15話 修羅場?

 5月20日 月曜日


 朝起きると一糸纏わぬ姿のがいた。


(そんな馬鹿な。ていうか美香ってこんなにスタイル良かったか?)


 服を着ていたから気が付かなかった。


 薬の影響で、胸部に実った大きな実が2つ。程よく引き締まった体。くびれのある腰。すらりとのびる手足。そして伸びた髪。肩あたりまで伸びて非常に似合っている。変身していない為、猫耳と尻尾は生えてなかった。


 狂歌と引けを取らないくらい美香は綺麗になってたのだ。


 しばらく美香に見惚れてると


「あ・な・た(怒)」


 笑顔でこちらを見つめてくる狂歌がいた。顔は全然笑ってないが。


「ちょ、ちょっと待て。これは何かの間違いだ。」


 焦った俺はすぐに否定する。裸の美香が隣で寝てる時点で説得力はないが。


「あら言い訳ですか?素直に認めたらどうなの?浮気をしたことを。美香に手を出したことを。」


「手を出した覚えはない!起きたら隣にいたんだ。信じてくれ。」


 狂歌は小さな声で

『仲間にするべきではなかったわ。』

『こうなることなら、あの時消しておけばよかったわ。』

『裏で事故に見せかけて殺すのはどうかしら』

『なんなら魔物に殺させれば証拠はないはず』

 と小さな声でブツブツと言う。


(嫉妬だけで幼馴染を殺すつもりだこいつ。)


 少し女に恐怖を覚えるシンジ。


 俺たちのやり取りで目が覚めたのだろう。美香が起きた。


 目は普通の黒い目に戻っていた。変身すると赤い目に変化するみたいだ。


「おはよう。シンジ君ごめんね。うち1人で寝るの寂しくて。勝手に入っちゃった。」


 何時もは自身無さそうに話していた美香であったが、ちゃんと喋れるようになっている。


 布団で自分の裸体を隠しながら話す美香。


(適合して自信がついたのか?まぁいいか。)


 俯いて自信なさそうに喋るよりはいいだろうと思うことにした。


 美香がどうやら勝手に入ってきただけである。


「俺カギ閉めて寝たよな?どうやって開けたんだ?」


 シンジは説明を求めると


『こうだよ』と美香は手の爪を鉤爪に変化させた。爪の部分だけを部分変化させたようだ。


 ドアを見ると無事だった。どうやら爪でカギをこじ開けたようだ。


「まじか。ていうか。部分変化ってできるのか。」


 俺が納得していると


「あなた。疑ってごめんなさい。」


 狂歌が申し訳なさそうに謝ってきた。


「それと、少しの間私と美香を二人っきりにしてもらえないかしら?」


 こちらに有無を言わさぬ目で見つめてくる。


「あ...あぁ分かった。」


 俺はリビングに行き1人で待っていた。



 ★☆★☆


 20分後


「私が正妻よ?そこは譲れないわ。」


 そういう狂歌。


「うちは側室で全然いいよ。たとえシンジ君に愛されなくても、子供ができればうちはいいから。」


 そう答える美香。


「決まりね。」


「うん。」


 現在日本は少子高齢化社会であるため一夫多妻制を導入しているのだ。


 


 そこは男性の技量が試される。実際に一夫多妻で結婚する人は少ないのだ。


 お互いにどこか納得した様子で手を握り合う二人がそこにはいたのだった。



 ★☆★☆


 今日も学校だが、全員行かないと決めている。いつかヒーローに正体がバレるのだ。今のうちに力をつけておくに限る。


 2人が納得したように一階に降りた後、道場で訓練をすることにした。


 美香には【魔力操作Lv1】習得したあと適正魔法を習得した。


 習得したのは【闇魔法】だ。


 狂歌と同様に変身しても顔を隠す部分がない。


 そこで闇魔法を全身に纏えば姿が隠せることが分かった。


 魔人化した美香は赤い目に、頭からは猫耳、腰辺りからは2本の尻尾が生えていた。


 その姿を闇魔法で全身をコーティングしていく。


 闇色のシルエットと化し、赤い縦長の目がのぞく姿となった。


 これならバレる心配はない。それに強化状態でもある。簡単には負けないだろう。


 狂歌と美香を連れて人気のない場所で狩りをすることにしたのだった。



 ★☆★☆


 5月21日 火曜日


 美香の【猫又】の能力が分かった。


 美香が能力を使うと、真似出来るようだ。血を吸われる心配はない。まぁ当たり前か。


 しばらくは【捕食】だけで二人に我慢してもらおう。


 2人に【吸血】と【猫又】で【強欲】を真似されると思ったができないようだ。


 やはり幹部級の持っていた能力は特別であるみたいだ。その後も狩りを沢山した。


 2人とも俺がいなくとも大丈夫なくらい強くなった。2人とも【魔力操作・極】に成長した。


 美香の捕食は俺のとは違った。鉤爪で殺した相手の魂を食べていたのだ。


 死体となった魔物の心臓部に手を突っ込んだかと思うと、青い玉のようなものがあった。それを美香は喰らうと力が手に入ったのだ。


 殺した相手によって魂のような物の色は違った。赤であったり黄色であったり様々だ。


 それからは3人別々で狩りを行うことにした。


 俺も沢山狩った。本能で分かる。もうすぐと。


 余談だが美香も俺の家に住むことになった。




 ★☆★☆


 5月22日 水曜日


 今日はアメリカからじいさんが日本にくる。ウイリアム・フィードだ。


 フィード家は多額の資産を持っており、資産家として世界的に有名な一家だ。


 だからだろうか。中学あたりから女子達が言いよって来たのは。高校でも同じだ。女子達が言いよって来た。俺のことをすぐに『カッコイイ』だの『付き合って』だの言ってくる。そのため、あまり男友達がいない。女子にチヤホヤされてる俺があまり気に食わないのだろう。


 唯一心の許せる友達と言ったら幼馴染である狂歌だけだった。だからだろうか。好きになったのは。


「今日は俺空港でじいさん迎えに行くから、狩りは二人で頼むぜ。」


「分かったわ。」


「うち待ってるよ。」


 シンジはそう言うとタクシーに乗って空港まで行くのだった。




 ★☆★☆


 空港に到着し、室内を歩いていると目線を感じる。なぜだろうか。特に女性たちが顔を赤く染め、近くの人と囁き合っている。


「ね、ねぇあの人カッコ良くない?」


「芸能人なのかな?」


「あの目カラコンかしら。」


「私タイプだわ。」


「筋肉素敵。」


「色男発見。」


「話しかけたら連絡先交換してくれないかな?」


 女性がこちらを向きながらひそひそと囁き合っているが気にしない。


 居心地が悪いが、気にせずその場で待っていると、じいさんがボディーガードを連れて、出口から出てきた。


『よぉ。じいさん。久しぶりだな。』


 俺はじいさんに英語で話しかけた。


「え、英語も話せるの?」


「てことはハーフ?」


 ひそひそと周りの女性声のが聞こえる。


『おぉ。久しぶりだなシンジ。大きくなったな。2年ぶりかの?それに凄い筋肉だな。』


 じいさんは俺の二の腕を指さしてくる。


『まぁ鍛えたんだよ。それでもう行くか?』


 俺がそう言った時だった。


 知らない金髪の女性が突如抱き着いてきた。


『シンジ。会いたかったよ。』


『ん?誰だあんた?俺の知り合いに、あんたみたいな美人いないぞ?』


 そういうと女性は怒った顔をしたが、すぐに照れた。


『私だよ。わたし。』


 金髪で知り合いなんてー


『おい。まさかお前サラか?』


『そうだよ。義兄さん《にいさん》。』


 俺は2年ぶりにサラと再会したのだった。

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