30話 『呪詛』カルマ

 本部の人に軽く研究所を案内されたあと地上に出た。


「では、頼んだよ。黒騎士殿。」


 そう言って俺たちは見送られた。魔力で加速してすぐに現場につく。


 目の前には骸骨が1人だけが立っている。その周りにはヒーロー達の死体であふれていた。


 どうやらミッドタウンから近い場所にヒーロー協会があったようだ。


(まぁ当たり前か。じゃないと50人もヒーローは現れないか。)


 協会を守る意味でも50人を投下したと考えれば辻褄が合う。


(まぁ全員やられてしまったがな。)


 俺は1人で納得していると目の前のローブを纏った骸骨が話しかけてきた。


「お主たちが最強の戦士かの?かっかっかっか。」


 目の前の骸骨は嬉しそうに下顎をカクカクさせている。


「わしは四天王の1人『呪詛のカルマ』じゃ。よろしくのぉ。」


「ああ。そうかい。俺は『人間界代表のシンジ』だ。よろしくな。四天王さんよ。」


 相手が自己紹介をしてきたので、こちらもすることにした。


「お主らは一体何者なんじゃ?人間みたいじゃが違うじゃろ。我らと同じ雰囲気を感じる。つまり魔物じゃ。それにお主は幹部級じゃろ?後ろの女共は『なりかけ』じゃな?面白いのぉ。かっかっかっか。」


 珍しい物を見たかのように見つめてくる骸骨。まぁ目ないけどね。


「で?『擬態のレオン』はどこにいるんだ?まさかそこでくたばってる奴らに、やられたわけじゃねーだろ。」


 屍と化したヒーロー達を指さして言った。周りを見渡すがどこにも見当たらない。


「さぁな。どこにおるんじゃろうな?」


 はぐらかす骸骨。


「まぁいい。」


 いないのなら1対4でタコ殴りにしてやる。答える気がないようなので早速全員で変身をした。


 全身鎧で翼の生えたシンジ。血液魔法で全身鎧と槍を作り出す狂歌。猫又と狐に変身する美香とサラ。


「さぁて。始めるとするかのぉ。」


 そう言って杖を何もないところから取り出す骸骨。


 早速戦闘が始まった。


「まずは小手調べじゃ。『闇槍ダークランス』。」


 骸骨は杖を振りかざすと黒い槍が4本飛び出してきた。


 全員はそれぞれ散って、闇の槍を避ける。


 魔法が地面に当たり爆発した。コンクリートの破片が周りに飛び散る。


 一番近くにいたサラが骸骨に接近し、攻撃をしようとしたところで


「くはっ。」


 ビルに衝突し、衝撃を受けるサラ。


(今何が起きた?骸骨は一切攻撃してきた様子はないぞ。)


 骸骨は空中に浮き、こちらを見下ろしている。


「次はこれじゃ。『闇竜巻ダークトルネード』。」


 杖を振りかざすと、今度は黒い竜巻がこちらに飛んできた。


 サラすぐに起き上がりビルから離脱した。


 黒い竜巻がビルと衝突し、崩壊する。


 その間に狂歌と美香が骸骨の後ろに回り込み、攻撃をしようとした所で急に衝撃を受けた。それぞれ、別々に吹っ飛ぶ。


(おい。どうなっていやがる。攻撃を反射させる魔法でもあんのか?)


 攻撃をしようとすると、なぜか衝撃を受けたかのように吹っ飛ぶ。原理が分からない。


(とりあえず体験してみるか。)


 俺は翼を広げ、空中にいる骸骨目掛けて飛んだ。


 骸骨の懐に回り込み攻撃をしようとしたところで、衝撃を受けた。吹っ飛ぶ。


「かっかっかっかっか。」


 こちらを嘲笑う骸骨。ちょっとむかつくな。


 だが、体験して分かった。誰かに殴られた。


 ニュースではこいつの他にもう一人魔物がいた。


 カメレオンだ。


 ランチュラの時は蜘蛛みたいで、実際に糸を操っていた。


 カメレオンと同じ特徴を持っているのならば、『擬態』つまり空間に擬態して透明化しているに違いない。


「おい。全員気をつけろ。もう一人敵がいるぞ。」


「分かってるわよ。」


「やっぱりね。うちも思ってたよ。」


「兄さん。やはりそうでしたか。」


 それぞれ返事をする。


 いると思っていても、見えない敵をどうしたらいいんだ。


 考える時間を与えないとばかりに攻めてくる骸骨。


「今度はこれじゃ。『闇雨ダークレイン』。」


 杖を振りかざし、上空から黒い矢を降らせてくる。


 刀で襲ってくる弓を全て斬り捨てる。


 狂歌は血の盾を作ってガードしていた。


 美香は鉤爪で、サラは炎魔法で焼き尽くしていた。


 すると今度は美香が吹っ飛んだ。


「かはっ。」


 急な攻撃に驚きと痛みを味わう美香。


 お腹を思いっきり殴られたようだ。


 カメレオン野郎鬱陶しいな。


 そう思ったが-


 狂歌の血液魔法を見て思い出した。これならいける!


「おい狂歌。ここの周り全体に血の煙を作ってくれ!」


 一瞬怪訝そうな顔をしたがすぐに俺の意図を察したのだろう。


血霧ブラッディミスト。」


 周りに血の霧が発生する。


 少し見ずらいが、ある空間だけ透明化している部分があった。


 人影が動いている。


(そこか。見つけた。)


 全員で一斉に攻撃を仕掛けたが、骸骨に邪魔された。


「そうはさせん。『闇壁ダークウォール』。」


 俺の刀が、狂歌の槍が、美香の鉤爪が、サラの拳に纏ったの炎が全て闇の壁に阻まれた。


「へへ。助かったぜじいさん。」


「かっかっかっか。次は守れんぞ。ちゃんと警戒するんじゃな。」


 攻撃を邪魔された俺たち。


「鬱陶しい野郎だな。」


 骸骨が邪魔してくるから、思わず言ってしまうのだった。

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