43話 準備と自覚
三日後
「おかしい。何で魔物が現れないんだ?」
リビングのテーブルに座り、仲間と各自情報を交換し合った。
ダルファーを倒して以来、一向に魔物が現れないのだ。
それも日本だけでなく、世界各地でだ。
「侵略するために配下を送っていたはずなのに、何故現れない。」
「もしかして、ダルファー1人で十分だったということかしら?」
「確かにね。うちらっていうかシンジ君いなかったら日本終わってたよね。」
「私達役に立てませんでした。」
憶測をいう狂歌に美香が答えた。
サラは落ち込んでいる様子だ。
ダルファーに全く通用しなかったことがよっぽど悔しかったのだろう。
考えても知らないものは知らない。
「もう、頃合いだろう。そろそろ現地に行くか。」
俺は3人に魔界に行くことを提案したのだった。
★☆★☆
「兄さん。まずはお買い物ですね。」
左腕に抱き着きながら嬉しそうに話すサラ。
腕に柔らかいものが2つ当たっている。
3人に提案したが、とりあえず準備をしてから行くことにした。
飢え死にだけはしたくないからな。あっちの世界の食い物は全く知らない。
知識として行き方は知っているが、何が食えるかは分からないのだ。
まぁ最悪捕食だけで済むが、他の3人はきっと嫌だろう。俺は構わないが準備しておいて損は無い。
ということで、サラと近くのスーパーで買い物に行くことにした。
道中色んな人に顔を見られていた。
ヒソヒソと近くと話し合う人達。
主に女性たちが顔を赤く染めてこちらをチラチラ見つめてくる。
きっと両目のせいだろう。
(中二病って思われてんのかな。見てるこっちが恥ずかしい的な?どうしよ。グラサン持ってくれば良かった。なんか恥ずいぞ。)
気にしないように努めたが、そんなに見られると流石に不安になる。
『なぁ。俺の目やっぱ変か?』
不安になり、思わず英語でサラに聞いてしまった。
『違いますよ。兄さんがカッコいいから思わず見てしまうんです。』
『んな馬鹿な。俺は魔人だぞ。』
(魔物にカッコイイもクソもないだろ。)
そう思って答えるとサラはため息をしながら説明してきた。
『兄さん。確認ですけど学生時代から女性達に言い寄ってこられたりとかされませんでしたか?』
『お。よく分かったな。休み時間とかにいつも女子達が言い寄って来てたんだ。「カッコいい」とか「付き合お」とかよく言われてたな。金目当てが透け透けだったぜ。』
学生時代を思い出しながら答える。
『兄さん。それは違いますよ。』
『なに?』
まさかサラに否定されるとは思わなかった。その後も続けてサラは答える。
『ただ単純に異性として好きだったから言い寄られていたんですよ。誰かに物を買って欲しいとねだられたことは無いでしょ?』
『そういえば...無かったな...』
言われて気付いた。そういえば誰かにお金持ちだと言った覚え無いなと。
(じゃあ、あれは本心だったっていうことなのか?)
学生時代を思い出しながら答えた。
『つまり、兄さんは勘違いクソ鈍感野郎だったということです。』
ビシっと人差し指を突き付けながらサラに言われてしまった。
『お、おい。そんなに言わなくてもいいだろ。』
『鈍感野郎にはこのくらい言わないと駄目なんです!』
ハッキリとサラに言われて少し傷ついた。
『分かりましたか?兄さんはもっと自分がカッコいいことを自覚するべきなんです!』
『は、はい。』
こんな強気なサラ初めて見たぞ。
気圧され思わずはいと答えてしまった。
(俺って勘違い鈍感野郎だったんだな。)
このとき初めて自分が鈍感野郎だったことに気付くシンジ。
周りには多くの一般人が二人の様子を見ており、『痴話喧嘩か?』と言われたり、子供達に『夫婦喧嘩だ!』と言われ恥ずかしくなる二人。
急いで食材を調達してくるのであった。
★☆★☆
色々とやることを済ませ、家についた。
美香と狂歌は道場で【闘気・極】の練習をしていた。
「どうだ。上手くできるようになったか?」
座禅し、集中している2人に声をかけた。
「難しいわね。まだ1分しか使えないわ。」
「うちもだよ。サラみたいに2分もいけないよ。」
2人はまだ苦戦しているようだ。
3日間でこの成長速度だ。
ちなみにサラは才能によるのか、初日の5時間であっという間にコツをつかみ2分まで維持できるようになっていた。
(全員幹部級から闘気を初めて使ったから、まぁこのくらいだろう。俺が中級の時は3秒が限界だったしな。懐かしい。)
いつの間にか、懐かしい気分になってしまっていた。
「準備はもう出来た。明日から魔界に突入するぞ。」
「ええ。」
「了解。」
「はい。」
狂歌、美香、サラのぞれぞれが返事をしてその後は、明日に向けて休むことにするのだった。
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