解析
「で…2週間たったけど、何かわかったの?」アイシャはティーカップを傾けながら、尋ねる。アイシャは夜にヴェラの部屋を訪れていた。
先日の図書館での会合以来、ほとんど二人は会っていなかった。
アイシャは自分の修士論文についてや、研究室の後輩の面倒を見たりで、忙しい日々を送っていた。入学した時からほぼ
「そうだねぇ、思いのほか芳しくないかな。なんというか、いまだに2つほどわからない魔法がかかっているんだよね」ヴェラにしては珍しく、歯切れが悪い。
「ヴェラに分からない魔法なんてあるんだね。とりあえず、何の魔法が判明しているの?」普段ならもう少し自信げなのだけれど、アイシャはそれが意外だった。
「トレビスさんたちの資料には4つ判明してない魔法があったけれど、今なお判明してないのは、耐朽と障壁が1つづつ」
そういって、ヴェラは一息つく。
「わかっているのは、
・水魔法万能耐朽魔法による防汚防塵防振温度調節
・光魔法光学操作による内部への光の侵入阻害
・光魔法契約術式による
・闇魔法認識阻害による解析妨害
・土魔法霊脈認識術式による現在位置の把握
あと、あいまいだけれど、闇魔法精神隷属によるなんらかの攻勢防壁ってとこかな。
それと、トレビスさんたちのかけた
・無魔法による魔導追跡
だね。もちろん最後に関しては無視していい。」
さしものヴェラも、お手上げという感じだった。
本来なら、魔法をひとつづつ解錠することで、その実態を明らかにするのだが、トレビスやヴェラが魔法を解いてない理由はそのかかっている魔法にあった。
『光魔法契約術式による
「
アイシャは額にしわを寄せ、ヴェラに聞き返す。
「うん…順序はわかっている。解錠には2つのルートが用意されているのだけれど、ただ、どちらもまだ不明の魔法を起点にスタートするみたいで。だから一向に進めないの」そういって、ヴェラはアイシャに紙を渡す。
~~~~~~~~~~
プロトコル
【解錠方法1】
1.不明な障壁魔法
2.光魔法光学操作による内部への光の侵入阻害
3.闇魔法認識阻害による解析妨害
4.闇魔法精神隷属によるなんらかの攻勢防壁
【解錠方法2】
1.不明な耐朽魔法(耐朽魔法か疑わしい)
~~~~~~~~~~
「この『耐朽魔法か疑わしい』ってのはどういうこと?」
アイシャは疑問に思いヴェラに質問する。
「あぁ、一見して耐朽魔法なんだけど、アイシャは、アマデル卿ともあろうものが、耐朽魔法を一つ解錠しただけで解けるようなてがかりを残すと思う?」
そう。解錠方法の2は、アマデルにしては”簡単すぎる”のだ。
だからヴェラは、既存の耐朽魔法に似た、別の何かだと判断していた。
「なるほどね……。まぁヴェラが知らないぐらいだし、相当に自信がある魔法なのかもしれないよ」アイシャも納得がいったようだった。
ヴェラは静かにお茶を飲み、アイシャも考え、二人ともしばし無言となる。
「じゃぁ、その魔法がわからなかったら、1つ目のやり方でいくの?こっちも障壁魔法が分からないみたいだけれど」先にしゃべったのはアイシャだった。
「うーん。それも厳しいかもしれない。こっちも手がかりがないんだよね。何かを対価にするタイプの攻勢防壁っぽいんだけど」ヴェラは今判明していることを返す。
「あぁ、魔力入れたりするタイプのやつね」
「そうそう。でも魔力ではなさそうなんだ。それだと簡単すぎるし。というわけで、八方ふさがりなの」ヴェラは、はーっと、ため息をつく。数日あまり寝てないのだろうこともあって、あまり顔色も良くない。
「それじゃあどうするの?どうせもうあらかた測定はかけたんでしょう?」アイシャはヴェラの目を見つめて問いかける。
「あとはもう、
----------
【解錠】
かけられている魔法を解き、箱や扉などを開けること。
通常はかけられている魔法の特定→解呪および対抗術の施行を繰り返すことで完全に魔法がかかっていない場合を目指す。
また、力づくで解ける場合や、どうあがいても失敗する鍵などもある。
時には思い切りも必要である。
【
魔法そのものの分析ではなく、術者の個人情報や人となりなどから、かけられている魔法を分析する。解錠においてはメジャーな手段だが、手間や時間がかかるため、嫌う研究員も多い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます