13話 朝チュン

 5月19日 日曜日 


 窓から覗き込む日差しが俺の顔に当たり目を覚ました。


 起きようと思ったが腕に重みを感じた。


 見るとそこには一糸纏わぬ姿の狂歌がいた。


 俺の腕を抱き枕のようにしている。狂歌の胸が当たっている。柔らかい。


 動けそうにないので、狂歌の頬っぺたをムニムニしながら起こす。


狂歌きょうか。おーい狂歌。起きろ。」


 狂歌は俺が起こすと目が覚めた。


「おはよう。昨日の夜は凄かったわね。あなた♡」


 昨日のことを思い出し、顔を赤くするシンジ。


 2人はそのあと着替えた。


 朝ごはんは狂歌が作ってくれた。


「やっぱ、狂歌のつくるご飯はうまいな。」


 そういうと狂歌は照れながらも


「そう?お口に合って何よりだわ。ところで今日は何をするのかしら?」


 照れを誤魔化した。可愛いと思ったのは内緒だ。


「魔力操作と適正魔法の訓練と情報の共有だな。それができれば魔物相手に大抵は何とかなる。」


 ご飯を食べた後、片付けて道場に向かった。


 狂歌が腕に抱き着いたままだが。


「まずは魔力操作だな。体に宿る魔力を意識してみろ。感じられるはずだ。」


 俺は狂歌にそう言った


「んんんん。これが魔力?」


「今度は意図的に流せるように意識してみろ。」


「で、できたわ。脳裏に【魔力操作Lv1】と出たのだけれど。」


「成功だな。とりあえず、指に魔力を集めてみろ。」


「む、難しいわね。」


 指先に魔力を集めることに苦労しているのだろう。


 しばらくすると、狂歌の指先から血液が出てきた。


「おい。大丈夫か?血が出てるぞ。」


「へ、平気よ?今【血液魔法】って出たのだけれど?」


 解析して確認する。


 【血液魔法】…固有魔法であり、使い手はあまり存在しない。魔力で血液を生み出し、自由自在に操ることができる。


 解析結果を狂歌に伝える。


「へー。そういう力だったのね?なんで知っているのかしら?」


「ああ。それはだなー。かくかくしかじか。」


 今までのことと俺の知っている情報を全て教えた。


「大変だったわね。」


「まぁな。だけど俺はこの力で触手野郎を殺すって決めたんだ。あいつだけは絶対に殺す。」


 殺意のこもった目でシンジはそう言うと狂歌は赤面した。


(赤面する要素今あったか?まぁ狂歌はちょっと狂ってるところあるからな。)


「今何か失礼なことを考えてなかったかしら?あなた」


 俺は内心を見透かされたこと驚き、話を違う方面に持っていく。


「ところで、なんであなた呼ばわりなんだ?狂歌」


「あらー?昨日私に手を出したのは誰かしら?責任を取ってくれないとだめじゃない。私初めてだったのよ?傷物にしたのよ?分かってる?」


 こちらの反応を楽しむかのようにニヤニヤしながら言ってくる狂歌。


「いや、あれはお前から襲ってきただろうが。だけど。まぁ。手は出しちまったからな。責任はとるよ。」


 シンジは素直に責任を取ると宣言すると


「じゃあ。私をお嫁さんにすることを前提に付き合ってね。」


「分かった。」


 そういうと狂歌は今までで見たこともないくらい幸せな表情でほほ笑むのだった。




 ★☆★☆


 ヒーロー協会 日本 東京支部


 仕事の書類とにらめっこをしている筋肉質な人物がいた。


「だあああ。めんどくせええ。なんで俺がこんなことをしないといけないんだよおおお。」


 男性は書類の山をみて嘆いていた。


 彼の名は神崎大和かんざき やまと日本で最強のS級ヒーローであり、東京支部を任されている人物だ。


「しょうがないでしょー。最近魔物が頻繁に出現してるんだから。こんなの異常よ異常。ていうかさっさと終わらせなさいよ。うるさいのよあんた。」


 ソファーでゲームしながら文句をいう女性。


「いや。そう思うなら少しは手伝ってくれよおおお。しずかーーー」


 男性が話しかけてる女性の名は神崎静香かんざき しずか彼の妹である。


「それはあんたの仕事でしょ?し・ご・と。今まで現実逃避して筋トレしてたのはどこの誰ですか?」


 正論をいう静香


「だってよおお。おかしいだろこの書類の山。戦闘しかできない俺がこんなの無理にきまってるだろおおお。手伝ってくれええ。お願いだああ。」


「ゲームしてるから無理。」


 兄の助けを無情にも断る妹。


「そういえば。共食いしてる魔物いたわよね。黒騎士だっけ?緊急指名手配しなくてもいいの?」


 思い出したかのように話しかける静香。


「いや。上にも報告した。だけど、あの魔物を討伐する余裕は今うちにはない。ただでさえ魔物の出現率が多くてどこも大変だって時に、緊急指名手配してみろ。。人員割いたら確実に魔物の討伐漏れが起きる。今は猫の手をも借りたい状況なんだ。魔物同士殺しあってくれて助かってるくらいだ。」


「そういえば一体目って誰だっけ?」


「おいおい。忘れるなよ。だよ。」


 大和はやれやれとでも言いたげな顔で静香に言ったのだった。




 ★☆★☆


「じゃあ私は帰るわね。」


 帰りたくなさそうな目でこちらを見てくる狂歌。


 今日は訓練後に一目につかぬ所で狂歌と狩りをした。


 狂歌の場合は吸血すれば捕食せずとも相手の力を奪うことができるようだ。


 魔力操作のレベルも4にした。


 狂歌の場合変身してもあまり変わらなかった。鋭い歯が生えてくるだけで実際には生身とそうそう変わらなかった。


 それでは狩りが堂々とできない。そこで血液魔法が出た。


 俺のように全身に血液を纏い鎧にすることができた。


 赤い全身鎧で武器は細長い血の槍だった。


 リーチが長い分戦いなれてない狂歌にはピッタリだった。


「気をつけろよ。っていうか荷物を取りに帰るだけだろうが。」


 荷物取りに帰るだけでそんな反応をされても困る。


 狂歌とは一緒に暮らすことにした。お互い1人暮らしで寂しかったのもあるが、一番の理由は俺が家事ができないからだ。


「だって少しの間、あなたと離れることになるじゃない。寂しいわよ。あなたがいないと生きていけない体になっちゃったわ。」


 くねくねしながらそんなことを言う狂歌


「はいはい。待ってるから。急いで戻って来いよ。ていうか俺が一緒に行けばいいだけだろ?何で駄目なんだよ?」


「だって。恥ずかしいじゃない?」


(なんで疑問形なんだよ。)


「じゃあ俺は待ってるからな。」


「行ってくるわね。あなた♡」


 そうして30分後に荷物の入ったキャリーバッグを持って狂歌は戻ってきた。


 を連れてだが。


(なんでこうなった?)

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