第281話
*
工場の一番奥には、昔会議室として使われていたのであろう大きな部屋があった。
大きな扉の向こうに人の気配を感じる。
一人や二人じゃない、恐らく大勢の人がこの奥にいる。
大河原の話しではこの部屋には連れてこられた女の子が二人だけ閉じ込められていると言っていたが、どうやらそうではないようだ。
嫌な予感を感じつつ僕は扉を開ける。
「いらっしゃーい、君があの島並君?」
「随分な優男だな」
「イケメンではあるな、お前より」
「あぁ? 喧嘩売ってんのか?」
「……貴方たちは?」
ドアを開けるとそこには縛られた倉敷さんと城崎さんが座っていた。
そして二人を囲むように大勢の男達が武器を持って待ち構えており、ニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「俺たちはノーネーム傘下の連合チームさ!」
「全員、腕っぷしには自信があるんだよ」
「それにお前をやればこの女を好きにして良いって言われてるしな!」
「楽勝だよなぁ、こんなひょろいガキ一人。大河原の奴、こんなひょろいのに負けたのかよ。だっせぇ!」
そう言いながらニヤニヤ笑う男達。
ハッキリ言って反吐が出る。
城埼さんと倉敷さんは口を縛られていて声を出せないようだ。
「君達は群れないと戦えないのかい? 度胸のない腰抜けもこれだけ集まると多少は自信がわくのか?」
「あぁ!? てめぇ状況分かって言ってるのか?」
「お前は今この女二人を助けて俺達全員をやれると思ってるのか? 馬鹿じゃねぇの?」
「この人数相手に勝てるわけねぇだろ?」
「さぁ、どうかな? それに僕は今機嫌が凄く悪いんだ……覚悟してくれよ」
僕はそう言って木刀二本を構える。
すると、今までニヤニヤしていた男達が僕に向かって歩みを進めてきた。
「上等だよ」
「殺してやる」
「泣いても許してやんねーからな!」
「やっちまえぇ!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
一人の掛け声でその場にいた全員が僕に襲い掛かって来る。
「邪魔だよ」
「あぐっ!」
「がっ!!」
僕は向かってきた男二人を木刀で吹き飛ばす。
それを見て向かってきていた男達の足が止まる。
「どうした? 泣いても許してくれないんだろ? 大丈夫、僕も許す気はないから」
「び、ビビってんじゃねぇ! 相手は一人だ!」
一人の男が再び声を上げる。
その言葉で再び男達が僕に向かって来る。
僕は眼の前の敵に一人づつ切り込んでいく。
「ぐあっ!」
「こ、こいつ……」
「化け物かよ」
気が付くと既に半分以上の男達が床に寝ていた。
大河原一人の方がまだ苦戦した。
数で押し切れば勝てると思っていたのだろうけど、僕はそんなに簡単じゃない。
こんな修羅場は平斗と何度も潜り抜けてきた。
「悪いけど、僕はその子達を無事家に帰して、君たちノーネームをが解散するなら後は何も要らないんだ。さっさと降参してくれないかな?」
「ふ、ふざけやがって……」
「なんなんだよ……」
数は多くても一人一人の戦力は大きくない。
質より量で編成されたチームなんてどうってことない。
さて、後は二人を助けて帰るだけだ。
そう思った瞬間、僕は背後に殺気を感じ振り向いた。
「死ねよガキ」
「くっ!」
間一髪のところで木刀でガードしたが木刀が折れてしまった。
背後に居たのはスーツ姿の男。
手にはバールを持っており、腕には入れ墨が見える。
「誰ですか、貴方は」
この人はあの一撃で僕を殺す気だったのだろう、この男からは常に僕に対する殺気を感じる。
「あぁーてめぇか? うちの佐久間をやったのは?」
「佐久間? まさか貴方は清蓬会の……」
「やっぱり知ってんのか? あぁ、清蓬会傘下の組のもんだ。このガキどもはうちの組みが世話しててなぁ……」
「じゃぁ、ノーネームは清蓬会と繋がっていたのか……だから拳銃も用意出来た」
「あぁ、特に佐崎ってやつをうちの兄貴が気に入っていてな。何かあったら手助けするように言われてんだよ」
「そういう事か」
この男の話しで色々と分かって来た。
ノーネームがなぜここまで勢力を拡大出来たのか、拳銃を所持で来たのか、それは裏に清蓬会が居たからだ。
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