7
夜明けとともに出立し、キリユウとフィアナの流浪の旅が始まる。無知な二人にとっては冒険のように、日々覚える事があった。見たことのない植物や動物。景色の変わらぬ入り組んだ森。川を辿り上流に近づくとともに岩が増え、流れも急になってきた。出立してから一週間が過ぎた頃、
「薄汚ねぇ奴らだな」
声のする方へと振り向くと、
「奴隷か? どこから逃げてきたんだ?」
「うみゅ? 僕、迷子なの?」
「子供扱いするな! 俺様は一国の皇子だ!」
「──
木々の向こうから聞こえる女の子の甲高い声。その声に少年は覚えがあるのか、瞳を開く。
「やぁっとみつけたわ」
少し訛り気味の言葉遣いで甲高い声を持つ純白の白髪と朗らかな印象の
「
「何言ってはるの。ウチはこれでもエイヒの護衛やて」
「女は俺様に護られとけば良いんだ!」
「ウチに勝ったことないのに、何言ってはりますか」
痛い所を突かれたのか言葉を失う少年、エイヒ。同い年位の少女、ハクアがエイヒの護衛とは相当強いのだろうか。
「そんで、ティナはおったん?」
「いいや、それよりこいつらよ」
エイヒに促され、キリユウたちに視線を向ける。するとすぐに近づき、体をあちこちと診る。
「怪我は、無いようですね!」
「あ、はい!」
「お前らどこから逃げてきたんだ?」
「うみゅ〜どこだっけ」
どこから来たかはこちらも教えて欲しいほどに、現在地がわからないのだ。キリユウは鞄から地図を出し、
「なんだ! お前ら俺様の国に行きたいのか!」
「うみゅ? 君の国なの?」
「そうだぜ! 俺様はエイヒ。こいつはハクアだ」
「フィアはフィアナっていうの! こっちはキリユウ」
「丁度いいぜ! お前ら、ティナ探しに付き合ってくれたら宿泊先と飯代タダにしてやるぜ」
龍鬼帝国に着いてからのことはまだ考えていなかった為、願ってもない話に二人は二つ返事で承諾した。
「なぁエイヒ、ティナってどういう子なんだ?」
「ティナは護神龍なんだぜ! 俺様の国を護る神龍だ!」
「まんまだな……え!? 人じゃないの?」
キリユウたちはティナを探す事になったのだが、人ではないことに気づき呆気を取られる。そして、護神龍とは何か、見たこともないものを探すには手がかりが必要である。
「ティナは護神なんよ。とは言っても、元は風魔の神龍でな、代々風魔の巫女がティナに選ばれて、一族を護って来たんよ。数年前、
「ハクアは最年少で風魔の巫女に選ばれたんだぜっ!」
代々ティナに選ばれてきた風魔の巫女、現在はハクアの事らしい。自分の事の様に胸を張って威張る様な素振りを見せるエイヒにハクアも苦笑い。
「まぁ、護神言ってもウチの友達なんやけどな? 少し目を離していた隙に、いなくなってしもぉて……」
悲しそうに
「どんな容姿なの〜?」
「えーと、羽が生えてて、あと爪と牙があって……そんな感じだ!」
「僕たちからしたら怪獣探してるみたいだな……」
エイヒの説明に苦笑するキリユウたち。そんな時、木々の隙間からまばゆい光か差し込む。木々が晴れると湖が広がり、水の反射で目が眩む。
「キリュー! すっごくおっきい木があるよ!」
見上げるほどの大樹に惹かれるように、フィアナたちは湖のほとりにある大樹へと向かう。
「おい! ここに穴あるぜ!」
大樹の周りを調べるエイヒが見つけた穴に入って行くと、
「ゔあぁー!?」
エイヒの悲鳴が聞こえ、すぐに穴の元へ向かう。暗いが、下へとつながっているようだ。
「エイヒぃー!」
ハクアもすぐに穴の中へ入って行ってしまった。フィアナと二人の名を呼ぶが、応答がない。
「フィアはここでまっ!?」
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