12話 適合失敗?

 白河狂歌しらかわ きょうか視点


 平日になってもシンジは学校に来なかった。美香は頑張って学校に来てたのにだ。


 5日も休むなんて珍しい。きっと彼は落ち込んでいるに違いない。


 だから今日会いに行ったのだ。彼が心配だったから。


 彼に会うと一目で異変に気付いた。普通の人であれば気付かないだろう。だが私は気付いた。誰よりも彼を一番よく見ているから。


 彼の瞳の奥に宿る微かな狂気を。生き物を殺しても何とも思わないと。力を手に入れるためなら何でもすると。そう思わせるような目だった。


 そして雰囲気だ。彼の雰囲気が黒騎士のように感じた。


 一度だけ黒騎士と魔物が戦っている現場を見たことがある。電気を纏う針鼠と戦っていたのだ。学校の帰り道で人だかりができていたので、気になってみると戦っていたのだ。


 黒騎士の使っている刀あれは秋山家の家宝に似ていた。刀の太刀筋もどことなくシンジに似ていた。


 そして、平日の間学校に来なかったシンジ。彼がその間、怪人狩りをしていたならば辻褄は合う。


 彼を見て確信した。シンジは何かしらの方法で力を手に入れて魔物になったんだと。


 だから脅迫した。シンジと同じになる為に。きっと今の彼には仲間が必要だ。彼は1人ぼっちだ。私が彼の助けとならなくては。


 口調の悪くなった彼は素敵だった。殺気の籠った目で見つめてきた時はゾクゾクした。


 人間を辞めてもいい。だってシンジと一緒になれる方が重要だから。


 彼の近くにいれば私を意識してくれるだろう。そうなれば時間の問題だ。堕ちるまで攻めてあげればいいのだから。


 私は準備を終えて二人で山に向かうことにしたのだった。




 ★☆★☆


 狂歌を連れて山に向かった。ここならいくら叫んでも誰にも聞かれないからだ。


 痛みで確実に発狂する。俺の家でそんなことをすれば近所に確実に怪しまれる。通報をされる。だから山に向かったのだ。


「よし。この辺でいいか」


 俺は突如出現した闇の穴に手を突っ込み試験管を1本取り出した。


 闇魔法を使って空間をこじ開け中に収納していたものを取り出したのだ。


 この魔物薬は貴重な物だからな。大事に扱わなくてはいけない。


「凄いわね。異能を使えるなんて。」


「まぁな。これが無かったら魔人になってねーよ。」


「魔人?自分で認めるのね。」


 知らない単語が出てきて一瞬だけキョトンとする狂歌。


「ここなら騒がれても心配ないからな。逃げようとしたって無駄だ。俺から逃げられると思うなよ。こっちは秘密を握られてんだ。魔人になるまで返さないぞ。」


 多少殺気のこもった目で見つめ、そういうと狂歌は顔を赤くしてこちらを見つめてきた。


(何で赤面するんだ。)


 内心で少し戸惑ったが、俺は試験化を1本狂歌に手渡した。


「一気に飲み込めよ。俺は激痛で途中気絶した。その間は仮死状態になっているはずだ。絶対に起きろよ。」


「忠告ありがとう。」


 狂歌はそういうと試験管を一気に飲み干した。


「あ...熱いわ。熱い熱い熱い熱い熱い熱い」


 狂歌は狂ったようにその場で熱いと連呼した。


(立っていられるのか。凄いな。そろそろ異変が起きる時間だな。)


 


 そのまま狂歌は全身から血を吹き出し、意識を失った。


(おい。どうなっているんだ。なぜ変化が起きない?まさか薬が違ったのか?いやそんなことは無い。ちゃんと解析して確認したはずだ。)


 そう思っていると狂歌が突然起きた。どこにも変身したような気配はない。


 いや、目が碧眼になってる。それに、気のせいだろうか狂歌が


 狂歌は起きた後俺に近づいてきた。


「おい。どうなっていやがる。なぜ異変が起きない。」


 狂歌は俺に突然抱き着き


「おい...返事をしろ狂歌。」


 目を青く光らせ、口からで俺の首を噛んできた。


「おい。なにしやg-」


 抵抗しようとしたができなかった。体に力が入らなかったから。


(なんかめまいがする。貧血かこれ?いや違う。)


 


 狂歌は吸血して満足したのか、俺の首筋から尖った歯を抜いて満足そうにこちらを見つめてきた。


 その顔はとても妖艶で美しかった。


 そして俺は意識を手放したのだった。




 ★☆★☆


 目覚めると部屋のベッドで寝ていた。


 すぐに起きて狂歌を探そうと思ったが、一階に誰かの反応がある。


 一階に降りるとそこには


 姿で料理をしている狂歌がいた。


「あら?もう起きたの。少し待っててくれるかしら?」


 振り向きながら申し訳なさそうな顔でそう言ってくる狂歌。


 数分後に出来立ての料理をテーブルに置いた狂歌。


 そしてこちらに向き直り


「シンジごめんなさい。あの時の私どうかしてたわ。」


 突如誤ってきた狂歌。牙は無いようだ。


「意識が戻ったならいい。だけどなんで俺の血を飲んだんだ?」


「そ...そのー。衝動と言いうのかしら?自分でも分からないの。ごめんなさい。」


 申し訳なさそうに謝ってくる狂歌。こんな狂歌は初めてだ。


 とりあえず俺は狂歌を解析した。



「名前」白河狂歌

「 L V 」 1

「階級」上級

「種族」吸血魔人(突然変異種)

「体力」2000/2000

「魔力」2000/2000

「筋力」2000

「耐久」2000

「俊敏」2000

「能力」【吸血(捕食)】【誘惑】【身体能力・超】【超速再生】

「称号」<元人間><適合者><魔人><突然変異種>



 アルフォースの薬に完璧に適合出来た人間。


 秋山真二以上にこの薬に適合したため上級となった。



 【吸血】…血を吸った相手の能力を真似することができる。


 【誘惑】…相手を魅了する。魅了した相手に命令することができる。ただし状態異常耐性がある相手には効きづらい。


 【超速再生】…自己再生の進化した能力。


「レベルは俺の方が上だからギリギリ能力値見えたな。」


(おいおい。マジかよ。いきなり上級かよ。能力もエグいな。俺の血を吸ったから捕食が能力にあるのか。てかあの時絶対俺に【誘惑】使ってたな。)


 俺は狂歌に能力のことを伝え、食事をとることにした。


 どの料理も貧血に効く食材ばかり使用している。吸血したことを悪く思ったのだろう。


 時間を見るともう20時だった。


「今日は泊っていくか?」


(明日から魔力操作のやり方とか教えないといけないしな。なんなら適正魔法が何なのかも知らないし、力の使い方を教える必要だってある。できれば明日に向けて泊ってほしいところだな。)


 内心そう思っていると


「と、泊ってほしいのかしら?」


 赤面しこちらを見つめてくる狂歌。


「ああお願いだ。泊ってくれ。」


 真剣な顔でそう言うと


「わ、分かったわ。」


 とだけ言って。それから会話することもなく、ただ食事をするだけとなった。


 なんか気まずいと感じた俺はすぐに食べ終えた。


 シャワーを浴びてくるとだけ狂歌に伝えその場を離脱する。


 その時の狂歌は、今まで見たこともないほど慌てていた。


 可愛いと思ってしまったのは内緒だ。


 シャワーを浴び終えリビングに戻ると、狂歌は全てを片付け終えていた。


 そして、私も浴びてくるとだけ伝えてシャワーをしに行った。


(よほど浴びたかったのか。悪いことをしたな。)


 心の中で少し反省した。今度からは順番を譲ってやろうと思った。


 寝る支度をするため、ベッドに向かう。


 狂歌が寝る部屋を整えるためだ。今夜は別々で寝るつもりだ。


 整え終わり、自分の部屋へ向かう。あとはもう寝るだけだ。


 俺の部屋のドアがノックされる。


 狂歌はシャワーを浴び終えたのだろう。


 恥じらいながら中に入ってくる。いい香りがした。


 そして狂歌は覚悟を決めた後、いきなり俺にキスをしてきた。濃厚なやつだった。


「ん、んんん」


 狂歌が口の中に舌をねじ込んでくる。最初は少し抵抗してたが、あまりの快楽に抵抗できず、俺はされるがままとなった。


 お互いの舌が絡み合う。


 キスが終わり、お互いの舌がはなれる。はなれあう舌に唾液が糸を引く。


 お互いに興奮した。お互いに顔を赤くした。


 狂歌は服を脱いでいく。狂歌のたわわな胸が見える。


 狂歌は妖艶な顔で見つめてきた。


 興奮しすぎて何も考えられなくなり、お互いを求めあった。


 こうして、俺は狂歌と一夜を過ごすことになったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る