第264話

「かっ! ……あが……」


「おいどうした? もうくたばったのか?」


「そんなわけ……ねぇだろ……」


 とは言ってももろに食らってしまった。

 ダメージもかなりデカい。

 まさかここまでやる相手だったなんて……。

 俺はその場に膝をつき、立ち上がった大河原を見上げる。


「おらぁ!」


「ぐはっ!!」


 大河原は俺の腹に蹴りを入れる。

 重たく強い蹴りに俺は腹を抱えてうずくまる。

 まずい……このままじゃ……」


「おらぁ!」


「あがっ!!」


 また一発蹴りを食らう。

 だんだんと膝をついているのもきつくなってきた。

 くそっ……このままだと負ける……。

 なんとか……立ち上がらないと……。

 俺は何とか力を振り絞って立ち上がろうとする、しかしそんな俺に大河原は再び蹴りを食らわせてくる。


「がはっ!」


「おらおら! どうしたどうした! こんなもんか? あぁ!?」


「くっ……いい加減に……しろよ!!」


「うぉっ!!」


 僕は蹴りを食らわせてくる大河原に木刀を振るう。

 木刀を避けた拍子に大河原は僕から離れ、僕はその隙に立ち上がって体制を立て直す。


「くっ……」


 危なかった。

 あのまま何も出来ずに蹴られ続けていたら、僕はそのままゲームオーバーだったかもしれない。


「ほぉ……やっぱりやるなお前」


「そりゃどうも……」


「だがそろそろ飽きてきた。そろそろ終わりにしよう……」


「なんだと……あがっ!!」


 首元に急に重たい衝撃を受ける。

 前のめりに俺はそのまま倒れる。

 一体何があった?

 俺は何をされた?

 理解が追いつかない、一体何をされたんだ?

 そんな事を考えていると、背後から角材を持った男が僕を見ていた。


「いつ一対一なんて言った?」


「ひ……卑怯な……」


 身体が動かなかった。

 頭も激しく痛い。

 ヤバイ……負ける……意識も……。

 俺はだんだんと意識が薄れて行くのを感じた。

 そして意識が消える瞬間、工場の扉が開く音が聞こえた。



 工場に入った瞬間、俺は三つ驚いた。

 一つは既に殴り込みに来ている奴が居たこと。

 そして、二つ目はその殴り込みにきた奴が頭から血を流して倒れていること。

 そして最後は……その倒れている奴が俺の親友であること……。


「……おい、てめぇら……」


「あん?」


「また殴り込みか?」


「関係ねぇよ! 誰が来てもうちの総長がぶっ倒すって!」


 その場にいる不良連中が何やら騒ぎ始めていた。

 しかしそんな言葉は一言も耳に入ってこない。

 そんなのどうでも良かった。

 俺が知りたいのは、なんで高弥が倒れているのかだ。


「おい」


「あん? なんだよ、前のノーネームの特攻服なんて着てよぉ!」


「お前ら前総長派閥か? もしかして組織の奪還にでも来たか?」


「……そこで血を流して倒れてる奴をやったのは……誰だ?」


「あん? あぁ、あの雑魚のことか、もちろん俺らがぶっ倒しがはっ!!」


「な!」


「なんて力だ!?」


 俺はわーわーうるさい不良どもを殴り飛ばした。


「そうか……お前らがやったのか……じゃぁ……皆殺しだ」


 俺はそう言って近くにいた不良達を殴り飛ばす。

 こいつらが高弥を……こいつらが……。

 俺の頭の中は復讐心でいっぱいになっていた。

 

「俺達もいくぞぉぉぉ!!」


「つづけぇぇぇ!!」


「「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」」


 現ノーネーム構成員百数十人対俺達前総長派閥9人。

 数なんてどうでも良い。

 高弥をこんな目に合わせた奴らを俺は許せない。

 

「調子にのんじゃねぇぞ!」


「うるせぇ」


「あがっ!!」


「おい、お前らの親玉はどいつだ?」


「そ、総長は俺らの後ろに……」


「あいつか……」


 俺は不良たちの奥にいる高弥を見下ろす一人の男を睨む。


「お、お前じゃ大河原さんに勝てるわけねぇ!」


「どうだろうな……ん? ちょっとまて……大河原って言ったか? あいつ……」


 大河原……その名前には俺は覚えがあった。

 珍しい苗字なので覚えていた。

 だが、あいつなはずはない。

 それにあいつはまだあの街にいるはずだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る