2話 登校

 俺は今、通学路をトボトボ歩いている。


「眠いなー」


 家から学校までは、ほとんど一本道となっているため、非常に楽なのである。


 今夜は結婚記念日だから、鍛錬ないけど明日からあるんだよなー。


 大体うちの家系が辿れば戦国時代の武将だったからって、現代で刀術習う必要性あるかよ。


 もう時代は乱戦じゃないんだよ。平和なんだよ。へ・い・わ。


 ーーと、うちの家系について、心の中で愚痴りながら歩いていると、


「シンジおはよう」


 と後ろから声をかけられた。


「お、おう、おはよう。狂歌きょうか


「どうしたの?浮かない顔してるわね。考え事?」


 話しかけながら上目づかいで覗き込んでくるのは、俺の幼馴染である白河狂歌しろかわ きょうかだった。


 銀髪の背までかかる長髪と、整った顔立ち。おまけに巨乳である。


 学校の三大美女の一人にして、男子達にモテモテの幼馴染である。


 綺麗だな…


 思わず見惚れていたが、返事をしないのは不自然なため直ぐに答える。


「ん? あーちょっと鍛錬について考えてた」


 と、あくまでも自然に答える。


 ここで狂歌に話しかけられたからと言って、動揺してはいけない。


 いくらだからと言っても。動揺しようモノなら、変なことを考えていたと思われるか、もしくは、好きな人に声をかけられて挙動不審になってると思われるかのどちらかだ。


 『朝から一緒に登校できてラッキー』なんて思っていても、決して顔を緩めてはいけない。


 めちゃくちゃ嬉しいが、今は我慢しなくては…


 顔を引き締めろオレ!

 ニヤけるな!


「それにしても10連休明けの授業はだるいなー。最近難しいし」


「確かに最近難しいものが多いわね。でも苦手だからといって勉強しないと赤点とっちゃうわよ?シンジ」


「分かってるよ」


 うんうん、頑張るよ!

 一緒に卒業したいからね。


 二人で並んで登校するのって久しぶりだな…


 狂歌からいい匂いがしてくる。香水かこれ?と思ったが我慢我慢。


「最近、魔物の事件多いよな」


 話題をつなげるため、朝見たニュースを言うことにした。


「魔物による事件最近増えてるものねー。早くヒーロー達に倒して欲しいわね」


 超能力者達は魔物と戦っている為、ヒーローと呼ばれている。


 アメリカの研究でヒーロー達は、使ことが判明した。


 でなければ、人間が体から炎を出したり、操ったり、異常な腕力を持っていたりと、できるわけが無いのである。


 彼らは異能を使うことで、魔物から人々を守っている。


 魔力さえあればヒーローになれるが、持っているのは一握りの人間だけであることが研究で分かった。


 魔力持ちの人間は、専門の学校で力の使い方や常識などをしっかりと学んでもらう必要がある。


 人殺しになられては困るからだ。異能を使う犯罪者など、質が悪い。


 過去に能力を悪用して、事件を起こしたヒーローもいる。


 そのため、GPSの小型装置を体に埋め込み、悪用しないように監視しているのである。


「ヒーローね。小さい時憧れていたけど、今はそうでも無いかな」


「どうして?」


「最初は憧れていたよもちろん。異能を使って空を飛びたいとか思っていたよ。検査して、魔力が無いと知った時悔しくて泣いたのを覚えている。だが、考えてみろ。魔物と戦わないといけないんだ。最悪死ぬかもしれないのに。給料はいいんだろうけど、監視される人生はいやだね」


「確かにいいことだらけでは無いわね。魔物に負けて殺されたヒーローもいるもの」


 俺の意見に、少なからず納得した様子を見せる狂歌。


「ところで、気になったのだけれど。どうしてさっきからニマニマしているのかしら?何かいいことでもあった?」


 下から覗き込み、狂歌は疑問の表情を浮かべてくる。


「え?顔に出てた?」


 おいおい、マジかよ。バレてたのかよ。


 渾身の演技が見破れ、ーーもといバレバレだったことに驚愕してしまう。


 指摘されたことにより焦り、体温が上昇していく。思わず額から汗が流れてしまう。


「ええ最初からよ。声かけた時から嬉しそうだったけど、あなたが平常を装ってたから気にしないことにしたの。でも、ちょっと気になっちゃって」


「え…なななんでもないぞ?気にしないで?」


「もう、そんなに焦らなくてもいいのに。言いづらいなら聞かないでおいてあげるわ。汗出てるわよ」


 そう言われ、狂歌に


「わ、悪い。洗って返すよ」


「別にいいわよこれぐらい。ところで昨日のテレビ番組みた?」


 そう言いながら、ハンカチを制服のポケットに仕舞い話題を変えてくれる狂歌。


 その後、たわいもない話をしつつ学校へ着いた。


 お互い同じ教室な為、2年1組のクラスに入る。


「ちっ。朝から一緒に登校かよ」


「今日も綺麗だな狂歌さん」


「シンジが羨ましいぜ」


「あの2人付き合ってんのかな」


「だとしたら殺す。モテるやつは敵だ」


 などと男子達がはしゃいでるが、気にしない気にしない。


 狂歌が教室につくと何時ものことだからだ。


 それから数分後にホームルームが開始され、今日の授業が開始するのであった。

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