9話 初めての討伐

 美香が家に来た。


 いろんな話をしていく内に夜になり、彼女を家に送った。




 ★☆★☆


 冬柴美香ふゆしば みか視点


 両親が死んでから1人で家を過ごすことになった。親戚はいない。凄く寂しい。


 ずっと1人で泣いていたからせいで、目が赤くなっている。もう泣き疲れた。


 それからすることもなく。ただだたぼーっとしていると思い出した。


 シンジはどうしているのかと。気になったし、心配になった。


 だから会いに行ったんだ。昨日ぶりに会う彼は変わっていた。


 目つきが鋭くなった。今までは優し気な目つきだったはずだ。それが今では、相手を射抜くような目つきになっていた。


 雰囲気が変わった。今までは優しい雰囲気だった。爽やかな雰囲気に好印象を抱いていた。


 それが今では違う。どこか攻撃的な感じがするのだ。


 体格も変わった。気のせいだろうか?昨日はずっと泣いていたから気付かなかっただけかもしれない。


 でも、ガタイが良くなった気がする。一日筋トレしただけで変わるのだろうか。男の子は凄いな。


 魔物の話をした時、彼の雰囲気がさらに変わった。


 笑っていたのだ。顔に狂気をはりつけて。


 怯えたし、驚いてしまった。あんな顔をするなんて思わなかったから。


 怖かった。でもちょっとカッコいいとも思ってしまう自分も其処にはいた。


 うちが怯えると、シンジは申し訳なさそうに『ごめん』と謝った。


 なんだか申し訳ない気持ちになった。


 そのあと私達は他愛もない話をした。だけど一緒に過ごす時間はあっという間で。すぐに時間が経ってしまった。


 夕方になりシンジが家まで送ってくれると言った。


 嬉しかったし、もっとシンジといたかった。


 だからシンジに聞いたの。『また家に行ってもいい?』と。


 そしたら、シンジは驚いた顔をしながらも『いいよ』と承諾してくれた。


「今日は楽しかったな(ボソッ)」


 家で1人今日のやり取りを思い出しながら、早く明日になれとうちは、そう願うのだった。




 ★☆★☆


「さてと。狩りをするか。」


 夜になり魔物を探した。探索方法はいたってシンプル。自分を中心にして魔力を波のように、ソナーのように流す。


 すると反応があった。どうやら駅の近くに一体いるようだ。すぐに現場に向かう。


 そこでは魔物が暴れていた。ヒーローはまだ来てないようだ。人が沢山集まっている。


「丁度いい。俺が狩らせてもらう。」


 牛の顔に茶色い体毛。筋肉質で、二足歩行で歩いてた。体長は3メートルほどだ。ミノタウロスのようなものがいた。


 何名か死者が出ていた。当たり前だ。並みの人間では太刀打ちできないからだ。逃げ遅れている人が何人もいる。


 変身して魔物の前に現れる。ついでにこっそり『分析』した。


 するとー



「名前」-

「 L V 」 15

「階級」中級

「種族」ミノタウロス

「体力」700/700

「魔力」100/100

「筋力」800

「耐久」700

「俊敏」300

「能力」【魔力操作Lv3】【怪力】

「称号」-



「格下かよ。」


 相手の情報が表示された。


『Gaaaaaaaaaaaaaaa』


 雄たけびをあげながら突進してくる。


 肉体を魔力で強化し受け止める。


『Graaaaaaaaaaaaaaa』


 相手は雄たけびをあげながら、進もうとするが、俺が受け止めた状態から一向に進まない。


『Ga?』


 自分が全力を出しても、一向に進まないことに気が付いたのだろう。


 俺は魔物の腹に膝蹴りをかます事にした。


『Gaa』


 腹部を抑えながらよろける魔物に、魔力で身体強化し一気に加速し、肉薄する。


 俺の速度についていけなかったミノタウロスは反応が遅れる。


 後へ回り込んで膝裏を蹴り、ひざまずかせ、首をガッチリと両手で押さえた後魔物の首をへし折った。


『ボキッ』という骨の折れる音が聞こえた後、肉体は自由を失いそのまま地面に倒れるミノタウロス。


 殺した魔物をその場で捕食した。口が異様に裂けたあと牛の魔物を喰らう。


 周囲の人が戦慄し、恐怖に震える中、骨を噛み砕く音が周囲に響いた。口の横から血液が滴り落ちる。


 喰らった獲物から、力が流れ込んできた。


(マズくは無いな。牛肉みたいな味だ。)



「【怪力】を獲得しました。」


「【魔力操作Lv3】に成長しました。」



 一般人達に恐怖の目で見られ、怯えられる。


 当たり前だ。魔物を喰らう魔物など見たことが無いのだろう。


 恐怖で身体をガクガクと震わせていた。


 魔界では、常に魔物同士殺しあう。だがそのことを人間達は知らない。


 知っているのは、魔物には知能のないこと。凶暴な生き物ということだけだ。


 魔界での負け犬だった奴らが人間界に来ていることなども知らない。


 だから異様に見えたのだろう。仲間であるはずの魔物を殺したことを。仲間である怪人を捕食したことを。


 理解の及ばないことが起きると人は恐怖する。恐れられて当然なのだ。


 俺は魔力で身体強化し、その場から消えたのだった。




 ★☆★☆


 誰もいないところで変身を解いたあと、家に帰った。


 シャワーを浴びた後、テレビをつけニュースをみた。


『謎の魔物現る!?』 『仲間割れか!?』 『共食いをした謎の鎧の魔物』


 などとテロップがはられていた。


 誰かが撮ったのだろう。俺が魔物と戦っている動画がSNSで拡散されていて、ニュースでも紹介されていた。


 手に入れた能力を解析する。


【怪力】・・・力が上昇する。


「そのまんまかよ。」


 やることがないので魔力操作を訓練した。消費はしない。体内で流れを意識するだけだ。魔力を大量に消費すると気絶しかけるほど疲れる。本能で分かるのだ。



 30分後-


『【魔力操作Lv4】に成長しました。』



 2時間後-


『【魔力操作Lv5】に成長しました。』



 4時間30分後-


『【魔力操作Lv6】に成長しました。』



 5時間訓練するのは流石に疲れた。


「明日から【雷魔法】と【闘気】訓練するか。」


 そう決めて今日は就寝するのだった。

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