第249話

「まさか……まさか娘がこんな早くに彼氏を……」


「い、いやお父さん?」


「お父さん!!」


 しまった、娘を持つ父親にお父さんはやばかったか?

 城崎さんの家の父親もすさまじかったし……。


「いや、す……すいません初白さん、俺は娘さんとはそう言う関係では無く……」


「まさか身体の関係なのか!? なんてふしだらな!!」


「だから違いますって!」


 ヤバイなぁ……どんどん話しが拗れて来ている気がする。

 

「まさか……君は娘とはセフあがっ!!」


「もうお父さんは黙ってて」


 俺と初白の父親が話している中初白が父親を殴る。

 いや、親父さんを殴っちゃいかんだろ……。

 しかし良かった、これ以上俺が初白の親父さんと話しをしていたら話しが更にややこしくなっていたかもしれない。

 ほどなくして俺はリビングの椅子に座らせられた。


「さぁさぁ、何も無いけどたくさん食べて! なんたって島並君は蓮華ちゃんの恩人なんだから」


「いえ、俺は別に……」


「警察に行ったときはビックリしたわ~まさか蓮華ちゃんが事件に巻き込まれるなんて……でも島並君が守ってくれて、この子は今安心して学校に通えてるのよ」


 初白母からの言葉に俺は嬉しさを感じた。

 お礼を言われて悪い気はしないし、それに俺と関わったから娘が危険な目にあった、なんてことも言わなかった。

 正直初白の親に会った時、そう言う事を言われるのではないかと心の中で思っていた。

 でも、この母親はそんな事を言うどころか俺にお礼を言ってきた。

 痛い思いしてよかったなと俺はそんな事を思ってしまった。


「ごほん、ごほん!! それで? 君は娘とはどういう関係なんだい?」


「あなたうるさいわよ?」


「お父さんお母さんが話してるでしょ?」


「……すいません」


 なんだか初白の父親が可哀想になってきた。

 初白の父親は家では母親の尻に敷かれているようだ。

 まぁでも娘が男を家に連れてきて気にならない方がおかしい。


「あの、自分は本当に娘さんとはそう言う関係ではないので安心して下さい」


「あら? そうなの? 残念ねぇ……」


「え? マジで?」


「あ?」


 残念そうな初白母。

 驚く初白父。

 そして何故かキレる初白。

 いや、お前はなんでキレてんだよ……。

 そんな事を思っていると今度はお母さんがニコニコしながら尋ねる。


「でも、蓮花ちゃんのこと狙ってるのよねぇ?」


「え?」


「違うの? それとも蓮花ちゃんが狙ってるの?」


「な!! お、お母さん何言ってるのよ!!」


 すいませんお母さん、別にそう言う事は無いです。

 まぁ、少しは良い奴だと思ってるけど。

 このお母さんはあれか? 

 娘の恋愛事情が気になるのか?


「もう! 私お風呂入ってくる!!」


「あらあら、お客さんが来てるのにあの子ったら……あ、一緒に入ってきたら?」


「なんでそうなるのよ!!」


 お母さんこれ以上俺が居ずらくなる空気を作らないで下さい……。

 初白はそう言って顔を赤くして風呂場に向かった。

 リビングに初白の両親と俺が残され、俺は少し緊張していた。

 さっきまでが初白が居たから多少は緊張もほぐれたが、今は完全にアウェイだ。


「さて、そろそろ本題に移ろうか……」


「そうね」


 初白が居なくなった瞬間、空気が変わった。

 先ほどまで笑っていた初白の母親と父親は真剣な表情になり俺の方を見ていた。


「えっと……なんですか?」


「島並君、娘を助けてくれたこと……本当に感謝している」


「あの子が今日も笑っていられるのは貴方のおかげよ。本当にありがとう」


「え? いや……あの……」


 初白の両親が椅子に座りながら俺に深々と頭を下げた。

 

「あ、頭を上げて下さい! そんなお礼なんて……」


「いや、本当なら私達は君の家に赴いてお礼を言うのが筋だ。こんなついでのような形になって申し訳ないが、本当に感謝しているんだ」


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