第2話
そろそろ夏が終わろうとしているのにまだ海岸は人で賑わっていた。
親子で来ている人達もいれば、恋人と、部活の仲間と、友達と……
うるさいくらいに賑やかだ
色とりどりのパラソル、砂浜の落書き、置き去りにされたように佇む砂の城
僕はその横を通り過ぎ人が少ない所に腰を下ろした。
何か飲み物を買ってくればよかった、
そう思ったが、生憎この近くに自販機は無い。僕は諦めて、宙に浮きかけた腰をまた下ろした。
昼の海は初めてだ
彼女と来るのはいつも夜だった。
1度彼女に尋ねたことがある。
「だって、夜の方が涼しいし人もいないし」
あぁ、確かに。
彼女の言葉に納得した僕はそれ以来聞かなかった気がする。
あの時、なんでもっと彼女の心の内に踏み込まなかったのか、今となっては後悔してもしきれない
光が反射してきらきら輝く水面を見つめながら彼女のことを思い出す。
彼女は謎が多い人だった。
真っ直ぐで、純粋で、それでいてどこか寂しさを感じる彼女
僕は彼女の肩につくかつかないかぐらいの綺麗な黒髪が風でなびくのを見るのが好きだった。
時折、強い風に煽られ、旗めくスカートを恥ずかしそうに抑える彼女
学校の帰り道、駄菓子屋に寄りお菓子を沢山買って近くの公園で頬張る彼女
テストで悪い点を取り先生に叱られ、落ち込んでいた顔の彼女
全て、鮮明に思い出せる。
思い出に浸っていたその時、冷たいものが僕の首筋に当たった。
びっくりして目を開けると、そこには見知らぬ人が僕を見ていた
「誰」
そう言うと、彼女は向日葵のような笑顔で微笑んだ
その笑顔を僕は知ってる
目の前で微笑んでいる彼女の笑顔が、死んだ彼女の笑顔と重なった。
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