第257話
*
学校では最近ここら辺の治安が悪いと噂になっていた。
うちの学校でもカツアゲにあっただとか、襲われそうになっただとか、かなり被害が出ているようだ。
学校からも注意が出ており、何かあったら直ぐ警察へと全校集会で言われ、女子はなるべく複数で帰宅し防犯ブザーを所持するように言われた。
「これはさっさと片付けないと文化祭にも影響が出るな」
そんな事を考えながら学校生活を送っていたのだが、最近は良く色々な生徒に頼みごとをされる。
しかもその頼みごとが皆同じ内容なんだから驚きだ。
皆口を揃えて俺に「不良たちをなんとかしてくれ」と頼んでくる。
散々悪者にした後は良いように使おうってか?
正直気分の良い話しじゃない、しかし学校のどうでも良い奴らは別として一応俺にも友人や後輩、知り合いがいるのでこの件を無視も出来ない。
「不良か……」
ヤクザよりも簡単になんとか出来るのではと思っていた。
だが、油断するのは良くない。
俺は学んだ、どんな相手にも全力を出さないとまた痛い目にあう。
学校では文化祭の準備の真最中でうちのクラスは無難に喫茶店をすることになった。
放課後などを利用して少しづつ準備を始めていた。
俺も本来ならクラスに協力するべきなのだが……。
「不良達を頼むよ!」
「お願い! 安心して歩けるようにして!」
「ここは俺達に任せておけよ!」
と言われ、俺は完全に不良をなんとかする役になってしまった。
はぁ……あんな動画流すから……。
そんなこんなで俺は今学校の昇降口に居る。
昨日会ったノーネームの連中が迎えに来ると言っていたので待っているのだが一向にこない。
「何をしてんだ? あいつら……」
「よっ、人気者は大変だな」
「高弥……と、えっと……」
「あぁ、そっか平斗は始めてだったね。隣のクラスの倉敷さん、いろいろあって今僕の家に住んでるんだ」
「ちょっ! なんでそんな事まで言うのよ!」
「え? いや、平斗は大丈夫だよ。悪い噂を流す奴じゃないし、頼りになるから」
なんだ?
今まで女っ気のなかった奴が女連れで歩いてる。
まさか……高弥がこの倉敷さんを?
いやいや、今までこいつ何度告白されても断ってたし……でもなんかこの子、高弥に告白するような感じの子じゃないんだよなぁ。
「平斗、そう言えば話しがあったんだ」
「なんだよ?」
「学校でも色々な奴から言われてるかもだけどさ……今回は大きく動かないでね」
「不良たちの事か? でも、このままじゃまた俺らの知り合いに危害が及ぶ可能性だってあるんだぞ?」
「警察が動いてるから平斗は今回は大人しくしててよ、道場で城崎さんに稽古つけて、当分は初白さんとでも一緒に帰って平和に過ごしなよ」
「………そう言う訳にもなぁ……」
「え?」
「あ、いや……なんでもないわ。じゃぁな」
「うん、それじゃぁね」
まさか高弥にそんな事を言われるとは……あの目はマジだったし、俺がノーネームと接触したなんて言ったらなんて言うか。
また小言を言い出すかもしれないし、ここは手っ取り早く事を済ませないとな。
警察が動いてるってことは、恐らく高弥も親父さんに何かを言われたのか?
まぁ、何にせよもう俺は巻き込まれちまった訳だし、さっさとこの件を片付けよう。
「あ、島並平斗さんですか?」
「え?」
俺が考え事をしなはら校門を出ると、道路の脇でバイクに跨った男に声を掛けられた。
バイクに乗ってはいるが恐らく俺と同い年くらいだろう。
もしかしてこいつが迎えに来ると言ってたやるか?
「あぁ、お前はもしかして」
「はい、ノーネームの前総長派閥です」
「まさかバイクで出迎えとはな」
「今から集会場に案内します。少し距離があるので後ろに乗ってください」
「あぁ、分かった」
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