第268話
*
「はっ!! はぁ……はぁ……いっ!」
飛び起きた瞬間俺の腹部に激痛が走った。
起きるとそこは病院だと直ぐにわかった。
数カ月でまたこの場所にくるとは思わなかった。
清潔な布団に俺の腕に点滴が打たれている。
「一体なにが……」
確か俺は撃たれたはずだった。
始めて感じる弾丸の感触は今でも覚えている。
まるで熱せられた鉄の塊を押し付けられたような感覚。
身体がかなりだるい。
殴り込みはどうなった?
高弥は?
それに一心や大島達は……。
「くそっ……不覚を……」
まさか子供の喧嘩で拳銃が出てくるなんて思わなかった。
あの佐崎という男は何者だ?
しかし、このまま終わりという訳にもいかない。
拳銃まで出てきたとなると、今はまだ子供の喧嘩で済んでいたとしてもいつかは大きな悪に成長する可能性もある。
「いろいろな事が起こりすぎた……」
幼い頃の友人との再開、そして親友の危機、不意を疲れて撃たれてしまう。
情けない話だ、結局俺は何も出来なかった。
「目が覚めた?」
「え? 高弥、お前大丈夫なのか?」
「あぁ、頭蓋骨は無事だよ。でも……お互い不覚を取ったな」
「あぁ……教えろ、なんであそこにいた?」
「……誰かさんのお節介がうつったんだよ。それより、多分だけどあのチームはもっと大きくなる」
「晴郎のことも気になるが、それよりもヤバイのはあの佐崎だ」
拳銃を所持していたことから、あいつがチームの中で重要なポジションにいる事がわかる。
一人だけが所持していた拳銃。
それを子供が所持する方法は悪い大人との繋がりが必要だ。
もしかしたらあの佐崎が薬を……。
「それも大事だけど、今はもっと気をつけないといけないことがある」
「なんだよ?」
「まぁ、時期に分かるさ」
高弥はそう言いながらベッドに横になった。
一体何の事だろうかと考えていると、病室の外が騒がしくなった。
どかどかと音が近付いてくると思ったその瞬間……。
「兄貴!」
「島並さん!!」
大島と悟が勢いよく中に入って来た。
「良かった目を覚ましたんですね!」
「すいません……俺達何も出来なくて……」
「お前ら……」
大島達に服は特攻服のままだった。
時刻はもう夜、こいつらずっと俺が目を覚ますのを待ってくれてたのか……。
「悪い、謝るのは俺の方だ……俺が未熟だった」
「そんな! あんな卑怯な真似されたら誰だって!!」
「悪いのは俺らです! 俺たちが……気が付いていれば」
「落ち込むな、お前らはよくやってくれた」
そんな風に二人を励ましていると、再び病室のドアが勢いよく開いた。
そこに居たのは……。
「初白……」
真っ赤に目を腫らした初白だった。
初白は無言のままずかずかと俺のベッドにやって来る。
そして初白は……。
パーン!
大きな音と共に俺の頬に衝撃が走る。
何すんだよ!
そう叫びたかったが、初白の顔を見てそんな気はなくなってしまった。
「なんで……なんで約束……守ってくれないんですか……」
「……初白……」
「無茶は二度としないって言ったじゃないですか!!」
「………悪い」
こんな初白は始めてだった。
大粒の涙を流しながら初白は俺を怒鳴った。
そんな様子からどれだけ彼女を不安にしてしまったのかに気が付いた。
「貴方が傷ついて悲しむ人は大勢居るんです! それなのに……皆の心配は……私の心配は……なんで貴方に届かないんですか!!」
「………」
初白の言う通りだ。
今回は全面的に俺が悪い。
俺が病院に運ばれたことで大勢の人に心配と迷惑を掛けた。
初白はきっと代表して俺を叱ってくれているのかもしれない。
そんな初白の言葉が俺の胸に突き刺さった。
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