14話 まじか

 狂歌の帰りを待っているとインターホンが鳴った。


 ドアを開けると狂歌が手荷物と一緒に美香を連れてきた。


「どういうことだ?」


「中で話しましょうか。」


 狂歌に促されとりあえず美香も家の中に入った。


「お...お邪魔します。」


 気まずそうに入ってくる美香。


 リビングに移動しお茶を3人分出す。


「で、どういうことなんだ?」


 そういうと狂歌は簡単に説明し始めた。


 家に帰った後、荷物をまとめていた狂歌。


 家を出ようとした時に、家のインターホンが鳴った。


 ドアを開けるとそこには冬柴美香がいたのだ。


 美香は狂歌にシンジが黒騎士かも知れないと相談してきた。


 根拠はあるのかと狂歌が尋ねると、黒騎士の使っている刀がシンジのだという美香。


 彼を止める方法は無いのかと相談してきたようだ。


『誰かほかの人に相談したの?』と、尋ねると『してない』と返事をした美香に、狂歌は丁度いいと考え、仲間にしようと決めたわけだ。


「いや、何でそうなる?」


「だって。美香にバレたんだもの。仲間にして秘密を共有した方が得策じゃないかしら?」


「誤魔化せばよかっただろ?」


 もうこの会話で、俺が認めてると言っているようなもんなのだが。


「じゃあほかの人に相談されても良かったのね?あ、もしかして私にこう言ってる訳?なんで殺しておかなかったんだ?って。それなら謝るわ。気が利かなくてごめんなさい。」


「ひっ」


(おいおい。美香がこのままだとうち消されるって顔してるぞ。)


「そうは言ってないだろ。はぁ...」


 美香が泣きそうな顔でこちらを見つめてくる。そんなことしないよね?と。


 もう、バレてるんだ仕方がない。やりたくはないが


「美香。俺はお前に秘密を知られた。だから選べ。俺の仲間になって秘密を共有するか、痛みを味わわずに死ぬかのどっちかだ。幼馴染だからといって容赦する気はない。」


 俺が新種族である魔人であると知られるとヒーローどもに消される。最悪、解剖されながら地獄を味わうことになるかも知れない。秘密を知ったのが幼馴染だったからといって容赦する気は全くない。そのせいで人生が壊れるかもしれないのだ。不安分子は早めに消しておくに限る。


 俺が殺気を込めためで見つめると


「な...仲間になります。な...ならせてください。」


 涙目でそう答えるのだった。




 ★☆★☆


 美香の家に行き、予備の服を持ったあと山に向かった。


「美香これを飲め。」


 俺は闇魔法で異空間から魔物薬を取り出し、美香に手渡した。


「超能力...やっぱりシンジ君は...」


 そう言いながら薬を見つめる美香。


「これを飲めば魔物になれる。そうすれば家族の仇が取れるぞ。」


(最悪死ぬことは言わないでおこう。これで死んだら不安分子は消えるだけだ。俺が殺したわけではない。)


 俺がそう言うと美香は、はっと気が付いたようにこちらを見つめてきた。


「そっか...だから...シンジ君は...」


 そういうと覚悟を決めて、一気に薬をのみ込んだ。


「あ...熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い」


 狂ったようにその場で連呼する美香。


「耐えろ。力が手に入るんだぞ。お前の家族を殺した奴に復讐できるだけの力が手に入るんだぞ?その程度の痛み安いものだろ。」


「ハァハァ...ハァハァ...た、えれば、ちからが、てに」


「途中で吐血して気絶するが絶対に起きろよ。じゃないと力が手に入らないぞ?」


 間違ったことは言ってない。死ねば力は手に入らないのだから。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」


 狂ったようにその場で痛いと連呼する。


 どこも変化はしていない。


(やっぱこれが普通の反応だよな?よく声を出さずに堪えることができたな狂歌。)


 そのまま変化することは無く


 美香は全身から血を噴出し、吐血したあと意識を手放した。


「変化起きねーな。死んでるのか、それとも狂歌と同じパターンなのか。どっちなんだ?」


 しばらく観察してると美香の頭から猫耳が生えてきた。


「お。成功か。やっぱ女性は痛みに強いのかね?」


「やはりね。私の勘はどうやら当たっていたようね。」


 今まで静かにしてた狂歌が喋った。


「なんとなくだけど美香なら耐えられると思ってたのよ。」


 女性の勘おそるべし。


「今後仲間を作っていくなら美香は適任だと思わない?絶対に裏切らないわよ?彼女。それに、薬はあと2つあるんだから仮に失敗しても平気よ。」


(本当は自分で幼馴染を殺すのが嫌だったから、俺にやらせようとしたんじゃないのか?)


 そう思ってしまう自分がいた。まぁ多分ないのだろうけども。


 確かに仲間にするなら裏切らない奴がいい。


 狂歌と話していると美香が起きた。


「うち、生きてるの?」


 猫耳と尻尾2本をはやして目が赤くなった美香がそこにはいた。


「ゲームとかで良く見る、獣人みたいな姿だな。」


 思わずそうつぶやく。それ以外は人間の見た目をしていたからだ。


 気のせいだろうか。胸が狂歌と同じくらい大きくなっているのは。


 ショートヘアだった美香の髪が肩あたりまで伸びている。


 気になったので、とりあえず解析をする。



「名前」冬柴美香

「 L V 」 1

「階級」上級

「種族」猫又魔人(突然変異種)

「体力」2000/2000

「魔力」2000/2000

「筋力」2000

「耐久」2000

「俊敏」2000

「能力」【猫又】【鉤爪】【身体能力・超】【超速再生】

「称号」<元人間><適合者><魔人><突然変異種>



 アルフォースの薬に完璧に適合出来た人間。

 新種族魔人に進化した。

 上手く適合し上級となった。



 【猫又】…指定した相手の能力を真似することができる。



(えーまじか。また上級かよ。俺より上の階級かよ。)


「せ...成功しました。シンジ君。」


 そう言って抱き着いてくる美香。


(あんなに痛かっただろうに。よく耐えられたな。ぶっちゃけ美香は死ぬと思っていた。頑張ったんだほめてやろう。)


「よく頑張ったな。それと脅して悪かった。」


 美香の頭をなでながらそう言うと


「あ...ありがとう....」


 照れながら2本の尻尾をくねらせる美香であった。




 ★☆★☆


 山から家に戻った後美香は俺の家でシャワーを浴びた。


 痛みで耐えている時に沢山汗をかいたからだ。


 今日はもう遅いので泊ってもらうことにした。


 俺は寝ようとした時、部屋の前で二人が言い争った。


「あなたは別の部屋で寝てくれないかしら?美香」


「だ...駄目...シンジ君と一緒に寝るなんてずるい。」


 言い争う二人。


「あら?私はシンジと将来結婚する仲だもの。一緒に寝るくらい、いいわよね?シンジ?」


 有無を言わさぬ目でこちらを見つめてくる狂歌。


「あ、あぁ。まぁな。」


「そんな...」


 シュンとする美香。


 勝ち誇った顔で見下ろす狂歌。


「だ...だったらうちは遊びでかまいません!」


「おい。何言ってやがる。美香もっと自分を大切にしろ。ていうか2人とも下らないことばっか言ってないでさっさと寝ろ。」


 俺はそういった後部屋の鍵を閉めて寝たのだった。




 ★☆★☆


 目覚めると一糸纏わぬ姿の美香が俺の隣にいてー


「あ・な・た(怒)」


 こちらを笑顔で見つめてくる狂歌が俺の前に立っていた。


 まじか。

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