黒騎士の叛逆記～魔人になったので復讐します

37話 『憤怒』ダルファー

　上空から撮影しているニュースのヘリに見守られながら、変身した俺たちは一斉に攻撃を仕掛けた。

「雷切（ライキリ）。」

「血槍－螺旋。」

「闇爪－狂い裂き。」

「ファイアーブロー。」

　必殺技で一気に仕掛ける。様子見などしている場合ではない。

　最初っから全力で行かねば勝てない。

『本能』でそう感じたからだ。

　隻眼竜は俺たち全員の必殺技に対し、反撃や防御の構えをすることも無く腕を組み、ただ突っ立っていた。

(これでも喰らいやがれ。)

　必殺技が直撃する寸前

「ふん。」

　隻眼竜の尻尾での薙ぎ払いによって全員吹き飛ばされた。

「ぐあああああ。」

「「「きゃああああ。」」」

　今の一撃を胸から受けてしまった。当たった部分の鎧が砕け散る。

　あまりの威力に勢いを殺せず、それぞれ建物に吹き飛ばされた。

「がはっ」

　ビルに衝突し、吐血した。

(クソっ。なんて威力だ。あばらが2本折れた。)

　すぐに起き上がり再生させる。

(尻尾だけでこのダメージかよ。クソっ。)

　内心で悪態をついてると

「ふん。その程度か？半端物。これならすぐに情報を聞き出せそうだな。」

　とこちらを見下ろしてくる隻眼竜。

　狂歌達も傷を治し、すぐに立ち上がる。

「そう簡単に教える訳ねーだろ。」

　立ち上がり、その場から加速して刀で隻眼竜を斬りつける。

　雷を刀に纏わせ攻撃する。

　フェイントを入れつつ相手を斬りつけるが全て躱される。

　フェイントには一切反応せず、攻撃だけを躱してくる。

　まるで、俺がいつフェイントを入れるかを知っているかのように。

「弱いな。半端物。」

「舐めるな！」

　俺は更に斬りつける速度を上げた。

　しかし、全て躱される。

(クソっ。何でバレてる。他の幹部の時は通用していたのに。)

　そう思っていると

　突如隻眼竜が何もない空間を殴った。

「きゃああ。」

　吹き飛ばされるサラ。

(おい。今【擬態】を使ったサラに気付いたのか？んな馬鹿な。俺でさえ気づかなかったんだぞ。)

「ふむ。そこの小娘。何故貴様のような奴が【擬態】能力を持っておる。種族的に無理であろう。それに微かに匂う「グレイブ」の匂い。気になるな。」

　そう言って吹き飛ばされたサラに追撃を仕掛けようとする隻眼竜。

　美香と狂歌がフォローしにまわった。

　槍を構えた狂歌が鋭い突きを繰り出し、美香が高速で隻眼竜を鉤爪で斬りつける。

　しかし、一切攻撃が通らない。

　躱されたり、竜鱗に攻撃を阻まれるからだ。

(さっきから手加減されてる。俺たちを殺さないように。最低限の攻撃しかしてこない。くそ舐めやがって。)

　そのまま二人も隻眼竜に蹴飛ばされ地面をゴロゴロ転がっていった。

　隻眼竜からは視認されてはいない。今がチャンスだ。

　気配遮断と隠密を使う。

「『電撃加速（ライトニング　アクセル）』。」

　その場から加速し一気に肉薄する。

「武御雷神（タケミカヅチ）。」

　限界まで雷を刀に纏わせ濃縮した一撃。

　瞬間的に纏わせる雷切とは違い、少し溜めの必要があるが、雷切の威力とは比べ物にならないほど威力が上昇する。

　現時点での最強の一撃だ。

(これならどうだ！)

　奇襲を仕掛けた俺だったが

「ほぉ。少しはやるようだな半端物。」

　あっさりと存在に気付かれた。

　そのままタケミカヅチを相手にくらわせる。

　隻眼竜は腕一本で刀を受け止め、刀と腕が衝突し均衡する。

(おいマジかよ。本気の一撃が腕一本で受け止められるだと？)

　更に魔力を上乗せし、威力を上昇させる。

(魔力が持っていかれる。もう三分の一しか残っていない。でも、ここで押し切る！)

　更に魔力を上乗せし、俺は隻眼竜の腕を斬ることに成功した。

　宙に舞う隻眼竜の右腕。

(よし通用した。)

　そう思って内心喜んでいたが、気付いた。

　スローモーションとなった世界で。

　もう既に相手の右腕が再生していることに。

(嘘だろ？もう再生したのかよ。)

　力で押し切ることに専念した俺は勢いが止まらなかった。

　それほどまでに鱗が頑丈だったのだ。

　隻眼竜はニヤリと笑ったかと思うと、腕に魔力を込め俺に殴りかかってきた。

　咄嗟に刀で防御するが刀を粉々に打ち砕かれてしまう。

(俺の武器が！)

　アッパーを腹に喰らい吐血する。

「かはっ。」

　空中でそのまま首を隻眼竜につかまれる。

「今のは面白かったぞ。半端物。」

　そうしてシンジは隻眼竜に上半身を貫かれるのだった。