第274話
「でも、俺……行くよ」
「……分かりました、でも条件があります」
「え?」
*
「おい、なんで撃った?」
「えぇ? だって苦戦してたじゃん、だから手伝ったんだよ」
「苦戦? ふざけんな、俺は苦戦なんかしてねぇ!」
廃工場の奥で晴郎と佐崎はそれぞれ適当な場所に座って話してしていた。
晴郎は苛立っているらしく、近くにあるぼろぼろの椅子を蹴とばした。
「そう? じゃぁなんでさっさとやらなかったの?」
「お前は喧嘩を楽しむってことを知らねぇのか? 互いに持てる力の全てをぶつけて相手をぶちのめす! それは喧嘩の楽しみだろ?」
「そうかな? 僕は生意気言う奴は容赦なく痛い目に合わせた方が良いと思うけど?」
「ふん、大体てめぇとは反りが合わせねぇ。喧嘩になんで銃が必要なんだ? そんなもん出したらもう殺し合いだろ」
「何を言ってるのさ……時にはそう言う必要もこれからは出て来るんだよ」
「おい! そんな話を俺は聞いてねぇぞ! 俺は自由に喧嘩出来る場所が欲しいだけだ!」
「だから用意して上げたじゃないか? 不良のチームに力を振るう場所……チームを作ったからには上を目指さないと……それも不良の世界の上じゃない、この世界の上をだよ」
「佐崎……お前何をする気だ……」
「楽しい事さ……ねぇ、知ってるかい? 最近は結構凶悪な犯罪が増えてきて警察でも対応出来ない事件を民間の武術かや格闘家の力を借りて沈静化している動きがあること」
「話しくらいはな……」
「この町にも警察に協力している道場があるんだ……しかも裏社会でもその道場は恐れられていて、絶対に手を出してはいけないと言われているらしいんだよ」
「それがどうした?」
「その道場の師範をやったら……一気に名が売れると思わないかい?」
「……佐崎、テメェ何をする気だ……」
佐崎はそう言いながら銃を見つめてニヤリと微笑む。
「分かってるくせに聞くなよ……まぁでもまずはあの女を手に入れてからだけどね」
「っち、俺はなんであの女にあそこまで執着するかもいまいちわかんねーぜ」
俺は欲しいものは全部手に入れる主義なんだ、力も女も金も……だからさ」
「貪欲だな、悪いが俺は女も金も興味はねぇ……俺はダチと馬鹿やってる方が良いね」
「あぁ、俺の指示にしたがってくれるなら後は好きにして良いよ。でも俺に逆らったら……分かるよね?」
そう言いながら佐崎は晴郎に銃を突きつける。
「俺がこんなもんにビビると思ってるのか?」
「そんな事は思ってないさ、でも間違いなく重傷を与えられる。俺にはその事実だけで十分さ」
「っち……やっぱり気に食わねぇ……」
「その言葉そっくりそのまま返すよ」
そう言って佐崎は銃を仕舞い、その場を後にした。
「さて……あの二人は乗り込んでくるかな? まぁ嫌でも乗り込んでるように仕向けるけど……」
そう言って佐崎はスマホを取り出し一枚の写真を見る。
そこには道場から帰って行く城崎の姿が写っていた。
「人質ってのはかなり有効な作戦だよなぁ……」
佐崎は写真を見た後に誰かに電話を掛ける。
「俺だ、明日にでも女二人を拉致しろ。良いか、くれぐれもあいつらが来るまでは手を出すな。あいつらを瀕死にした後に眼の前でやってやろう。自分達がどれだけ無力かを思い知らせてやるんだ」
そう言って佐崎はニヤリと笑みを浮かべる。
「女ってのは最高に使える道具だ」
佐崎はそう言って電話を切り工場を後にした。
そんな佐崎を見計らって数人のノーネームメンバーが廃工場に入っていく。
「晴郎さん」
「お前らか、なんだ?」
「あの佐崎って奴ヤバイですよ! 平然と人を撃つなんて……」
「俺らはただ自由に馬鹿やってたかっただけなのに……」
「……分かってる。だが今のチームのほとんどは佐崎の手駒だ……」
「こんなの……ただの犯罪者集団じゃないか!」
「晴朗さん、貴方だってこんな事を望んでるわけじゃ……」
「……あぁ、だが今抜けるなんて言ったら佐崎のバックにいるヤクザが出てきて俺達を始末する……そいつらをなんとかしねぇと、俺たちは終わりだ」
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