8話 手に入れた力


 5月12日 


 11時あたりに起きた。起きた後2つの違和感に気付いた。


 視力が良くなった。コンタクトをしていないのに、目がはっきりと見えるのだ。


 そして身体の調子がすごくいい。違和感を確認するため服を脱いだ。


「ん?俺の筋肉ってこんなに発達してたっけ?ガタイ良くなってるし。」


 前までの俺の肉体はそこその筋肉しかなかった。着痩せもしていた。


 でも今は、胸板が厚かった。腹筋が8枚に割れていた。腕が前より分厚くなり、筋肉量も増した。無駄な筋肉がついてない。


「やっぱり体を作り変えられたせいだな。仮死状態だった時に目も作り変えられたんだろうな。」


 ベッドから降りて服を着替える。家のすぐ横にある道場に向かう。


 昨日工場でアルフォースを喰らったあと、家に帰ってすぐに寝た。


 アルフォースから受け継いだ記憶で


 魔物は、魔界と呼ばれる異空間に住んでいる。


 魔界では、魔力濃度が濃いため、魔物が自然発生する。


 下級からみんな生まれ、経験を積むことで進化することが分かった。


 中級、上級、幹部級、王級となる。


 魔王が王級で、幹部が文字通り幹部級。上級は『なりかけ』と呼ばれることが分かった。進化するたびに知能が発達する。


 魔界は弱肉強食の世界であり、殺し合って上位の存在になるのが彼らの目標だ。魔達同士殺し合いを行っているのだ。進化をするために。上位の存在ほど数が少ない。王は1人。幹部は7人しかいなかった。


 彼らは人間界に興味がない。なぜなら人間は脆いからだ。経験値にすらならない。


 人間は無害であるため、あちらから干渉しない限りこちらもしないというスタンスだ。


 人間界に現れていた魔物は、命が惜しかった負け犬どもだった。知能は低い喋ることはできない。でも、死にたくない。その想いで人間界に逃げてくる。


 そして気付くのだ。ここでなら自分は捕食者として頂点に立てるのかもしれないと。


 魔力を持たぬ虫けらしかいないのだ。好き勝手にできるのだと。そして、ヒーロー達を侮り討伐される。


 これが魔物が地球に現れる原理だった。


 道場についた。そこで手に入れた力を検証することにした。


 アルフォースから奪った力は【強欲】【解析】【身体能力・超】【魔力操作Lv2】【闘気】だ。



 解析を使用し、能力の詳細を見る。


【強欲】・・・習得経験値が大幅増加。進化に必要な経験値が少なくなる。成長速度に大幅補正。使いこなすと更なる力を引き出すことが出来る。


【魔装】・・・全身を纏う鎧。魔力で再生する。


【解析】・・・物事を解析できる。生物相手には自分と格下相手にしか使えない。


【身体能力・超】 ・・・素の身体能力に超補正。身体能力が大幅に上昇する。完璧な肉体、骨格となる。


【魔力操作】・・・魔力を操ることができる。レベルを上げることによって操作範囲、威力が上昇する。魔力で身体強化することも可能。


【闘気】・・・幹部級に進化することで、ようやく使用できるようになる。戦いを極めた者にしか使えぬ力。内側から肉体を強化する魔力とは違い、外側から肉体を強化する。魔力操作とは異なり習得するのに長年の歳月とセンスが必要。一時的に全ての力が大幅に増加する。



「筋肉が発達した理由が【身体能力・超】《これ》のせいだったのか。だからアルフォースあんなにムキムキだったのか。」


 アルフォースの衣類に入っていた試験管をポケットから取り出し、ついでに解析する。


 



【魔人薬】・・・元幹部であるアルフォースが人間から魔物に進化出来るように作り出した薬。

 飲んで耐えることができれば魔物に進化できる。しかし、大抵の人間は適合出来ず、痛みにより発狂死した。



「まじか。」


 今度は自分を解析する。



「名前」秋山真二

「 L V 」 15

「階級」中級

「種族」鎧魔人(突然変異種)

「体力」2500/2500

「魔力」3000/3000

「筋力」1500

「耐久」1500

「俊敏」1500

「能力」【捕食】【強欲】【解析】【身体強化・超】【刀術Lv6】【魔力操作Lv2】【魔装】【闘気】

「称号」<元人間><適合者><魔人><突然変異種>


 元幹部アルフォースの開発した薬に唯一適合出来た人間。

 魔物薬で人間から新たな種族へと進化し、魔人となった。

 アルフォースを喰らい下級から中級に進化した。



「俺いつの間に進化してたんだ?まぁいい。次は力を試すか。」


 まずは、人間のままで魔力を使えるか検証する。成功した。やはり体を作り変えられたおかげで使えることが分かった。


 指先から軽く魔力を流す。


 ビリビリと音が鳴った。そのまま流す量を大きくしていき続ける。すると。


 指先から電気が流れた。


「【雷魔法】を獲得しました。」


「どうやら俺は雷に適性があったみたいだな。」


 人間も魔物もそうだが、それぞれ個体によって適正魔法がある。こっちでは異能や超能力と呼ばれるものだ。魔法が苦手でアルフォースのような身体能力が異常に高い魔物もいる。逆に、身体能力は低くて魔法が得意な奴もいる。千差万別だ。


 別の力を試そうとしたその時


 ピンポーン


 と家のインターホンが鳴った。


 急いで玄関に向かう。ドアを開けるとそこには、美香がいた。


「どうしたんだ?美香」


「えっとー。その。きちゃった。迷惑だったかな?」


(おいおい。それは彼女が彼氏の家に遊びに来た時のセリフだろ。)


 と内心で思った。


(特に迷惑でも...いや、ちょっと迷惑だったな。別の力を試そうと思っていたのだが...まぁいい。)


「別に構わねーよ。」


 美香を家の中に入れた。


「ごめんね...うち、勝手に家に来ちゃって...家だと1人で寂しくて...それでっ...」


 申し訳なさそうに言ってくる美香。内気な性格は変わっていなようだ。


「気にしてねーぞ。」


「なんかシンジ君変わったよね...雰囲気っていうのかな...口調もちょっと変わったし...やっぱり魔物のせい...だよね...」


「そうだな。俺は魔物が憎い。ぶっ殺してやりたいと思ってる。」


「シンジ君...なんで...」


 そう言うと美香は恐怖におびえた顔をした。


「...なんで?


 と美香に言われてしまうのだった。

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