第280話

「おやおや? 君はこの前殴り込んできて病院送りになった島並君じゃないか~。またお腹に穴を開けられたいのかな?」


「それは勘弁だな、それに今度はお前が病院送りになる番だぜ?」


「はっ! これが見えないのか? 良いか? 飛び道具を持っている相手に素手で適うわけねーだろバ~カ!」


「さぁ、それはどうかな? お前は不意打ちしか出来ねぇ小物だし、小物が拳銃持って偉そうにしても小物は小物だぜ?」


「あ? てめぇ死にてぇのか?」


 佐崎は俺の言葉に腹を立てたのか拳銃を俺に向けてくる。

 大島と悟はそんな俺を庇おうと前に出ようとしたが、俺は二人を制止て佐崎に向かってゆっくり歩いて行く。


「はは! 命知らずな奴だな、俺が撃てないとでも思ってるのか? 残念だが俺は遠慮なく撃つぜ!」


 バンッ!!

 佐崎がそう言った瞬間大きな音と共に俺のすぐ傍に鉛の弾が着弾する。

 一発目は外れだ。

 恐らく脅しのつもりだろう。

 しかし、俺は足を止めない。

 そのまま佐崎の元に歩いて行く。


「どうした? 外れてるぜ? それともこの距離じゃ当てられないのか?」


「あぁ? それ以上近付くならマジで当てるぞ」


「やってみろよ」


 そう言って近付いて行く。

 バンッ!

 またしても銃声がなる。

 俺は銃撃を避けて佐崎に近付く。

 一発、二発、三発。

 右に左に銃撃を避け、俺は佐崎までの距離を縮めていった。


「な、なんで当たらねぇ!!」


 佐崎は引き金を引き、俺が銃弾を避ける度に焦り始めていた。

 素人の射撃なんて対象が止まっていても当てるのは難しい、ましてやちょこまか動けば更に当てるのは難しくなる。

 だが、避けている俺もかなり集中して佐崎の動向を見ていた。

 そして、とうとう拳銃の弾がなくなった。


「クソッ! 弾が!!」


「行くぞ佐崎ぃ!!」


「っち! お前らやっちまえ!」


 佐崎の言葉で後ろにいた佐崎の子分達が俺に向かって襲い掛かってくる。

 その間に佐崎は後ろに隠れた。

 卑怯な奴だ。

 子分を盾にして銃弾を補充し、また俺に不意打ちを食らわせるつもりなのだろう。

 だが、今日はそう簡単にはいかない。


「おらぁ!!」


「ぐばっ!」


「な、なんだこいつ!」


「ありえねぇ……こっちは20人もいるんだぞ!」


 素手同士の殴り合いで俺は佐崎の子分たちを次々に殴り飛ばしていく。

 そして、立ち上がっているのが3人になったとき、再び佐崎が現れた。


「やっぱり凄いねぇ島並君、でもこれで終わりだ!!」


 佐崎はそう言って俺に再び拳銃を向けてくる。

 こいつ、倒れてる周りの奴らに当たるとか考えないのか?

 他の奴らに当たると面倒だし、撃たれる前に抑えよう。


「ふんっ!」


「な、はやっ……ぐはっ!」


 俺は直ぐに佐崎に近付き、佐崎の顎を殴り拳銃を取り上げた。

 

「こんな物どこで手に入れたのか……」


「て、てめぇ……」


「どうした? お前これが無いと何も出来ないのか?」


「うるせぇんだよっ!」


 今度は懐からナイフを取り出して俺に向かってきた。

 こいつは……本当に卑怯な奴だ。


「おい、お前も不良なら素手で正々堂々とか思わねぇの?」


 ナイフで向かってきた佐崎の腕を掴みそのまま腕を後ろにして動けないようにする。


「ぐっ! 正々堂々? 勝てば良いんだよ! どんなに卑怯でもなぁ! これで勝ったと思うなよ」


「もう負けだ、諦めろ。さっさと連れてった女の子を返せ」


「はっ! 返すわけねぇだろ? それに……もうあの子たちは俺達の手を離れてんだよ!」


「あ? どういうことだ?」


「俺はなぁ、負けるのは嫌いなんだ。でもなぁ負けても相手を絶望させられれば良いんだよ! 相手が絶望すれば俺の勝ちだからなぁ!」


「てめぇ……良いから答えろ! 城崎さんはどこだ!!」


「ぐっ……ははは! 今頃撮影の真最中だよ! 急いで工場の中に行ってみな!」


「っち! 悟、大島! この馬鹿と初白を頼む! 俺は中に行く!」


「はいっす!」


「任せて下さい!!」


 工場に向かって俺が走ると一心も俺を追ってきた。


「付いて行きます」


「急ぐぞ」


 工場内に入って奥に進む。

 工場内のそこら辺に倒れているノーネームのメンバーが居る。

 ここには高弥も来ているはずだ。

 最悪の事態にはならないと思っているが不安は消えない。


「城崎さん! 居たら声を出してくれ!!」


 叫びながら進む。

 かなり奥に進んだ所で開けた大きな部屋にたどり着いた。


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