的に纏いやがった!)


 鎧が砕け、顔があらわになる。それでも止まらない。


 掴んでいた手は離されたが、今度はその手が攻撃に加わった。


 全身を高速の拳で殴られた。


 最後の一撃を腹にくらい、壁にふっとばされる。


「ごはっ。」


 口から大量の血が逆流してくる。


 最後の一撃で肋骨が肺に刺さり、内臓と肝臓が潰れた。


「死んだか?」


 獅子王がそうつぶやいた。


(クソが。今の必殺技ヤバすぎるだろ。)


 何とか意識を保ちながら起き上がる。気絶したら死んでしまうからだ。


 神速再生で体を元通りにする。


「ほぉ?今の技を食らってよく生きてたな。」


 関心した様子を見せる獅子王。


「舐めるな!」


 余裕の表情がむかつき、思わず怒鳴る。


「まぁ。このくらいで良いだろう。」


(は?今なんて言った?準備運動だと?)


 唖然としていると獅子王は


「【傲慢】解放!」


 と告げると更に魔力を解放した。


「ま、マズい。王が本気ヲ出した。逃げねバ。」


 蛇は急いでその場から逃げるのであった。

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