第267話
「こんな奴さぁ~これで一発っしょ? なにまごまごしてんのよぉ~」
「邪魔するな、これはお互いのプライドを掛けた戦いだ! 余計な真似すんじゃねぇ」
「あれあれ? もしかして怒ってる? 怖いなぁ~でもそこの彼はもう動けないし決着着いたでしょ? さっさとこっから逃げようよ」
「……っち……」
薄れゆく意識の中、晴郎と金髪チャラ男の佐崎が去っていくのが見えた。
それに続いて他の不良たちも何処かに消えて行く。
腹が痛い。
なんだか眠い。
俺は一体どうなるんだ……。
そんな事を考えているうちに俺は意識を失った。
*
「兄貴! しっかりしてくれ!」
「そんな……島並さんが……」
「しっかりしろ悟! 早く救急車だ!」
「わ、分かってる!」
眼の前で憧れの人が撃たれ、血を流して倒れている姿に俺は同様した。
悟に救急車を呼ぶように言ったが、それ以外に俺も何をしていいか分からない。
兄貴の横には頭から血を流す真木先輩がいる。
まさか、この人たちが負けるなんて……。
ほどなくして救急車が到着し、真木先輩と兄貴は運ばれていった。
俺たちは病院に向かい、二人の家族に連絡をした。
「なぁ……兄貴死なないよな?」
「馬鹿な事を言うな! あの人が死ぬわけ……」
「でもよ……」
「うるさい! 何も言うな!」
病院で俺と悟は兄貴の手術が終わるのを待っていた。
ノーネームの前総長派閥の連中も一緒に来てくれた。
「すまない……俺達がこんなことに巻き込んだせいで……」
前総長派閥のリーダーである一心さんが涙ながらに俺達に謝罪する。
「アンタのせいじゃ……俺がもっと役に立ってれば……」
その場の全員は兄貴達の無事を願っていた。
そんな中俺はとある人物に連絡を取ろうとしていた。
もし、兄貴が死んでしまった時、彼女を呼ばなかったらきっと俺は後悔すると思ったからだ。
「も、もしもし……は、初白さんですか?」
*
「はぁ……はぁ……」
休日の夕方、私は走って病院に向かっていた。
電話で島並先輩が撃たれたと聞き、私はいてもたってもいられず家を飛び出した。
「先輩……」
嫌な事ばかり考えてしまう。
もし先輩が死んでしまったらどうしよう。
そんな嫌な事を考えると目に涙が浮かんでくる。
「無茶しないでって行ったのに……」
夏休みに先輩に言ったその言葉。
でも、私は先輩はきっと守ってくれないだろうと思っていた。
だって先輩は他人の為に無茶をする人だって知ってるから。
でも………まさか撃たれるなんて……。
あの人が死ぬわけなんてない、そう思いたい。
でも、こう言う時はどうしても悪い方に考えてしまう。
「早く……早くしないと」
まだ私は先輩に何も言えていない。
神様、お願いだから先輩を奪わないで……。
*
昔の夢を見た。
「ここは……」
住宅街にあるマンション。
その隣には大きな公園がある。
そこでは二人の子供が砂場で砂遊びをしていた。
その子供には見覚えがあった。
「……俺と晴郎……」
幼い頃の俺と晴朗。
俺はマンションに住んでいて、晴朗はそのマンションの隣の団地に住んでいた。
毎日のように公園で一緒に遊び、楽しい毎日だったのを覚えている。
でも……。
「よぉ、平ちゃん」
「……晴ちゃん」
「さぁ、掛かってこいよ!」
全ての景色が消え、俺の前には高校生になった晴朗が現れる。
その手には拳銃が握られていた。
「死ねよ」
そう言って晴郎が引き金を引く。
しかし、銃弾は俺に当たらなかった。
その理由は俺を庇って盾になった人がいたからだ。
「初白!!」
盾になったのは初白だった。
血を流して倒れる初白。
それをニヤニヤしなはら見つめる晴朗。
そんな光景を見た瞬間、どうしようもない怒りが俺を襲った。
「晴朗!! てめぇぇぇぇ!!」
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