第258話

 バイクに乗せられ約15分。

 着いたのは街はずれの使われて居ないプレハブの小屋だった。

 近くには何台ものバイクが止まっており、プレハブの中からは人の気配があった。


「ここがお前らのたまり場か?」


「はい、今じゃこんな場所でしか集まれなくて」


「追いやられちまったわけね……そう言えばお前名前は?」


「三谷です。三谷一心(みたに いっしん)」


 三谷はヤンキーと言う割には服装は普通だった。

 黒髪で短髪、そして顔もイケメンでぱっと見では不良かどうかなんてわからない感じだった。

 きりっとした目に両サイドの髪はツーブロックで髪型もセットしているようだ。

 不良でもこいつはモテるのではないだろうか?

 なんて事を考えながらプレハブの中に入るとそこには6人の不良達がいた。

 髪が茶色の奴や赤い奴。

 パーマの奴もいればかなりのロン毛の奴もいる。

 なんていうか、見世物小屋に来た気分だ。

 俺が入るとその場に居た全員が中腰になって膝に手を付き俺に頭を下げた。


「「「「「「お疲れ様です!!」」」」」」


「お、おう……」


 急な出来事に俺は反応出来ずに途惑ってしまった。

 いや、なんでこんな感じで迎えられるんだよ。

 不良のチームってこんな感じなのか?

 だとしたら俺はこの感じ苦手だな……。


「貴方が最近ここらで有名な島並さんですか?」


「有名? あぁ、動画のことか……まぁそうだな」


「俺! アンタの動画見たぜ! すげーよアンタ! 女を守る為に悪役になるなんて簡単にできることじゃねぇよ!」


「アンタがいれば俺達にも希望が見える!」


 どうやらここにいる全員俺の動画を知っているようだ。

 キラキラした目で恥ずかしい事を次々と……。


「そう言うのは良いから、本題に入らせてくれ」


「もちろんです。これが今の前総長派閥のメンバーです」


「え? これだけか?」


「はい、悲しい話しですが……」


 三谷が悲し気な表情でそう言う。

 

「本当はチーム自体は100人を越える大きな組織だったんですが……寝返った者や今の総長が怖くて逃げた奴……それと戦闘には出れない奴がいて……」


「そうか……ちなみに敵の数は?」


「恐らく最低でも150人程の規模です……」


「厳しいな」


 一人20人相手をしても足りない計算だ。

 しかも最低150人。

 この町でも勢力を伸ばしていると考えると、推定200人弱ってところではなかろうか?

 

「この七人と俺で現ノーネームに喧嘩を売るのか……」


「無謀なのは分かってるんっす! でも……でも俺達は!!」


「とりもどしたいんです! 昔の……あのノーネームを!」


「お願いします、力を貸してください!」


 考える俺を見てその場の不良たちが俺にそう言ってくる。

 高校生の不良が200人程度……倒せない数では無い。

 だが、奴らがあの薬を使用しているという可能性もあるとそれは一気に難しくなる。

 もしかしたら、ここにいる奴らが逆に足手まといになる可能性もある。

 いや、だがこれは全員を倒さなくてはいけないわけではない。

 大将である現総長を倒せば、他の奴らは戦意喪失するかもしれない。


「力を貸すのは良いが……お前らの力も知りたい。正直使い物にならない奴を連れて行くほど俺は優しくないぞ?」


「それはごもっともです。なのでまずは手合わせをしたいと……」


「あぁ、なんなら今からでも良いぞ」


「分かりました」


 そう言って俺達は外に出て軽く手合わせをする事にした。

 俺対不良七人。

 こいつらの実力がどれほどかわからないが、少しくらい骨があると助かる。


「行きます!」


「おう、掛かってこい」


 こうして始まって手合わせだったのだが……。


「あがっ!」


「うぉっ!」


「ぎゃん!!」


 弱い。

 まさかここまで弱いとは……正直連れて行っても絶対に足手まといにしかならない気がする……。

 しかし、一心だけは違った。


「ふん!!」


「おっと……」


 こいつだけは他の不良達と何かが違った。

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