第262話
*
「晴郎……なんでお前が……」
「……平斗……お互いもうガキじゃねぇんだ……さっさと来い」
「……なんでお前が……」
崩れかけた廃墟の中で大勢の不良達に囲まれながら、俺は子供の頃の友人と再会した。
その再会は決して喜ばしいものではなく。
お互いに敵としての再開だった。
俺は昔のことを思い出しながら、目の前にいる現ノーネームの総長である晴郎を見ていた。
まさか、こんなことになるなんて数時間前の俺は思っても見なかった。
数時間前
「ここか……」
「はい、そうでうす」
俺は特攻服を着て、ノーネームの総会が行われる廃工場に来ていた。
工場の外には多くのバイクが停まっており、中から大勢の人の気配がする。
「なんだ、お前ら緊張してるのか?」
「そんなわけないじゃないっすか」
「兄貴、これは武者震いですよ……やっと貴方に頼ってもらえた……俺達はそれが嬉しくてしかたないんです」
そう俺に言いながら笑みを浮かべるのは大島と悟だ。
こいつらは俺に強くなりたいとずっとそう言っていた。
こいつらの兄貴分になると言ってしまった以上、俺にはこいつらを強くする義務がある。 だからこうしてここに連れてきた。
喧嘩の手伝いをしろと言ったときのこの二人のはしゃぎようは大変だった、目をキラキラさせながら昨日は稽古に望んでいた。
「まぁ、とりあえずやばくなったら逃げろ、それか俺を呼べ」
「そんな恥ずかしい真似しませんよ」
「俺たちは強くなったんです」
「だと良いがな」
正直言うと高弥ほどのちからはないが、それでもこいつらは真面目に稽古を繰り返してきた。
最初に会ったときよりは頼りになるだろう。
「準備出来ました、島並さん……俺たちも行けます」
「じゃぁ、行くか」
俺たちは気合を入れ、廃工場の中に入っていく。
「ノーネームーを取り戻すぞ!!」
「「「「おう!!」」」」
*
「ねぇ、ここがノーネームの集会場?」
一人で喧嘩を売りに行くなんて久しぶりだ。
まぁ、少し前までは売りまくってたけど、今はそんなことはしなくなった。
廃工場に居たのは数十人の不良達と中央に立っている現総長。
僕が工場に入るとその全員が僕の方を見た。
「なんだてめぇ!」
「殴り込みか!」
「まぁ、そんなところだよ」
僕はそう言いながら木刀を振るって次々に不良たちをなぎ倒していく。
「なんかさ……随分色々好き勝手暴れてるみたいだから潰そうと思ってきたんだ」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇぶはっ!!」
「ねぇ、うるさいから黙っててくれない? 顎の骨砕くよ?」
「ふっ……面白いやつだな」
僕がそう言いながらゆっくり前に歩いていると、ノーネームの現総長が立ち上がり、僕の方に歩いてきた。
「お前名前は?」
「……普通は自分から名乗るものじゃない?」
「それもそうだな……俺は大河原だ……このチームのリーダーをしてる。一人で殴り込みなんて、よっぽどのバカか? それとも命知らずか?」
「さぁ? どっちだろうね……やってみればわかるんじゃない? ストーカー君」
「あん? ストーカー? なにのことかわからねぇけど……これでもこのチームの総長なんだ……殴り込みに来た相手を無事では返せねえぞ……」
「僕が勝ったら彼女にもう手を出さないでもらえるかい? それとチームも解散してもらうからね」
「あぁ、お前が俺に勝てたらそうしてやるよ……」
僕と大河原はゆっくりと近づき、工場の中央で睨み合った。
俺たちを囲むように不良達が円を描いて野次を飛ばす。
「やっちまえ総長!!」
「殺せぇぇぇ!」
完全にアウェイな状態だった。
でも僕は負ける気がしなかった。
だけどこのときの僕は全く考えもしなかった。
まさか僕が負けるなんて……。
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