31話 『擬態』レオン
その後も俺たちは攻撃を続けた。
片方を追い詰めると、必ず片方がフォローをしてくる。
擬態のレオンは身体能力が凄かった。対応は全て体術だったことから魔法が苦手なことは明白だ。
呪詛のカルマは、状況に合わせての魔法が凄かった。こちらがいくら攻撃しても全て魔法で防がれてしまった。接近戦闘はしてこない。苦手なのだろう。
2人はお互いが何をするのかを理解し合っているようで、絶妙なタイミングでフォローしあっていた。
正直やりにくい。
こうなったら2人をそれぞれ引き離すしかない。
そう決めた俺は3人に提案する。
「俺が骸骨を倒す。3人は透明を倒してくれ。」
「分かったわ。」
「了解。」
「うん。」
承諾してくれたようだ。俺は3人に擬態を任せた。
相手が幹部級であっても、なりかけが3人もいるんだ。どうにかなる。
俺は空中にいる骸骨目掛けて空を飛んだ。翼を羽ばたかせる。
刀に闇魔法を纏わせ技を放つ。
「
飛んでいく斬撃。4つのカラスが骸骨目掛けて衝突する。
闇の壁で防がれてしまった。
それでいい。一瞬だけ視界から俺をそらしてくれれば。
【隠密】と【気配遮断】の能力を使用する。
「む?どこじゃ。消えた?」
魔法がとけ、視界から俺が消えたことに驚く骸骨。
急いで発見しようと周りをキョロキョロと見渡す。
(凄いな。後ろにいるのに気付かないなんてな。)
バレていないうちに殺そうと思った俺は、刀に雷を纏わせ骸骨を斬りつけた。
「
後ろから骸骨を袈裟懸けに斬りつけた。
「ぐああああ。」
だが、硬い。一撃で殺すはずだったが背骨で刃が止まってしまった。
「そこじゃな。
骨に食い込み回収するのが一瞬遅れてしまった俺は、空間から突如現れた鎌に背中を思いっきり切り付けられてしまった。
「がはっ。」
吐血する。背中が思いっきり切り付けられた。致命傷だ。
急いで離脱し、背中を『超速再生・極』で再生させる。
あっという間に傷が癒えた。
だが、傷が癒えたのは俺だけではない。相手も、俺が傷を再生させている間に骨を治してしまった。
また、1からやり直しだ。
これ以上戦闘が長引けばこちらが不利だ。狂歌達が辛そうである。
なりかけと幹部級とでは魔力量が違うのだから。
(早く決着をつけないといけねぇ。これ以上は様子見をしている場合じゃない。)
そう思った俺は本気を出すことにした。
「
一瞬で骸骨の後ろに回り込む。
「ほぉ。まだ余力を残しておったとはのぉ。『
すぐに反応されてしまった。目の前に死神の鎌が出現する。
それで構わない。刀に炎を纏わせる。
「『
さっきの雷では骨を切り裂くことはできなかった。
ならば、炎で焼き溶かすのみだ。
「うおおおおおおお。」
「ぬおおおおおおお。」
死神の鎌と炎を纏った刃。互いに衝突する。互いにせめぎ合う。
(絶対に勝つ。【闘気】全力解放。)
奥の手を使うことにした。
力が湧いてくる。なんでも出来ると実感する。世界が遅く感じる。
闘気を纏ったことにより、今まで均衡を保っていた技が打ち砕かれる。
俺は死神の鎌に打ち勝ち、カルマの体を袈裟懸けに斬り捨てることが出来た。
骨が溶かされ、身体が真っ二つになるカルマ。
「ぬおおおお。ただでは死なぬお主も道連れじゃああ。」
斜めに切り落とされた半身と右腕が地面に落ちる。
しかし、カルマはまだ生きていた。残った上半身が宙に浮ている。
左手に禍々しいオーラを纏っていた。
(不味い。攻撃は避けきれない!骨ごと切ることに集中しすぎた。力を込めすぎて勢いが止まらない。)
カルマの硬すぎる骨を斬り捨てるために全ての力を刀に注いだ。
これで死ぬと思っていたからだ。でも、まだ生きていた。
前方に倒れるのは確実。勢いは止まらない。
「呪詛魔法『貫手』。」
カルマの貫手が迫ってくる。
(不味い不味い不味い。このままだと頭を貫かれる。何かないか。何か勢いを殺す能力は。『触手』じゃ間に合わない。体を作り変えてる暇はない。その前に貫かれる。)
頭で思考加速し、考える。
スローモーションとなった世界で無情にも魔の手は迫りつつある。
(何かないか。何か。)
もう駄目かと思われた矢先に思い出した。あの能力を。
迫りくる貫手は俺の頭部を貫くことは無く、指で左目を貫く程度で済み止まった。
左目が見えなくなり流血する。目から沢山の血が滴り落ちた。
「がああああああああああああああ。」
痛すぎて思わず叫んでしまった。
「な、なぜじゃ。奥の手が...」
途中で勢いが止まった理由が知りたいのだろう。種明かしをすることにした。
糸で今度は動けないようにカルマを拘束する。
答えは糸だ。俺の勢いとカルマの貫手の勢いを殺したのだ。
無からすぐに作り出せるのでギリギリ間に合ったのだ。
「そ、その糸はランチュラのじゃろ!なぜお主が持っておるのじゃ。」
それについては、答える義理は無い。
「じゃあな。糞野郎。」
俺はあまりの痛みに怒りを覚え、殺気を込めて刀でカルマの頭を真っ二つにした。
地上に落ちるカルマの頭。いや、正確には頭蓋骨か?
俺も地上に降りて加勢しようと思ったがどうやら必要なかったようだ。
擬態のレオンは四肢をもがれ地面に横たわっていた。槍で固定され動けなくされている。
レオンは目に涙を流していた。ギリギリ生かされているようだ。
狂歌は槍で体中を刺しまくり、美香は鉤爪で肉体を裂いていた。
サラは炎を纏った拳で延々と胴体を殴り続けてる。
今まで見えない敵から散々攻撃されイラついていたんだろうな。
全員ストレスを発散させるかのように、嗜虐的な顔をして笑っていた。
(あいつらは怒らせないように気をつけよ。)
俺は痛みに耐えながらも、左目を再生させようとして気が付いた。
治らない。
俺が再生しないことに戸惑っていると、カルマが話しかけてきた。
頭部が半分となってもまだ生きているようだ。
「かっかっかっか。治らんじゃろ?小僧。」
笑いながらこちらを見てくる骸骨。
「てめぇ。何をしやがった。」
「簡単じゃ【呪詛魔法】じゃよ。分かりやすく言うならば呪いじゃ呪い。わしの奥の手の1つじゃ。もうその傷は一生癒えん。左目使い物にならなくなったのぉ。かっかっかっかっか。」
こちらを煽ってくる。骸骨。
その言葉を最後にカルマは動かなくなった。
狂歌達は気が済むまでレオンを痛めつけてから殺した。
その顔はすっきりしたような清々しい表情だった。
こうして俺たちは四天王の2人を倒した。全員で捕食する。
膨大な力が流れ込んできた。
ランチュラ同様、記憶は一切流れてこない。何故だろうか。
「【擬態】を獲得しました。」
「【呪詛魔法】を獲得しました。」
呪詛魔法を覚え、早速解呪しようとしたができなかった。
どうやら本当に治らないようである。この日俺は左目を失ったのだった。
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