第263話



「ふん!!」


「おらぁ!」


 僕と大河原は拳と木刀を交わしお互いに一撃を食らった。

 大河原の拳は重くそして素早かった。

 

「くっ……」


 食らった一撃で僕は大河原の強さを感じた。

 恐らくだがこの男は……かなりの強者!


「へぇ……中々やるなぁ……」


「君も相当な腕だ……流石は不良チームのボスってところかな?」


「まぁな……こりゃあ本気でやらないとまずいな」


 大河原はそう言いながら羽織っていた特攻服を脱ぎ捨てた。

 腕には包帯を巻き、ニヤリと笑って拳を構え僕に一言呟いた。


「じゃぁ、遊ぼうぜ」


「なっ…あがっ!!」


 大河原が言葉を発した直後、大河原はすさまじい速さで僕の懐に潜り込み顎に拳を振るう。

 あまりの勢いに僕はそのまま後ろによろけてしまった。

 

「おらおら!!」


「ぶはっ!」


 大河原はよろけた僕の頬を更に殴る。

 僕は何とか倒れないようにこらえながら体制を立て直そうと大河原と距離を取る。

 

「はぁ……はぁ……」


「おいおいどうした? 全然大したことねーな」


 強い……間違いなく強い。

 もしかすると実力は平斗くらいかもしれない。

 僕はそんな事を考えながら、次の策を考える。

 

「まぁまぁ……そんなに言うなら僕もそろそろ本気を出すよ」


 木刀を大河原に向かって構え、僕は深呼吸をする。


「はっ!」


「なっぐはっ!」


 今度は僕の番だ。

 まずは腹に強烈な突きを一発お見舞いし、そのままよろけた大河原の横腹を木刀で切りつけるように振るう。


「あっがっ!!」


「まだまだ!!」


 手加減したらやられる。

 そう思った僕は、更に追い打ちを掛けようと木刀を構えて大河原の頭上に目掛けて振るう。

 しかし……。


「はぁ……なかなかやるな……」


「くそっ!」


 大河原は僕の木刀を片手で受け止めた。

 まさかあんな不安定な姿勢から持ち直すなんて……。

 驚きながら僕は木刀から手を離し、使い慣れない拳で大河原に向かう。


「はぁぁぁ!!」


「ふん!!」


「っち……拳じゃやっぱりだめか……」


 使い慣れない拳での戦いは僕が不利だ。

 大河原にガードされダメージを与えられない。

 しかし、そのおかげで大河原の手から木刀が離れた。

 僕は素早く木刀を回収し、そのまま距離を取る。


「久しぶりだなぁ……こんなにやる奴は」


「そうかい? じゃぁ早く降参してくれない?」


「馬鹿言えよ、降参するのはてめぇだろ?」


「僕も一応降参出来ない理由があるから…ねっ!!」


 話しをしながら再び僕が仕掛ける。

 しかし、大河原にガードされダメージが入らない。

 まさかあの数発で攻撃を見切ったのか?

 

「おいおい、考えことなんてしない方が良いぞ!!」


「なっ…うぐっ!!」


 ガードされた直後に大河原は僕の腹に拳を叩きこむ。

 もろに受けてしまい、僕はそのまま膝をついてしまった。


「あ……はぁ……はぁ……」


 呼吸を整えながら大河原を睨む。

 まさか、ここまでやるなんて思っても見なかった。

 ただの不良だと侮っていたが、そうではないようだ。

 

「おいおい、もっと粘ってくれよ……楽しくないだろ?」


「そうだね……ごめんごめん。それじゃぁ頑張るよ」


 こんなに苦戦するのは平斗以来だ。

 まさかこんな奴が不良界にいるなんて思いもしなかった。

 侮っていた自分を責めながら、僕は立ち上がり再び木刀を構えて本気を出す。


「はぁっ!!」


「はやい!!」


「ふっ!!」


「あがっ……あ……」


 ようやくまともに一撃を食らわせられた。

 大河原はよろけてそのまま膝を着いた。

 しかし、まさかここまで苦戦するなんて思わなった。

 僕もかなりダメージを受けており、長期戦に持ち込むのはまずいと感じ、一気にケリを着けようと追い打ちを掛ける。


「これで終わりだよ!」


「……はは! それはどうかな!!」


「なにっ!? あがっ!!」


 膝を着いた大河原に再び木刀を振るった僕。

 しかし、大河原は大きく振りかぶった僕の腹に向かって膝を着いたまま正拳突きを食らわせる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る