3

 いつしか少年は、地に膝をつき、


「ごめんなさい……」


 そう、呟いていた。大きな獣は目を丸くして、その大きな口で笑い始めた。


「まぁ、僕は取って食おうなんて思ってないよ。そうだな、話をしてくれないか」


「は、なし?」


「毎日僕を見るなり、逃げ出す者ばかりでね。まぁ、もうそいつらは、食べられてしまっているだろうけど」


 先ほどとは打って変わって殺気が消え、悍ましい森の中であるのに、どこか居心地が良く感じる。


「お前の話で良い。そうだな、これじゃ緊張して喋れないか」


 そう言うと、大きな獣の身体を眩い光が包み込んだ。瞬きをしたと同時に、大きな獣は姿を消した。


「この姿にゃら、お前もはにゃせるにゃ?」


「うわっ!?」


 足元に寄り添う柔らかな薄桃色の毛並みの感触。尾が長く、耳はやや短く、丸みを帯びてる。


「さぁ、にゃんでも良いからはにゃそうではにゃいか!」


「何でそんなに話しがしたいの?」


 そう、少年が問うと一瞬目を細め、悲しげな瞳の色が見えた。そのまま何も言わぬ獣。


「俺はヒカゲ。俺の話なんか聞いたって面白くないけどいいの?」


「ヒカゲ……僕はキャロルにゃ!」


 その問いにはコクリと大きくうなずく。キャロルはヒカゲの横に腰を置き、ヒカゲを見上げる。自分語りなどした事ないヒカゲは、ありのままを話し始めた。

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