11話 電話
5月18日 土曜日
女の子を助けてから5日が経っていた。
その間にしていたことはもちろん狩りだ。
色んな魔物を倒した。
毒魔法を使う蛇や闇魔法を使う動く骸骨。雷を纏うハリネズミに、炎を纏っている熊など、数えきれないほど魔物を倒し、捕食をした。能力を得られなかったやつもいた。下級クラスの魔物だ。いい能力を持っていないため奪えないのかもしれない。地力が増しただけでも良しとするか。
もちろんヒーローが来る前にだ。
魔物を狩っていくうちに、いつの間にか俺は『黒騎士』と呼ばれるようになった。
きっと俺の外見のせいだろう。全身鎧を身に纏い、騎士のようであるからだ。
そして、結果的に人々を魔物から守っていたことから黒騎士と連想されたみたいだ。
(違うんだ。)
ヒーローに魔物を倒されると困るからいち早く現れ、魔物を倒していたのだ。
強欲で経験値を大量に得て、捕食で能力を奪いたかっただけなんだ。力をつけるために。
最近魔物出現する頻度多くないか?
前まではこんなに出現はしなかった。やはり魔王が倒されたせいだろうか。
まぁ俺には分からないし。考えるのはまだいい。その内分かるだろう。
これが現在俺の力だ。
「名前」秋山真二
「年齢」17歳
「 L V 」 40
「階級」中級
「種族」鎧魔人(突然変異種)
「体力」5500/5500
「魔力」8000/8000
「筋力」5000
「耐久」5000
「俊敏」4000
「能力」【捕食】【強欲】【解析】【刀術・極】【自己再生】【身体能力・超】【魔力操作・極】【闘気】【怪力】【鉄壁】【俊足】【体力強化】【魔力強化】【状態異常耐性】【針使い】【雷魔法】【火魔法】【闇魔法】【毒魔法】
「称号」<元人間><適合者><魔人><突然変異種><黒騎士>
自己再生は魔力さえあれば自分を回復できる能力だった。電気を纏うハリネズミを倒した時にそれを知った。少し慢心していたのだろう。自分ならば余裕であると。相手の油断をつき、刀で袈裟斬りしようと接近したのだ。そしたら相手が相打ち覚悟で針を飛ばしてきたのである。流石に驚いた。まさか針を飛ばせるなんて。
とっさの判断で何本か撃ち落としたが、左腕、右足、右肩、左腹の鎧を突き破って針が突き刺さってしまったのだ。吐血し、不味いと思った。このままでは不利だと。傷を治す手段は無いかとそう考えていた時、『自己再生』を思い出した。
魔物ならば誰もが持っている能力。今まで敵をほとんど一撃で倒してたから気付かなかった。でも自己再生ならばどうだと思って試したのだ。
そしたら傷口がすぐさま再生したのだ。魔力をごっそり持ってかれたが。連発はできそうにない。そう思った俺は本気で行くことにした。
『
捕食すると力が流れ込んできた。【針使い】という能力が手に入った。
すぐさま電撃加速でその場をあとにして、山に向かった。誰もいないためだ。
(いや、針生えてないけど。これどうやって使うんだこれ?)
山に着いてから考えたがこの能力の使い道が分からなかった。
どうしたものかと。とりあえず体がハリネズミになることを想像した。
すると鎧が針に変化したのだ。針を飛ばすこともできた。
針を出さず、腕を前に突き出し針を飛ばせるか試してみた。できた。ビュッと音が鳴り木に突き刺さったのだ。
これからはこういう使い方でいこうと決めることにした。全身ハリネズミだと動きずらいからな。
電気針鼠戦を思い出してると電話が鳴った。
リビングに移動し、電話に出る。電話主は英語で話しかけてきた。
『もしもし。シンジか?おじいちゃんのウイリアムだ。』
(まさかアメリカのおじいちゃんから電話が来るとはな。まぁ当たり前か。)
『久しぶり。ウイリアムじいさん。どうしたんだ?』
『グレンが死んでしまってわしも寂しい。シンジは大丈夫か?。こっちで一緒に暮らさぬか?サラが喜ぶぞ。』
『俺は平気だよ。じいさん。気にしないでくれ。』
相変わらず優しいじいさんだな。
『うーむ。だがのう。1人暮らしは大変であろう?お金は足りておるか?メイドでも雇うか?』
『メイドなんていいよ。気にしないでくれ。本当に俺は大丈夫だから。』
『そうか。まぁいい。困ったことがあったらわしらに頼るんじゃよ?それと、4日後の22日に墓参りしに日本に行くからの。空港まで迎えに来てはくれないかの?日本には疎くてな。』
『分かったよ。じいさん。』
『助かる。ではな。』
そういって電話は切れた。4日後の22日か。楽しみにしておこう。
そう思っていると、インターホンが鳴った。
「今度はなんだ?」
ドアを開けると、私服姿の狂歌がいた。
「久しぶりね。シンジ。学校に来ないのだから心配したわ。」
「ああ。学校か忘れてた。」
真顔で答えると、狂歌はいきなり抱き着いてきた。
ドキッとする。豊満な胸が押し付けられているからだ。
「大丈夫よ。あなたには私がついてるわ。」
優しく声をかけてくれる狂歌。
「ひとりで抱え込まなくてもいいのよ?」
「ん?どういうことだ?」
「あなたでしょ?噂の騎士は。」
一瞬ビクッとするが
「ん?どういうことだ?」
あくまでも平常を装う。焦ってはいけない。
「しらばくれるつもりかしら?黒騎士の使っている刀。あなたのでしょ。私が気が付かないとでも思った?」
「ハハハ。何を言ってるんだ狂歌。意味の分からないことを言うなよ。」
空笑いをしながら誤魔化す。
「なら、ヒーロー協会にあなたのことを言ってもいいのかしら?」
(不味い。このままではバラされる。口封じをしなければ。)
内心で焦った俺の思考を読んだのだろう。狂歌はニタァと笑った後。
「あなた今こう思ってるでしょ?口封じをしなければって。」
俺は狂歌を強引に家の中に入れ、玄関先の壁に押し付けた。
「てめぇ何で知ってやがる。何が望みだ?こっちは秘密を握られてるんだ。ただじゃあ帰さないぜ。」
俺が殺気を込めながら見つめ返すと。
「ようやく本性を現したわね。うふふ。そっちの方が素敵よ。私の望みは1つだけ。あなたと同じく魔物になることよ。」
狂歌は恍惚とした表情で答えた。
(なぜ狂歌は魔物になりたがっている?いや、なんで、魔物になったことを知っているんだ?)
「なぜ魔物になったことを知ってやがる。というかなりたがる。」
「だって、あなたのことが好きだからよ。すぐに分かったわ。黒騎士と今のあなたの雰囲気一緒だもの。好きな人と同じになりたいと思うのは普通のことでしょ?私を仲間にしてくれないなら、皆にバラすわよ?」
(は?狂歌が俺のこと好きだと?いやいや、動揺している場合じゃない。脅してみたが、まったく効果はない。狂歌を殺すとか俺にはできない。もう俺には魔人化させるしか道は残っていないのか。)
「お互い得だと思わない?あなたは秘密を守れて、私は魔物になれる。私が仲間になればあなたのことをバラす必要はなくなるわ。」
「魔物にすることはできる。だが、死ぬ確率の方が高いぞ?」
「ええ。かまわないわ。早くやって頂戴。」
「ここじゃあ駄目だ。山の方に向かうぞ。別の服も用意しておけ。血まみれになるからな。」
「一体あなたは私に何をする気なのかしら?まぁいいわ。あなたに従うわよ。」
そうして準備のできた狂歌を連れて山に移動することにしたのだった。
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