第278話



「な、なんなんだこいつ!?」


「ただの雑魚じゃないのかよ!」


 これで40人。

 どうやら数だけで質はそこまで良くないようだ。

 親玉も人質になったであろう倉敷さんがどこに居るかも分からない。


「な、なんなんだよお前!」


「うるさいよ」


「ひっ……」


「君たちがするのは連れてこられた女の子の居場所を教えるか、それともそこまで案内するかだよ……それが嫌なら眠っててもらうから」


 残りは20人弱。

 まだ増えるとしても直ぐじゃないだろう。

 二刀流を使うのは久しぶりだ。

 うちの流派は基本は一刀流の型ばかりだ、しかしうちの流派の型には二刀流の型も存在する。

 その二刀流の型を教えて貰えるのはうちの祖父、現師範に認められることだ。

 そして二刀流の型の習得は普通の型の取得よりも難しい。


「おいおい、一人に何をもたついてるんだよ?」


「あ、赤田さん!」


「ん?」


 雑魚だけかと思っていたが、一人だけ体格のガッチリした男が奥から出てきた。

 見るからに先ほどまで相手をしていた雑魚とは違う。

 大きな身体に太い腕、指を鳴らしながらゆっくり僕に近付いてきた。


「ただのひょろがりじゃねぇか、俺がぶっ殺してやるよ」


「相手の実力と自分の実力差が分かっていない奴は可哀想だね……自信満々で負けるんだから」


「なんだと? 俺がお前に勝てないとでも思ってるのか?」


「あぁ、無理だよ……女の子はどこ? 教えてくれれば何もしないよ」


「誰が教えるかよっ!!」


 拳を振り下ろしてくる赤田。

 俺はその拳を避け、赤田の足のすねに一撃をお見舞いする。


「いだっ!!」


 頭を下げてうずくまる赤田の頭に俺は木刀を振り下ろす。


「げふっ!!」


 赤田はそのまま床に倒れて意識を失った。

 恐らく軽い脳震盪だろう。

 

「あ、赤田さんまで……」


「ば、化け物……」


「さぁ、さっさと案内してくれない?」


 僕は木刀二本を構えながらその場の不良達にそう言う。

 恐怖を感じているのか不良たちは足を震わせながら黙る。

 そんな不良たちの奥から遂にあいつが出てきた。


「おい……」


「……君か……この前はどうも」


「お前、なかなかやるんだな……」


 やって来たのは大河原だった。

 やっぱりこいつはこの雑魚達とは違う……大河原を見た瞬間から身体にビリビリと電気が流れたような感覚を感じる。

 身体が大河原を強者と感じている。

 不意打ちでこの前は負けたが普通に戦っても恐らくこの男は強い。


「まさか懲りずにまた一人で来るとはな……安心しろ女共には何もしてねぇ」


「そっか……それでどうすれば居場所を教えてくれるの?」


「俺を倒す。シンプルで分かり安いだろう?」


「上等だよ……この前見たいに簡単にいくとは思わないでよ!!」


 僕が一歩を踏み出した瞬間、大河原も俺に向かって走り出す。

 素手と木刀、有利なのは武器を使っている僕だろう。

 しかし、相手は恐らく平斗並の実力を持っている。

 油断すると直ぐにやられる……。


「ふん!!」


「くっ!」


 大河原の振るってきた拳を木刀で受け止める。

 重たい……倒れてい雑魚とは力が違う。

 

「はぁぁぁぁ!!」


「ぐっ! やるじゃねぇか」


「君もね……はぁ!!」


 拳を受けた木刀と逆の木刀で大河原の顔を横から薙ぎ払うように叩く。

 しかし、大河原はその木刀さえも腕でガードした。

 僕は木刀を大河原から離し、今度は突きで大河原の腹を狙う。


「ふん!」


「なっ! 止めた!?」


 大河原は僕の突きを寸前で片手で受け止めたのだ。

 反応が早い。

 ここは二刀流を生かして次々攻撃しないとダメージは与えられない!!

 僕はすかさずもう片方の木刀を大可原の木刀を掴んでいる腕に向かって振り下ろす。


「うぉぉぉぉ!!」


「ぐっ! いってぇぇ……」


 今度は直撃だ。

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