第247話 



「おらぁぁぁぁ!!」


「くっ……薬の効果か……」


 やはり身体能力が上がっている。

 だが、柳や弓島ほどの力は無い。

 俺は不良の拳を避けながら、反撃をする。


「おらよっ!!」


「あがっ……」


 回し蹴りを頭にお見舞いすると不良はそのままその場に倒れた。


「薬使ってこの程度か? もっと苦戦すると思ったが……」


 薬の効果はどうやらもう切れ始めているようだった。

 先ほどまで膨れ上がっていた筋肉は元に戻り、不良は息を荒くしながらその場に寝転がっていた。

 

「はぁ……はぁ……な、なんで……何で負けるんだ……」


「薬なんかに頼ったって俺には勝てねぇよ」


「く、くそ………」


「それより約束だ、早くその薬をどこで手に入れたか教えろ、さっさと言わないともう一発いくぞ?」


「ひっ! わ、分かってる! この薬は……あ!! あがっ……」


「お、おい」


 薬の入手先を聞こうとした瞬間、薬を飲んだ不良が突然苦しみ始めた。


「おい! 大丈夫か! おい!」


「はぁぁぁぁ……く、苦しい……あぁぁぁ」


「やばい!」


 薬の副反応か?

 やっぱりこの薬はかなりヤバイのか?

 俺は直ぐにスマホを取り出して救急車を呼んだ。

 それと一緒に警察を呼び、俺は事情を話す為に初白と共に警察署に向かった。


「なんか今年に入って警察に関わる事が多くなった気がします」


「奇遇だな、俺もだ」


「奇遇だな……じゃないですよ! 先輩が危ない事に首ツッコむからでしょ!」


「仕方ねぇだろ? あいつらが絡んできたんだからよ!」


「私との約束何回破る気なんですか!! もう先輩なんて知りませんから!」


「別にお前に心配なんてして貰わなくてもだなぁ……」


 そう俺が言った瞬間、またされていた部屋の扉が開き刑事が一人入って来た。


「はぁ、また島並さんとこのか……まったく、今度は喧嘩か?」


「赤石さん」


 赤石さんは刑事をしていて俺とは中学時代から面識があった。

 やる気の無い感じといつも着ている紺色のスーツ、ネクタイは無くなんだか全体的にくたびれた感じの人だ。


「彼女に手でも出されたか?」


「か、かの!?」


 なぜか初白が顔を赤くしてテンパっていた。

 俺とカップルだと思われて怒ってるのか?

 

「違いますよ、こいつは学校の後輩です」


「え? あぁ……そうですね」


 なんだ?

 今度は初白はなんだかがっかりしたような感じで肩を落としてため息を吐いていた。

 表情豊かな奴だなぁ……。


「そんで、今回の件だが……病院に運ばれた少年は身体の至るところで筋肉がけいれんを起していた、両腕の骨はヒビが入って、入院が必要らしい」


「そんなボコボコにしたつもりはないっすよ?」


「あぁ、それは知っている、外傷はそこまで酷くなかったからな。問題は被害者が使った薬にあるようだ」


「……あの薬か……」


「実は最近、俺もこの薬を追ってるんだが、なかなか手がかりが掴めなくてな」


「やっぱり、ヤクザが関係してるのか?」


「そこはまだなんとも言えない、だが……とある族がこの薬を大量に所有しているらしい」


「族?」


「あぁ、ノーネームってチームでな。高校生を中心にしたいわゆる不良の集まりだよ。お前が伸した奴らもそのノーネームの奴らだ」


「ノーネーム……」


「そんな不良のチームって今でも居るんですね。てっきり昔の話しかと……」


「今でも居るところには居るさ、大人に歯向かいたい子供がね」


 そのノーネームが一体俺に何のようだ?

 襲ってきた所を見ると俺が目当てだったようだし……。

 それに街にいた不良達、あれもノーネームの一員だとすると一体何を企んでるんだ?

 その後、俺と初白は事件の話を赤石にしてそのまま警察署を後にした。


 



 

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