32話 左目
全員でカルマとレオンを捕食した。
【擬態】と【呪詛魔法】の能力を解析する。
【擬態】…全身に魔力の膜を纏うことで擬態をすることが出来る。
【呪詛魔法】…莫大な魔力を消費するが、相手に癒えない傷を与えることが出来る。与えられた呪いを解呪するには膨大な時間と熟練度が必要。
ようやらレオンは、空間に擬態したことによって透明化していたようだ。
全員捕食すると3人が幹部級に進化した。見た目は変わってはいない。
(どうやら力だけが増したようだな。見た目変わってないし。)
そう思っていると。
「あー。すっきりしたわ。」
「うちもだよ。」
「私もです。」
全員がスッキリしたような顔でこちらを向いてきた。
「あなた?何故目再生させないのかしら。」
さっきから気になっていたのだろう。3人がチラチラと俺の左目を見てくる。
なぜ再生させないのかと代表して狂歌が質問してきた。
「治らねぇんだ。骸骨に呪いかけられた。再生させようにも呪いが邪魔をしてくる。」
片目を閉じたままそう答えた。さっきから血が止まらない。痛みがさっきからひかない。
「そ、そんな。目が見えなくなるなんて。」
「シンジ君....」
「に、兄さん。」
3人はショックを受けていた。
再生させれば傷が治ると思っていたのだろう。驚愕した様子でこちらを見てくる。
傷が治らないので左目を抉ることにした。どうせ使い物にならないのだ。もう、必要ない。
それに1から再生させたら、もしかしたら治るかもしれないと期待をしたのだ。
【超速再生・極】を使うが何も変化が起きない。
血が止まっただけだ。
左目だけ生えてこない。やはりもう癒えないようだ。
さっきから【呪詛魔法】で解呪しようとするができない。
(やはりダメか。)
抉った目は炎魔法で焼き溶かした。三人は痛ましそうにこちらをみてた。それ以上は何も言わなかった。
(まじか。片目だと見えずらいな。)
俺は左目を諦めて日本に帰ることにしたのだった。
★☆★☆
転送装置で日本に転送されると神崎兄妹がいた。左目を見てくる。痛ましそうな顔で2人はこちらを見てきた。
俺は気にするなとだけ告げてヒーロー協会をあとにした。
家に帰り鏡で確認する。どうやら目以外は大丈夫だったようだ。
(あぶねー。良かった。)
もし、呪いが顔にもかけられていたら焼いて止血するところだったのだ。鏡の前で安堵した。誰だって顔に傷がつくのは嫌である。
その後、俺は美香に声をかけ2人で道場に向かった。片目での戦闘訓練をするためだ。
純粋な身体能力なら美香とサラが一番強い。獣の怪人は身体能力が凄いのだ。
サラだと手を抜きそうだから美香を選んだ。美香に訓練をしてもらう。
狂歌とサラは魔物討伐をしてくるとだけ伝えて出て言ってしまった。
現在変身した美香と対峙をしている。
「行くよ。シンジ君。」
「手加減はいらない。遠慮なく来い。」
そうして美香は目にも止まらぬスピードで俺の周りを縦横無尽に駆け巡る。
(くそ。やっぱり片目だと見えずらい。)
あっという間に見失った。
周りには美香の残像があるだけだ。
(くそ。どこにいる。)
右目で見渡す。見つからない。
後ろから衝撃を受けた。
どうやら攻撃されたみたいだ。
「ぐはっ。」
「まだやる?」
周りから聞こえる美香の声。
「まだだ。遠慮なく来てくれ。時間ならいっぱいある!俺が納得するまで続けてくれ。」
そうして俺はその日コツをつかむことが出来なかった。
美香にボロボロにされた。心をな。
★☆★☆
「今日こそはコツをつかむ。来てくれ。」
今日も美香と特訓をする。
このままだと俺は戦力外になってしまう。それだけはどうしても避けたい。
それに『操糸』ランチュラは言っていた。
四天王のリーダーと魔王は【闘気】を使うことが出来ると。
闘気を使える相手に今のままでは非常に不味いのだ。
(早くコツをつかまないと。)
俺は集中し美香と対峙する。
「行くよ。」とだけ美香は告げると一瞬でその場から消えた。
すぐに見失った。
(集中しろ集中。大丈夫だ俺ならいける。)
そう言い心を奮い立たせる。
昨日寝るときにずっと考えていた。目を補うものはあるかと。
一通り自分の持ってる能力で試してみたが、どれもしっくりこなかった。
そこで思いついた。魔力ならどうかと。右目に魔力を集中させる。
(くそ。調整が難しい。一ミリでも僅かに込める魔力がズレると失敗する。)
右頬に衝撃を受けた。殴られたようだ。頭が揺れ、脳震盪で魔力操作に失敗する。
(くそ。失敗した。)
「もう一度だ。頼む。」
美香はそれでも嫌な顔をせずに付き合ってくれた。
それから3時間やっていると初めてコツをつかむことが出来た。
目に流す魔力量を狂わせることなく、流し続けると一瞬だけ視界が変わった。
視覚が限られていたが、なぜか部屋全体を見渡すことが出来た。自分の後ろの景色もだ。
驚き硬直していると、お腹から衝撃を受けた。
「集中だよ集中。」
美香に注意された。
(わざわざ美香が付き合ってくれてんだ。集中しろ俺。)
もう1度、目に魔力を流し込む。
美香が消える。部屋で縦横無尽に駆け寄る。
(さっきは出来たんだ。もういけるはずだ。)
目に魔力を流し込み。寸分狂わせず調整する。
視界が一気に晴れた。部屋全体を見渡すことが出来る。
美香を捉えることが出来た。どうやら後ろから攻撃しようとしているみたいだ。
殴りかかってきた美香の手を受け止める。
「え...」
まさか止められるとは思わなかったのだろう。
驚いた顔をした美香がいた。
「【魔眼】を獲得しました。」
どうやら成功したようだ。
「やっとだ。」
俺は新たな武器を手に入れられた喜びで、つい美香を抱きしめてしまった。
「ふぇ?シ、シンジ君?」
赤面しこちらを上目使いで見てくる美香に、思わずかわいいと思ってしまう。
手をとっさに離そうかと思ったが、美香も抱きしめ返してくれた。後ろの2本の尻尾が揺れている。
(触っても怒らないよな?一回も触った事無いし。いいよな?)
目の前にある美香の尻尾を無性に触ってみたくなり、両手で2本それぞれ握ってみた。
柔らかい。いい手触りだ。ずっと触っていたいくらいだ。そう思っていると。
「ああん///し...しんじくん///そこは...だ...だめ...」
艶やかな声を発する美香。
(ちょっと待て。なんで急に喘いだ。もしかしてサラと一緒なのか?発情するタイプなのか!?)
そう思い美香の顔を見上げれば、案の定目がトロンとしていた。
(ま、不味い。早く逃げなければ。)
そう思ったが美香に押し倒され、両腕を床に組み伏せられてしまう。
徐々に顔を近づけられ、思わずキスをされそうになった。
俺がなけなしの理性で抵抗すると、美香は泣きそうな目でこちらを見てくる。
「やっぱり。うちじゃ駄目?魅力ないよね。ごめんね。」
そういって目に涙を浮かばせてきた。
(不味い。今度は勝手に発情させ、今度は勝手に泣かせることになるとは。)
突然の美香の涙で焦った俺は美香を褒めちぎることにした。
「そんなことは無い。自信をもて!美香お前は綺麗だ!」
そう言うと、美香は顔をカアァと赤く染めた。
「本当?」
「ああ。本当だ。」
確かめてくる美香にもう一度答える。
「じゃあ。キスできる?」
「おい、それは...」
「やっぱり嘘なの?」
再び泣きそうな顔になった美香。
「い、1回だけだぞ。」
そうして俺たちは初めてキスをしたのだった。
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